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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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休暇届と妙な噂

 クリマーテからミアに送られた手紙は休暇届だった。手紙にはクレスト公爵家の令嬢カナに誘われ、魔人の国に行く事が書かれていた。ブレゴンラスドの現状も教えてもらったようで、聖女の代弁者の話の事も少し書かれている。しかし、その文面を見るに代弁者がミアだと勘違いしているような内容で、それでミアが無事だと思い手紙を出したようだ。そして、そこには直ぐ側に帰らない事への謝罪なども書かれていて、自分の心配はしないでほしいとも。

 ミアは一通り手紙を読み終わると、それをルニィに渡して頬杖をついた。


「なんか隠しておるのじゃ」


 クリマーテの手紙には、何故魔人の国に行く事になったか書かれておらず、そこがミアには妙に引っかかった。と言うのも、例え代弁者の話を知っていて、それがミアだと勘違いをしていたとしても、クリマーテの性格なら本人かどうかを会いに来て確認すると思ったからだ。

 クリマーテはああ見えてしっかりしている所があり、ブレゴンラスドから一人でチェラズスフロウレスに行こうとする程だ。そんな彼女が、ミアに手紙だけ残して魔人の国に行ったりするだろうかと思うのも、仕方が無いのかもしれない。


「確かに……ミアお嬢様の仰る通り、何か隠し事をしていますね。クリマーテの性格であれば、休暇がほしい理由も書く筈ですから」

「クリマさんはそこ等辺真面目じゃからのう」

「そうですね。普段の様子からは想像できませんけど」


 実際にミアが感じた事は、ルニィやヒルグラッセも感じたのだろう。ルニィの言葉にミアが同意して頷くと、ヒルグラッセも同意した。しかし、クリマーテの事をあまり知らないネモフィラは首を傾げた。


「カナに誘われて魔人の国に行くからと書いてありますけど、これが理由では無いのですか?」

「もちろん理由にはなると思うのじゃ。でも、魔人の国に何をしに行くのかが書いておらぬ。いつものクリマさんだったらそこも書いて報告してくれるのじゃ」

「そうなのですか」

「別に休暇の理由なんて事細かに話す必要が無いのじゃが、意外と真面目なのじゃ」

「では、それを書く暇も無い程に急いでいたのではないでしょうか? 宛先を書き忘れていた様ですし」


 ネモフィラの意見に、ミアとルニィとヒルグラッセが成る程と手紙の文面を再び見る。確かにじっくり見ると、少しだけ走り書きしたような、雑さが文に現れていた。


「言われてみると、丁寧に書いているようで少し粗が見えます。それに、態々(わざわざ)心配しないでほしいと書くのも引っかかりを覚えますね」

「もしかして急がねばならぬ何かがあったやも知れぬのう」


 ミアは手紙と睨めっこしてから顔を上げる。


「やはりワシ等もクリマさんを追って魔人の国に行くのじゃ。もしかすると何か良くない事が起こっておるやもしれぬ」

「では、明日にまた船着場に向かいましょう。状況が変わっているとは考えられませんが、何か良い手段が見つかるかもしれません」

「うむ。ルニィさんは今日中にこの事を手紙に書いて城に送ってほしいのじゃ」

「承知致しました」


 ルニィが返事をして下がると、変わるようにしてヒルグラッセが前に出た。その様子にミアが首を傾げると、ヒルグラッセが「実は」と前置きを入れて話し出す。


「先日の腹痛で持ち場を離れさせて頂いた時の事なのですけど、お手洗いに向かう途中で妙な噂を耳にしたのを思い出しました」

「妙な噂なのじゃ?」

「はい。ディアボルスパラダイスでは今、兵を大々的に募集しているそうなのです」

「そう言えば、魔人の国は騎士がおらぬ国で、代わりに兵士がおったのう。しかし、何が妙なのじゃ? チェラズスフロウレスでも最近は処分されたアンスリウム派の騎士の穴埋めの為に募集をしておるし、魔人の国でも何かあっただけだと思うのじゃ」

「私も最初は同じように考えたので、そこまで気にしていなかったのですが、クリマーテの手紙の内容を見て引っかかったのです」

「ふむ……む? 確かに言われてみるとそうじゃな。クリマさんが魔人の国に行く理由を書いておらぬし、意外と何か繋がりがあるのかもしれぬのじゃ」

「はい。念の為、その事も陛下にお知らせした方がよろしいかと」

「そうじゃな。ルニィさん。それもお願いするのじゃ」

「承知致しました」


 ヒルグラッセが聞いた噂。それは一見とくに気にするような事でも無いけど、しかし、何やら嫌な予感がするものだった。そして、それは見事に当たっているのかもしれない。何故なら、クレスト公爵家の令嬢カナの話が本当であれば、魔人の国ディアボルスパラダイスはチェラズスフロウレスに戦争を仕掛けようとしているからだ。しかし、真相は不明で、何よりもミアたちはそれを知らないのだ。だから、これはあくまでも憶測にすぎなかった。


「何事も無ければいのじゃが……」

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