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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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人騒がせな馬鹿

 妖狐山でリリィと再会したミアたちは、旅館で借りた部屋に集まっていた。因みに、万能ポーションを売ったお金があるので、ミアとネモフィラは別々の部屋で泊まっている。勿論侍従が休憩する為の部屋も借りているので、今集まっているのは侍従たちの為に借りた部屋だった。

 さて、それはともかくとしてだ。ミアの聖女の話の事や、モーナが天翼会の裏会員“暗部班”のリーダーである事を話すと、話はクリマーテの事になった。


「クリマさんがモーナスさんと一緒に行動していたのじゃ!?」

「ええ。事の発端は、ディアボルスパラダイスがチェラズスフロウレスに戦争を仕掛けようとしていると、モーナが噂を聞いた事から始まったわ」

「戦争のじゃ!?」


 戦争と聞いて驚いたのはミアだけでは無い。それを聞いていた者は全員が驚き、驚愕で目を見張って言葉を失う。そんな中でモーナは得意気な顔になる。


「私の情報網は最強だからな」

「どこがよ。とりあえず今言った戦争の事は気にしないで」

「え!? 気にするなと言われましても……」


 そんな事無理だと、ネモフィラは目で訴える。でも、そんなネモフィラの気持ちを無視して、リリィは言葉を続ける。


「それで、それを聞いて、あの子……カナが勝手に行動をしたの。クリマーテは貴女の侍女だから、侍女としての実力は申し分ないでしょう? だから、捕まっていると聞いて、今の内にって助けるついでに協力してもらいに行ったのよ。他の人もそう。レムナケーテ侯爵にメグナット公爵。それからボーツジェマルヤッガー公爵もね」

「全員が行方不明者なのじゃ……」

「良かったですね。ミア。リベイアもミントもお父様の事をとても心配していました。無事だと知ればきっと喜びます」

「そうじゃのう。本当に良かったのじゃ。しかし、他の者は何処にいるのじゃ?」

「それは……」


 リリィがモーナに視線を向けると、モーナが自分の家で起こった事と、捕まってしまった事、それからリリィに救援要請をした事を説明した。ただ、その説明にはヘルスターの名前は出ず、ミアたちはヘルスターと出会った事を知らないまま話が進む。


「私が救援要請を受けて駆け付けた時には、既に残っていたのはこの馬鹿だけだったわ」

「うっ。すまん! 最初は一緒に牢屋に入れられてたけど、侍女が連れて行かれて何処に行ったか分からないんだ」


 モーナが両手を合わせて頭を下げ、その様子にリリィがため息を吐き出した。


「ついでに言うと、カナも一緒に拉致されたわ。この馬鹿を抑える抑止力……人質としてね」

「ぬう。面倒な事になっておるのう」

「でも、貴女達に会えて幸運だったわ」

「幸運なのじゃ……?」

「ええ。レムナケーテ侯爵はディアボルスパラダイスに到着後に、私とモーナの共通の知り合いに頼んで私に連絡を入れて来ていたの。この馬鹿が私を呼び出すより前にね」

「ぬ? と言うと、まさか、レムナケーテ侯爵は無事なのじゃ?」

「そうね。でも、彼だけではないわ。彼は元々は魔王に面会する為の準備をしていたみたいだけど、今はメグナット公爵とボーツジェマルヤッガー公爵、それからカナの護衛と一緒に別件で行動中なの」

「三人は無事なのですね。少しだけ安心致しました」

「三人は何をしておるのじゃ?」

「そうね……。話を戻すけど、この馬鹿が仕入れた戦争の噂話はただの勘違いだったの」

「ど、どう言う事なのじゃ?」

「貴女達はまだ知らない事かもしれないけれど、天翼学園では毎年()の月に各国対抗の競技として“トレジャートーナメント”を行うの。この馬鹿はそれの話を戦争と勘違いしたみたいね」

「…………」


 ミアは困惑して言葉を失い、モーナに視線を向けて目がかち合う。すると、モーナが何故か得意気な顔で胸を張った。


「武を競い合うから競技と言うよりは戦争に近いからな。学生達がそれで“魔王の命で戦争に打ち勝つ。特にチェラズスフロウレスのゴミ共は皆殺しするつもりでいけ”とか言ってたみたいだな」


 みたいだな。じゃないのじゃ。と、ミアが思ったのは言うまでもない。よくそれで情報網が最強と言えたものだと誰もが言いたくなったけど、呆気にとられて誰も言わなかった。

 何ともまあ人騒がせな勘違いだが、まあ、それだけ聞けば確かに戦争を仕掛けようとしていたと思っても仕方が無いかもしれない。それから詳しく話を聞くと、サンビタリアが関わったあの脱衣事件で王女がはずかしめを受けたらしく、それで国王が激怒したようだ。その怒りは尋常では無く、急遽兵を募集して、既存の兵を学生たちの教導員として使う程だったとか。そうして学生たちの実力を底上げして、憎きチェラズスフロウレスの学生たちを根絶やしにするくらいの勢いで、完膚なきまでに打ちのめそうと考えたようだ。


「そう言うわけだから、戦争の件が本当なのか嘘なのかを調べる為に、レムナケーテ侯爵達に別行動を取ってもらってるの。と言っても、結果は戦争になんてならない。となるでしょうけど」

「……でも、戦争が起きるわけでは無いのなら、本当に良かったです」

「うむ。そうじゃのう。でも、問題は残っておるのじゃ」

「ええ。カナとクリマーテを助けないといけないわ。でも、魔王も行方は知らないみたいだし、面倒な事になったわね。レムナケーテ侯爵にはそちらも調べるように言ってあるのだけど、警戒されているみたいで、情報が全く入ってこないのよね」


 リリィがモーナに視線を向け、モーナが少し不貞腐れるような表情を見せた。


「だから、その為にここに来たんだろ」

「その為……なのじゃ?」

「そうよ。ここ妖狐山に、フラウロスと行動を共にしていたヘルスターがいるかもしれないの」

「へ、ヘルスターなのじゃあああああ!?」

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