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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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海に潜む凶悪な魔物をやっつけよう(2)

 騎士団専用の潜水船に乗り、チェラズスフロウレスの近海から離れて暫らくが経つ頃。シャークスネークの群れが船の中から見える程の距離までやって来た。


「おお。アレがシャークスネークなのじゃ? 初めて見るけどでっかいのう。十階建ての建物くらい大きいのじゃ」

「わたくしも初めて見ました。随分と大きいのですね」


 可愛らしく顔を寄せて、窓から外を覗き込む二人の少女。既に準備は万端で、二人とも海水浴に来たのかと疑うような可愛い水着姿だ。はたから見れば微笑ましいものだけど、これから向かうのはシャークスネークの群れの中。危険しかない。部下を連れて一緒に来た隊長も、二人の側で胃痛と戦っている。


「見た目はヘビなのですね。わたくしはサメを想像していました」

「うむ。灰色のでっかい蛇なのじゃ。でも、顔をよく見るとさめなのじゃ。それに鮫らしくひれもあるのじゃ」

「あ。本当ですね。小さくて直ぐには気が付きませんでした」


 楽しそうに話すミアとネモフィラの二人の姿は、本当に今から凶悪なモンスターを倒しに行くとは思えないもの。隊長は遂に痺れを切らして胃痛の原因を取り除く為、二人が話で盛り上がっているその隙に、部下に目配せして指示を出した。そしてそれは、ここに来るまでの間に部下たちとあらかじめ話をまとめておいたもの。ネモフィラがシャークスネークの群れの中に入って行く前に、何としても騎士の力だけで群れを撃退すると言う作戦である。目配せを受けた騎士たちは静かに頷き、二人に気付かれないように慎重にこの場を去る。


「ぬぬ? あれは一緒に船に乗っておった騎士ではないか?」

「あ。本当です」


 ミアとネモフィラの視界に騎士たちの姿が入り、早速戦闘が始まった。騎士は全員が魚人の騎士で、その動きは速く、ネモフィラには目で追うのも難しいものだった。だけど、シャークスネークは更にその上をいっていた。しかも、船の窓から覗き込んで見れる範囲だけでも、シャークスネークの数は軽く十は超える。

 対して騎士の数はたったの六人。しかも、魔装ウェポン所持者は一人もおらず、その分だけ弱いとハッキリ分かる。アンスリウム派の騎士がいなくなって人手不足だとしても、あまりにも少ない騎士の数と弱さに、ミアは少し心配になった。


(この状況で海の平和を守るとなると、結構大変そうなのじゃ。これは騎士の補充が早急に必要じゃのう)

「ワシもそろそろ行くのじゃ。シャークスネークの動きを見るに、フィーラはここでお留守番なのじゃ」

「……はい。残念ですけど、わたくしではあの速さについていけません。お役に立ちたかったのですけど諦めます」

「それがえのじゃ」


 これには隊長もニッコリ胃痛除去。というわけにもいかない。一番のうれいであるネモフィラは止める事が出来たけど、ミアが戦闘に参加するつもりだからだ。

 ミアの正体を知らない隊長にとって、これは死ぬと分かっている幼い子供を戦場に送り出すようなもの。そんな事が出来るわけがない。そもそもとして、窓の向こうで戦う彼等は今戦える騎士の中でも選りすぐりのエリートたちで、そんな彼等が苦戦している状況で子供を行かせられるわけがない。

 隊長は、最早これまで。と、不敬の罪で罰せられる覚悟を決めて、立ち去ろうとするミアの前に立って行く手を阻んだ。


「なんじゃ?」

「悪いが君をこの先に行かせるわけにはいかない。私の部下に任せて、君はここで大人しくするんだ」

「こう言っては失礼じゃが、あの実力と人数であの数を相手にするのは無理じゃろう。出来ても一匹を仕留められるかどうか程度だと思うのじゃ」

「――っ。どうやら、騎士を名乗るだけあって見る目はあるようだ。しかし、君は自分の力を過信している。シャークスネークは一匹で武装船を沈める力を持っているのだ。君のような幼い子供が敵うような相手ではない」

「ぬう。仕方が無いのう」

「分かってくれて良かった」


 隊長は安堵の息を吐き出して、ようやく治まる胃痛に胸をなでおろして微笑む。


「シャークスネークは恐ろしいモンスターだが心配はいらない。彼等は退き際を心得ている。彼等が退き、ここに戻って来る時があれば、それが退散の合図だ。だから、君達を危険な目には合わせない。それに、実は他国に協力要請も出していて返事を待っているんだ。時間はかかるかもしれないが、討伐まで待っていてほしい」

「そんな心配はいらぬ」

「いらない……?」

「うむ。人前で撃つのは心配だけど、この際そうも言っておれぬし仕方が無いのじゃ」

「何を言って――っ!?」


 隊長が話の途中で驚いたが、それもその筈だろう。ミアのミミミ髪留めが目の前で銃に変わり、ミアがその銃を発砲したのだ。


「それは……その髪飾りは魔装ウェポンだったのか!? いや! それより何をしているんだ!? こんな所で銃火器など使っては大変な事になるぞ!」

「終わったのじゃ」

「お、終わった……? 何を言っ――――っな!?」


 ミアが窓の向こうに指をさし、その先を見れば、シャークスネークの死骸しがいの山。シャークスネークはいつの間にか何かに攻撃をされていて、しかも、全てのシャークスネークの額から血が流れて絶命している。隊長はその様子に驚愕し、ネモフィラの前だと言うのに我を忘れて窓にしがみついて、全てのシャークスネークが仕留められているのを見て思考が停止した。


「ミア! 今のはなんですか!? 凄いです!」

「狙った獲物を貫通力を高めたホーミング機能付きの銃弾で仕留めただけなのじゃ」


 だけとは? な発言のミア。相変わらずの規格外の強さを見せつける。そんな中、苦戦していたシャークスネークが一瞬で死骸と化したのを目の前で見た騎士たちは、困惑して呆然と立ち尽くしていた。

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