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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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復讐者の誤算

 大きな地震の発生後に、突如として妖狐山の夜空に現れた大きく真っ白な狐とヘルスター。それ等の登場に観光客は騒然として逃げ惑い、その振動で二次災害が発生する。建物の崩壊に人々が巻き込まれて、リリィは急いで救助に向かい、それをルニィたちが手伝いに行った。


「今の地震、まさかお主の仕業なのじゃ?」

「そうです。と言ったら、どうしますか?」


 どうするもこうするも無い。ミアは地震の恐ろしさや苦しみを知っている。犠牲を出し過ぎたヘルスターには手加減なんて無用と考え、ヘルスターにミミミピストルの銃口を向けて発砲……はしなかった。発砲しようと思ったけど、妙な魔力の流れを感じでやめたのだ。すると、ルーサは救助活動に向かわなかったようで、ミアの隣に立って顔を顰めた。


「あの野郎がヘルスターか? 妙な結界を張ってやがるな」

「うむ。あれは魔力を遮断する闇魔法系統の魔法の結界じゃのう」

「闇魔法って事は、あの狐の仕業だな」

「恐らくそうじゃ」


 ヘルスターの周囲に貼られていた結界。それは魔法の力を通さない為の結界で、つまりは魔法で作り出す弾丸では攻撃が通らない。そしてそれはミアとルーサが話す通りで、巨大な狐が作ったものだった。

 何故そんな事が分かったのかと言うと、その理由の一つは純粋な闇属性の魔法が魔族にしか使えないからだ。それにヘルスターの魔法は土属性で、闇属性の魔法は使えない。そうなると、それが使えるのは巨大な狐だけだ。

 それにもう一つ。この巨大な狐はミアもルーサも見覚えがあった。巨大な狐は、この妖狐山のマスコットキャラクターとしてキーホルダーなどのグッズにもなっている妖狐ちゃんと瓜二つなのだ。妖狐ちゃんは“妖”狐だから妖族と思われがちだが、実は狐系の魔族で、モンスターと同じ扱いなのである。

 しかし、そうなると不思議なのは妖狐ちゃんはこの山の守り神なのに、こうして人々に害を及ぼしたヘルスターと共に現れた事。見た目が似ているだけで別の魔族なのかもしれないが、そんな事があり得るのだろうかとミアは疑問に思った。でも、その疑問は直ぐに解消される。


「ミアお嬢様! 大変です!」


 ブラキが大慌てでミアの許に来て、指をさす。ミアが今度は何があったのかと視線を向けると、建物が崩れて下敷きになった人が下敷きになっていなかった。……いや。正確には、結界に護られているおかげで皆が無事だったのだ。


「のじゃ?」

「あの結界……妖狐のじゃねえか?」

「やっぱりそうだよね。助けに来てくれたって事?」

「それはねえだろ。あの男が地震を起こしたんだぜ」

「……ミミミ、髪留めモードに移行じゃ」


 ミアはミミミピストルを髪留めに変え、妖狐に視線を戻す。


「お主が皆を助けてくれたのじゃ?」

「当然だ。我はここの守り神だからな」

「…………」


 意味が分からない。と、ミアは首を傾げた。ヘルスターは復讐をしに来た。でも、関係ない人は巻き込まない? いやいや。そんな筈はない。ミアはあーでもないこーでもないと頭を悩ませる。するとその時、ヘルスターが何故かミアに滑稽とでも言いたそうな目を向けて大きく笑った。


「ハハハハハハハハ! 自分で人を護っておいて、妖狐が助けたと言って誤魔化し、自分の正体を隠すとは! いくらなんでもそれは無理があるのではないですか!? ミア!」

(あ。そうじゃった。普通は妖狐の声は聞こえぬのじゃ。となると……どう言う状況なのじゃ?)


 妖狐の言葉はヘルスターには分からない。だから、人々が助かったのがミアの力によるものだと勘違いしている。


「ねえねえ。ミアちゃん。あの人よく分かんないけど、ミアちゃんが聖女って知ってるような口振りですね」


 ブラキが周囲に聞こえないように、ミアに顔を近づけてこそこそと話しかけた。ミアもそれにならい、こそこそと返事する。


「うむ。あやつが以前フィーラを誘拐し、ワシが懲らしめたヘルスターなのじゃ。でも、ワシは聖女じゃ無いのじゃ」

「え? あの人が? なんか納得」

「何がじゃ?」

「だって、ミアちゃんが聖女ってここで言って一番困るのは、あの人だもん」

「ワシは聖女ではないけど、何でなのじゃ?」

「だってそうじゃないですか。こんな大勢の人がいる所で聖女って分かったら、皆ミアちゃんに味方して、あの人に勝ち目なんて無くなるもん。それが分かってるから、その事実を言いたくないんですよ」

「なるほどのう。そう考えるとダサいのじゃ。でも、ワシは聖女では無いのじゃ」


 ブラキが言っている事はまさにその通りで、ヘルスターは自分が優位に立つ為に、ミアの正体を言わなかった。そんなわけでこの男、復讐者としてマジでダサいし戦う前から負けている。本当に情けない復讐者だ。


「さあ! 妖狐よ! あの愚かで無様な子供を! ミアを殺すのです!」

「断る」

「泣きわめき命を乞いなさい! ミア!」

「それよりも我から降りろ」

「しかし、残念ですが今更命乞いをしても無駄です! 私は貴女を許すつもりが無いのですからね! 後悔してももう遅いのですよ!」

「何が神に仇名す悪の根源を倒す為に力を貸せだ。相手はどう見ても“聖女”ではないか。先の地震も貴様が発生させ、罪の無い参拝者等を危険に晒した。貴様の言葉は嘘ばかりだ。信じた我が馬鹿だった。我から早く降りぬなら焼き殺すぞ」

「ハハハハハハハハ! 待っていて下さいアンスリウム様! 憎きミアを八つ裂きにして差し上げましょう!」


 ヘルスターは妖狐を呼び起こした時に言葉巧みに騙したのだろう。ミアを一目見て聖女だと見抜いた妖狐の怒りの声は届かず、会話のかみ合わなさにミアが冷や汗を流し、数秒後にヘルスターが物理的に燃えた。

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