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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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恐れていた事

 ムルムルの祖父母の訪問があった次の日。ミアは天翼学園で使用する為の筆記用具を購入する為に、ヤハズが経営する雑貨屋に足を運ぶ。連れて行く侍従はルニィとクリマーテとヒルグラッセとブラキの四人で、新人たちはお留守番だ。と言うのも、コリンと会うかもしれないから、チコリーの事を考えて置いて行く事にしたのだ。

 因みに、ネモフィラは一緒に行きたがっていたけど、サンビタリア以外の王族全員での予定があるので出来なかった。何故サンビタリア以外なのかと言うと、彼女はミアの故郷に行っていて不在だからである。

 ちょっと涙目のネモフィラに見送られて城を出たミアは、いつものように変装して雑貨屋に到着した。のだけど、何やら不穏な空気が流れていた。


「つべこべ言わずに今直ぐ払えって言ってんだろが!」


 雑貨屋の扉を開けて聞こえた第一声がこれだ。しかもかなりドスのいた声で、ミアは驚いてビクリと少しだけ体を震わす。直後にヒルグラッセがミアの前に立ち、店内を睨んで見回した。

 怒声は止む事無く続き、奥の方から聞こえる怒声は男二人分。どちらも知らない声で、何かが倒れて床に落ちる音や割れる音などの、様々な音がけたたましく聞こえてきた。


「恐れていた事が起こった様なのじゃ。どれ。ちょっと乱入して来るのじゃ」

「っミア様!?」


 前に出たヒルグラッセの横をスルリと通り抜け、足早に怒声と音の方まで歩いて行く。侍従たちはハッとなり、急いで後を追いかけた。


「お願いします! 必ず、必ずお金はお返しします! だから、どうかなにとぞ――」

「今直ぐだって言ってんだろおが!」

「おいおいおいおい店主さんよお。こっちだって本当はこんな事したくないんだぜ? だがな、ケジメってもんがあんだろうが!」


 腕を横に思いきり振るい、棚に置かれていた商品が勢いよく床に落とされていく。ヤハズは顔を青ざめさせていて、更には顔を殴られた痕が残っていた。ヤハズを怒鳴っている二人の男の背後には、静かに様子を見守る男が一人いた。そして背後にいる男は呆れたような表情を見せると、静かにヤハズに近づいて肩に手を置いた。


「なあ? 店主さん。分かってんだろ? ロノウェとか言う野郎が借りた金貨五十枚を持って逃げやがったんだ。その責任は保証人のあんたが取らなきゃならねえよな? 違うか?」

「ですから! 直ぐにはお返し出来ませんが、いつかお返し……いいえ! 近い内にはお返しします! どうか! どうかそれま――」


 言葉を言い終える前に、ヤハズが男に殴られて吹っ飛び、薬液が入ったびんが並ぶ棚にぶつかって倒れる。ヤハズが倒れたと同時に様々な瓶が棚から落ちて割れてしまい、中の薬液も床に広がった。

 男は鼻で笑い、ヤハズに近づいて襟元を掴んで持ち上げる。


「何で俺達があんたの都合に合わせなきゃならねえんだ? 自分の立場ってもんが分からねえのか?」


 男は再びヤハズを殴ろうとした。けど、それは出来なかった。殴ろうとしたその時に、ミアが「えらいこっちゃなのじゃ」なんてマヌケな声を上げたからだ。その声でようやくミアの存在に気がついた男たちは振り向き、六歳児なミアやその背後にいるルニィたちを見て顔を顰めた。


「んだあ? ガキと女かよ。出てけ出てけ。今は取り込み中だ」


 そう言って一人の男がミアに触れようとし、直後にヒルグラッセの剣が男の首元にピタリと当たる。


「貴様。それ以上近づいたらその首をねるぞ」

「――っひい!」


 男は一瞬の出来事とヒルグラッセの殺気を感じて恐怖し、悲鳴を上げて後ろに倒れるように尻餅をついた。ヤハズを殴ろうとした男やもう一人の男は、その突然の出来事に驚いて動きを止め、突然現れたミアたちを凝視ぎょうしする。

 ミアは尻餅をついた男の横をテクテクと歩いて通り過ぎ、床に落ちた商品を一つ拾い上げた。


「お主等。借金の取り立て方法が古臭いのじゃ。そもそもこんな事をして商品が駄目になったら、お金を返せなくなると子供でも分かると思うのじゃが……ううむ。頭が悪い連中じゃのう」

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