王宮へのご挨拶
シャークスネークを退治したミアたち一行は、早くもブレゴンラスドに到着していた。ブレゴンラスドへの旅路は平和で、ゆったりとしたバカンス気分を味わった。船を降りると、早速妖園霊国モノーケランドを目指す……なんて事はしなかった。何故なら、ブレゴンラスドの国王に挨拶してから向かうのが礼儀だと考えたから。そんなわけでミアたちは王宮に到着して、挨拶を終わらせるとプラーテの寝室に集まった。
「ミアちゃんとフィーラちゃん久しぶりだね!」
「うむ。久しいのう。プラーテ。元気にしておったのじゃ?」
「うん! 元気だったよお!」
「うふふ。お久しぶりです。プラーテ。今日も元気いっぱいですね」
「えへへ。実は~。明日はプラーテの誕生日なの。だから、明日はママとパパがプラーテの為に誕生日パーティーを開いてくれるんだよ」
「おお。それはめでたいのじゃ」
「お誕生日おめでとうございます。良かったですね。プラーテ」
「うん! 今から楽しみ!」
「明日と言うと、プラーテの誕生日は十月二十六日なのじゃ」
「ジュウガツ? 違うよ。プラーテの誕生日は未の月だよ」
「――っ! う、うむ。そうじゃそうじゃ! ワシ、ちょっと勘違いしたのじゃ」
(あっぶないのじゃああ! くううっ。こればかりはいつになっても慣れぬのう……)
アホなミアは置いておいて、ネモフィラとプラーテがニッコニコな笑顔で誕生日の話で盛り上がる。その姿は微笑ましく目に映り、侍従たちは笑みを浮かべて見守っていた。すると、そこで扉をノックする音が聞こえた。返事をするとプラーテの母親の王妃スピノが部屋に入ってきて、ミアを見ると表情に花を咲かせて、急ぐようにしてミアに近づいた。
「ミア様、来ていらしたのですね」
「う、うむ」
「ミア様と――」
「ま、待つのじゃ。命を救った相手とは言え、たかが他国の騎士に“様”を付ける必要は無いのじゃ」
「――っ。そ、そうね。……こほん。失礼したわ」
よほど嬉しかったのだろう。周囲にはミアの正体を知らない侍女や護衛騎士もいたのに、ミアに“様”を付けて呼んでしまうスピノ。だけど、ミアが咄嗟に説明臭いセリフを言う事で誤魔化して、スピノもそれに気がついて咳払いをして誤魔化す。それを見ていた正体を知らない侍女や護衛騎士は、二人の会話で納得したようで、微笑ましい出来事として二人を温かく見守った。
「ミアとネモフィラ殿下が来たと聞いて急いで来たの。前もって連絡をくれれば、歓迎の準備をしたのに」
「気持ちはありがたいのじゃが、聞くに、明日はプラーテの誕生日パーティーをするのじゃろう? プラーテの誕生日パーティの準備を邪魔せんで良かったのじゃ」
「まあ。ふふふふふ。ミアは本当にいい子ね。プラーテのお友達が貴女で良かった。もちろん、ネモフィラ殿下も」
「わたくしもですか? 嬉しいです」
「えへへ~。プラーテとミアちゃんとフィーラちゃんは仲良しだもんね!」
少女たちが顔を見合わせてニッコニコの笑顔になり、その尊さにメイクーが尊死寸前になる。しかし、そんなアホは放っておいて、スピノが「そうだわ」と両手を合わせた。
「明日のプラーテの誕生日パーティーに、ミアとネモフィラ殿下も参加してくれないかしら? きっとプラーテも喜ぶわ」
「わあ。わたくし達も参加させて頂いてよろしいのですか?」
「もちろんよ。ね? プラーテ」
「うん! 二人もプラーテと一緒にプラーテの誕生日をお祝いしてほしいなあ」
「それならワシ等もお呼ばれするかのう」
「はい。うふふ。楽しみです」
「やったあ!」
両手を万歳させてぴょんぴょん跳ねて喜ぶプラーテに、ミアとネモフィラも楽しそうに笑顔を向ける。メイクーが尊さの限界を迎えて塵になっているけど、まあ、それはどうでもいいだろう。ルニィやルティアたち侍従たちは明日のパーティーに備えて準備を始めた。




