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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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噂は聖女の天敵

 新たな仲間を加えたミアは寄り道をせずに妖園霊国モノーケランドに入国し、マイコメール村までやって来た。マイコメール村の到着が夕方の十六時頃というのもあり、宿を探して泊まろうとするも、ここで問題が起きてしまう。


「おや。随分と可愛らしい旅人さんが来たわねえ。いらっしゃい」

「うむ。大人六人と子供が四人で合計十人なのじゃ」

「ははは。しっかりしたお嬢ちゃんだねえ。部屋は全員一緒で良いのかい?」

「大人の男が二人おるし別々が良いのじゃ」

「そうかい。じゃあ、そこにいる男の子は一緒でもいいんだね?」

「うむ。ラキは特別なのじゃ」

「あらまあ」

「うふふ。ミアとブラキはとっても仲良しなのですよ。勿論わたくしもです」


 ネモフィラがミアに同意するようにニコニコな笑顔で話すと、受付のおばちゃんがクスクスと笑みを浮かべた。


「仲が良くて可愛らしいお嬢ちゃん達だねえ」

「はい。仲良しです」

「ところで、お嬢ちゃん達も最近噂になっている“聖女”様の話を聞いて観光に来たのかい?」

「せ、聖女の噂なのじゃ……?」

「おや。知らないのかい? 少し前になるけど、この町はチェラズスフロウレスの攻撃を受けて壊滅寸前に追い込まれたんだけど、それを聖女様に救われたのさ」

「な、ななな、なん……じゃと…………っ」


 ここで起きてしまった問題。それは、ただの噂である。はい。まあ、そう言うわけなので、問題と言っても大した事は無い。ミアの心が抉られて恐怖を植え付けられただけで、ミア以外の者には痛くもかゆくもないのである。

 そんなわけでミアが一人で驚愕きょうがくし、恐怖で顔を真っ青にさせて硬直した。おばちゃんがミアのその様子に「どうしたんだい?」と尋ねても、全く反応を見せない動揺っぷり。あまりにもダメダメなミアの代わりに、ネモフィラが一人でおばちゃんと会話を続ける事になった。


「聖女がいたなんてびっくりしました。聖女様を見た方がいらしたのですか?」

「いいや。実際に見たって人はいないみたいだね。しかし、知らなかったなんて意外だねえ。ここ等一帯じゃ噂で持ち切りだってのに。最近じゃ、その噂を聞きつけて、一目でも聖女様を見ようって連中が村に来るのさ」

「まあ。そうなのですね」

「でも、残念だけどこの村に聖女様は来てないよ。村の人間なら誰でも知ってるけど、村を直接救ったのは聖女様の使い龍神様だよ。龍神様の背中に乗っていたって言う奴もいるけど、実際に見たわけでもないらしいし、ただの妄想なのさ。その妄想が誇張されて広まったのが、この噂の真相ってわけだ」

「そうなのですね」

「ま。ここだけの話、私はブレゴンラスドで龍神様と一緒に現れたって言う“聖女様の代弁者”こそが、実は聖女様なんじゃないかと思ってるんだけどね。話によると、とても綺麗で神々しい姿だったって話だよ」

「は、はあ……」

「アハハ。困らせちまったねえ。ごめんね。お嬢ちゃん。あくまで私の予想だから真に受けなくてもいいよ。こんな事を話した私が言えた義理じゃないけど、お嬢ちゃん達も聖女様の噂を聞いても騙されないようにしなよ」

「はい。ありがとう存じます」


 会話を終わらせると、未だに顔を青くさせるミアを連れて、ネモフィラたちは割り振られた部屋へと移動する。

 部屋割りは団体用の大きな部屋が一つと、二人部屋が一つだ。ミアとネモフィラには個々で部屋をとルニィが言いだす事も無く、これで決定した。理由は単純に手持ちの出費をなるべく少なくする為である。

 今回の旅では、本来のルートとは違うルートを選んで遠回りしている。今はまだお金に余裕があるけれど、万が一またルート変更で遠回りになったりするかもしれないし、他にも何かあるかもしれない。だから、出来るだけ節約しようという方針で決まったのだ。そう言うわけで、宿に泊まる時はこうしてなるべく借りる部屋を少なくしているのである。

 さて、それはそうと、部屋に入るなりミアがひざを落として敷かれていた絨毯じゅうたんに突っ伏する。


「――み、ミア!?」

「なんだ? 聖女の噂が流れてたくらいで大袈裟だな。元気出せよ」


 驚くネモフィラの隣でルーサが呆れると、ミアが顔を上げた。その顔は若干だけど涙目で、なんとも情けない顔である。


「何故じゃあ。何故少年の服を着ているのに女児だとばれたのじゃあ」

「そっちかよ!」

「ミアちゃんは素材が良いから直ぐ分かっちゃうのかもですね」

「はい。ミアはとっても可愛いです」

「ぬうう……」


 可愛いと言われて嬉しいけど、でも、それとこれとは話が別なので喜べない。ミアとしては、ルーサから借りた男の子用の服を着ている時は、前世で男だった時のように男らしくありたいのである。まったくもって面倒臭い性格だけど、それがミアなので仕方が無い。


「とにかく、ワシは聖女と思われぬように、ワイルドに振る舞うのじゃ」


 とか言っているけど、翌日には忘れるミアなのでした。

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