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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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謝罪合戦する少女たち

 失踪事件の情報を手に入れようと城下町に出かけたミントは、開始早々に見知らぬ男とぶつかって手に怪我けがをする。怪我と言っても大した事は無く、手を少し切っただけ。それでも少し血が出てしまったわけで、ミントの護衛として一緒にいたチコリーは怒り、男を強く睨みつけた。

 男はミントやチコリーやクリアの服装を見て震え上がり、顔面は蒼白だ。


「も、もしかして、貴族様でいらっしゃいました……?」

「だったら何?」

「――っ!」


 チコリーの返事に男の顔が青から白へと変化する。男は相当に焦った様子でひざまずき、震えた声で「申し訳ございません!」とこうべれた。男の服装はどう見ても平民で、立場を考えればそうするしかなかったのだろう。チェラズスフロウレスがいくら平和な国と言っても、貴族と平民の差は大きい。それは例え相手が子供だったとしても変わらない。平民である彼には、子供のミントがとても大きな存在に見えるのだ。

 しかも、相手は子供のとは言え護衛までつけている。まあ、チコリーは見た目が少女なだけで大人なのだけど、それは男には分からないし今は関係の無い事。最近ではネモフィラの近衛騎士が子供だと世間を騒がし始めているし、何も知らない彼等平民からすれば、子供だからとて馬鹿には出来ないのだと考えても仕方のない当然な事だった。

 だからこそ男は許しを請う為にも頭を下げたのだけど、しかし、チコリーは睨むのをやめない。“ミアの顔”として振る舞う筈のチコリーの態度に疑問を持つ者もいるかもしれないが、これは当然と言えば当然の事だ。何故ならば、ミントがミアの友人で、チコリーなりに護る為に必死だから。

 ただ、ミントからすれば少々やりすぎで困ってしまった。周囲が何の騒ぎだと気になって、四人が注目の的になり始めてしまっのもある。おかげでミントは少し慌てて混乱してしまう。

 すると、そんな時にクリアがチコリーのそでを引っ張った。


「チコリー。私達もちゃんとミント様を見てなかったんだから、そんな風に相手ばかり責めたら駄目だよ」

「でも……」

「そ、そうだよ。私も……前を見てなかった……から、この人だけの責任じゃない……から。でも、怒ってくれて……ありがとう」

「ミント様がそう言うなら……」


 両親を亡くした経緯が経緯だからか、中々に肝が据わっているクリアのフォロー。おかげで、透かさずミントがそれに便乗し、チコリーが漸く納得して睨むのをやめた。すると、男は安堵して胸を撫で下ろし、もう一度謝罪してから逃げるように走り去った。

 男がいなくなると、周囲も特にそれ以上は気にせずにミントたちへの注目を止めて、ミントはホッと安心する。そして、ミントは気持ちを切り替えて聞き込みを開始しようと歩きだし、ふと不思議に思い首を傾げた。


(あれ? いつの間にか男の人と一緒に遊んでいた子がいなくなってる……? ――っもしかして!)


 目の前で失踪事件が起きたのではと、ミントが慌てて走り去った男や消えた子供を捜した。しかし、男はそれに気が付いていないのか戻って来る様子が無いし、子供の姿もやはり無い。 


「ミント様? どうしたんですか? 傷口が痛みますか?」

「あの男。やっぱり捕まえて責任を取らせる」

「ま、待って! そうじゃない……の。さっきの男の人……と一緒に遊んでた子が、いつの間にかいなくなって……たから、気になっただけ……だよ」


 チコリーが再び目つきを変えて走り去った男を捕まえに行こうとしたから、ミントが慌てて声を上げた。すると、チコリーは直ぐに止まってくれて、ミントに振り向いて戻って来た。その様子にミントは安心してホッと息を吐きだし苦笑した。


「私の事で……怒ってくれてありが……とう。でも、チコリーはミア様の侍従……だから、私の事でそんなに……怒らなくても良い……よ」

「そうはいきません。ミアお嬢様にご友人であるミント様を護ってほしいと頼まれた以上、しっかりと護らせて頂きます。……ただ、不注意で怪我をさせてしまって申し訳ございませんでした」

「私もごめんなさい。ミント様に怪我をさせてしまって……」

「そ、そんな……。二人とも頭を上げ……て? 私の不注意……だから、二人は悪くない……よ」

「しかし、あんな酔っぱらいに後れを取るなんて……。護衛として私はまだまだだ未熟だと言うのが、ハッキリと分かりました」

「え? 酔っぱらいって、あの人お酒を飲んでいたの? 私は気がつかなかった」

「ミント様との間に入った時に臭ったの」

「そうだったんだ? じゃあ、酔っぱらってて貴族のミント様に怪我をさせちゃったから、何かあっても言い訳が出来なくて焦ってたのかな?」

「でも、それは私達侍従には関係無い。ミント様。私の不注意で怪我をさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

「そうだよね。申し訳ございません。ミント様」

「そんな事ない……よ。わ、私の方こそごめん……なさい。だから、本当に気にしない……で?」


 この後も結局三人の謝罪合戦が始まってしまい、ミントの聞き込みはあまり出来ずに終わってしまった。

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