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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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浮気現場は修羅場で出来ている

 ヤハズの家は雑貨屋の隣にあり、一階建ての家である。そして今、まだ朝陽が昇り始めたばかりと言う早い時間帯に、ミアの侍従であるルニィとクリマーテとヒルグラッセとブラキとクリアとムルムルがその家の目の前まで来ていた。目的は勿論ヤハズが浮気していると罠にハメられるのを助ける為。クリマーテとブラキとクリアとムルムルが家の外で見張りをして、ルニィとヒルグラッセが家の中に突入する予定だ。そして、そんな彼女たちがいるとも知らず、家の中では今まさに修羅場が展開されていた。


「貴方! どういう事よ! その女は誰なの!?」

「本当に知らないんだ! コリン! 私を信じてくれ!」

「知らないだなんて酷い! 昨夜はあんなにも私を愛してくれたじゃない!」


 うーん。この……。ってな感じの、絵に描いたような修羅場。他になんか無かったの? って聞きたくなるようなテンプレ具合だけど、それでも身に覚えのないヤハズには間違いなく最悪な状況だった。

 ヤハズからしてみれば、目が覚めたら知らない女が全裸で一緒に寝ていて、その現場を突然寝室に入って来た妻のコリンに見られたのである。しかも、コリンは浮気だと責めてきて、知らないと言っても状況がそれを許してくれない。と言うか、冷静に考えればコリンの詰めの甘さが露呈ろていしていて、こんな朝までお前こそどこ行ってたんだよ? な状況なのだけど、それを考える余裕が今のヤハズには無い。


「貴方がこんな節操がない醜い夫だなんて思わなかったわ! 離婚よ! 絶対に許さない!」

「そんな! 待ってくれ! 考え直してくれコリン! 本当に違うんだ!」

「慰謝料だって請求してやるから覚悟して!」

「信じてくれ! 私は本当に何もしてないんだ! 頼むから私の話を聞いてくれ!」

「言い訳なんて聞きたくもないわ!」

「確かに言い訳は見苦しいと私も同意しますが、少しはお話に耳を傾けてはいかがでしょうか?」

「そんなの聞く必要が――っ!? きゃあああ! 誰!? まさか本当に浮気!?」


 こらこら。“本当に”とか言ったらバレますよ? まあ、始めからヤハズ以外にはバレてるけども。と言うわけで、ここでルニィとヒルグラッセが登場。ばっちり不法侵入だけど、それをとがめる者はここにはいなかった。

 理由は簡単。全員まとめて動揺しているからだ。ヤハズは勿論のこと、コリンと全裸の女も計画に無い出来事で動揺している。なんならコリンは突然の事にパニックを起こして“本当に浮気!?”とか言っちゃってるので、そんな余裕はないのである。

 しかし、流石はこんなアホな計画を考えたコリンだ。頭の悪い方向に……と言うか、この場を都合の良いように解釈した。


「信じられないわ! まさか三人も浮気相手がいただなんて! しかも、ミアちゃんの侍女じゃない! これは裏切りよ! 私は今まで貴方達に騙されていたのね! ミアちゃんにも慰謝料を請求して責任を持たせるわ!」

「ほう。ミア様に狂言を吐いて慰謝料を? 貴様。随分といい度胸をしているな」

「――っひい!」


 ヒルグラッセがコリンの首元に剣の刃をピタリとくっつけて、コリンは恐怖のあまりに小さな悲鳴を上げた後に黙り込んだ。そして、ルニィが全裸の女に視線を向けてニッコリと笑みを浮かべる。


「貴族が悪事に手を貸すとは聞いていましたが、ローズだったのですね。貴女はアンスリウム元殿下の熱烈な狂信者ですね。婚約者がいた筈ですけど、この事は知っているのかしら?」

「っ! 待って! 違うの! お願い! 婚約者には言わないで!? 本当は何もしてないの! ケレニーに頼まれてベッドに潜り込んだだけなの! それで! それに私はネモフィラ様の派閥に――」

「お父様が入っていらっしゃるのは知っているけれど、それが貴女と何か関係があるのかしら?」

「関係……無いです…………」


 認めちゃったよ。と言う感じだけど、まあ、ルニィママ怒ると顔が怖いから仕方が無い。すんごい怖い顔して凄むから、婚約者の話まで持ち出された全裸の女改めローズは恐怖で震えて縮こまった。

 するとその時だ。ガシャン。と大きな音が鳴り、振り向けば窓が割れていた。そして、さっきまで怯えて震えていたコリンの姿が無い事に気がつく。直後に外が騒がしくなり、クリマーテの「逃げた!」と言う声が聞こえてきた。


「ヒルグラッセ……?」

「っ。すまない。ローズは私の父の友人の娘で、その……動揺してしまった」

「そう言えばそうだったわね。……はあ」


 どうやらヒルグラッセにしては珍しく、最初はコリンの言動に怒り、全裸の女が知り合いだと気がつかなかったようだ。ルニィがローズの名前を言った事で存在に気づいて動揺し、コリンから目を離した隙に逃げられた。

 ヒルグラッセの父とローズの父はとても仲が良く、それ故にヒルグラッセとローズも昔から交流があってそれなりに親しい仲だった。そんな事もあり、親しい相手が馬鹿げた犯行の一端を担っていた事に動揺を隠せず、珍しくも隙を見せてしまったのだ。こればかりは流石に予想外の出来事で、ルニィも責める事が出来ずため息を吐くしかなかった。


「コリンはブラキに任せましょう。今までの事と今後についてのお話を、私達はローズにたっぷりと聞く必要がありますから」


 ルニィがニッコリと笑みを浮かべて、ローズは涙目で震えた。この後、ローズの人生が無事に終了したのは言うまでもない。

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