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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第六章 王位継承権の行方
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似てない姉弟

 ミアの誕生日から丁度一週間が過ぎた頃の事。ミアの侍従のチコリーとクリアとムルムルがお休みになると、そのタイミングでネモフィラが雑貨屋に行きたいとミアを誘った。特に断る理由も無いので了承して、平民の姿に変装してお城を出る。連れて行く侍従はクリマーテとヒルグラッセとカナとモーナの四人だ。ルニィとブラキは事務仕事があるとかで来れないようだった。

 さて、クレスト公爵家の息女カナと天翼会裏会員モーナが正式にネモフィラの護衛として着任され、実は今日が初仕事。二人はミアの誕生日から一週間の間しっかり護衛の仕事を勉強して、カナに至っては侍女の仕事も勉強していた。カナはとても優秀な少女だったようで、たった一週間で侍女の仕事を身に着けて、初仕事だと言うのに随分とさまになっている。しかし、モーナは相変わらずで、結構な自由奔放じゆうほんぽうだった。と言っても、モーナの保護者的存在のカナがそれを許さず、それなりにちゃんとはしている。

 こんな状況で今日は二人だけで大丈夫なのか? なんて事を思うかもしれないけれど、それはクリマーテとヒルグラッセがいるので心配ない。二人がカナとモーナをフォローしてくれるので、ミアとネモフィラも心配する事なく出かける事が出来た。そうして雑貨屋に辿り着くと、いつも通りヤハズがミアたちを笑顔で出迎える。


「いらっしゃい。今日は……ああ。今日はお友達(・・・)と一緒なんだね」

「うむ。お友達も一緒なのじゃ」


 “お友達”。何ともまあ便利な言葉である。

 雑貨屋の店主のヤハズだが、勿論ミアの“お友達”であるネモフィラの正体を知っている。ここに来たのも今回が初めてではないし、何度も来ていて何度も話している。でも、ここには正体を隠してお忍びで来ている事も知っているので、ヤハズはミアの“お友達”としてネモフィラと接していた。ネモフィラもそれを望んでいるから、ヤハズの対応にとても喜んでいる。因みに侍従たちはそれを知っているし、ここに来る前にカナとモーナにも説明済みなので、これをとがめる者は誰もいない。

 ヤハズはミアに挨拶をすると、一礼してから店の奥に入って行った。それを特に何も考えずに見送っていると、見知らぬ男とコリンが目に映る。

 見知らぬ男は帽子を深くかぶっていた。帽子には角を出す為の穴が開いていて、そこから二本の角が飛び出していたので、恐らく種族は魔人。コリンはエルフなので耳が長く、二人に血の繋がりがあるとは思えない。しかし、ミアはその二人を見た時に「ねえ。お願いよ。弟を助けてほしいの」などと言う言葉を聞いてしまった。


(血の繋がっておらぬ姉弟かのう? と言うか、なんだか修羅場を垣間見てしまった気がするのじゃ)


 ミアはそんな事を考え乍ら、一先ずは見なかった事にして商品を物色していく。しかし、ネモフィラの様子が気になった。ネモフィラはヤハズに用事があったらしく、店の奥の方を何度もチラチラと見ていた。その様子に首を傾げて、ミアはネモフィラの側に寄る。


「どうしたのじゃ?」

「あ。その……実はヤハズとお話がしたくて…………」

「ふむ。しかし、今は取り込み中のようなのじゃ」

「はい。誰とお話しているのでしょう?」

「コリンさんの弟と話をしているようじゃのう」

「え? そうなのですか?」

「うむ。コリンさんが弟と言っているのが聞こえたのじゃ」


 ミアがネモフィラに説明した時だった。店の奥の方から弟らしい男が嬉しそうに涙を浮かべ乍ら走って出て来て、その後ろからヤハズとコリンも歩いて来た。そして、男はヤハズとコリンに振り向くと、深々と頭を下げる。


「保証人になってくれてありがとう義兄貴! これで俺も夢だった店が持てる!」

「しっかり頑張るんだぞ」

「良かったわね。ロノウェ」

「ああ! 姉さんもありがとう!」


 男は嬉しそうにお礼を言うと、「また報告に来るよ!」と言って店を出て行った。


「あら。ミアちゃん。それにお友達も。いらっしゃいませ」

「うむ。ところで今のはコリンさんの弟さんなのじゃ?」

「ええ。ロノウェって言うの。腹違いの弟で、彼は魔人の血を引いているのよ。今度店を出す為に結構な大金が必要だとかで、そのお金を借りる為の保証人になってほしいって頼んできたの」

(よそ様のお家の事をとやかく言うつもりは無いのじゃが、なんだか嫌な予感がするのじゃ)


 などとミアが考えていると、いつの間にやらネモフィラがヤハズに近づいていて、何やら話を始めてしまっていた。だから、ミアは一先ずこの話は置いておいて、自分もその話を聞こうと近づいて行った。

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