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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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旅の始まり

 日本で例えるなら九月にあたるうまの月になり、天翼学園の二学期が始まる。精霊たちもその頃になると学園に戻っていて、貴族の子等も学園に向かったのもあり、賑やかだった城内や王都も少し静かになった。しかし、未だにアンスリウム派が王都で好き勝手にしていた傷跡がまだ残っていて、大人たちは忙しい毎日を過ごしている。そんなある日のこと。ミアの許にようやく信頼できるクリマーテの行方の情報が入ってきた。


「あ! あったのじゃ! クリマさんの名前が書いてあるのじゃ!」

「はい。ブルーガーデンから出港した船の乗客名簿を手に入れる事が出来て幸いでした。この船の行先は魔人の国“ディアボルスパラダイス”で間違いございません」


 ルニィの話を聞きながら、ミアはその行先を見て「本当なのじゃ」と目を向ける。さて、この船の乗客名簿だが、提供者はクレスト公爵だった。

 実はクリマーテを連れて魔人の国に向かったカナの行動は親も知らない行動で、父親のクレスト公爵も娘の行方を捜していたのだ。クレスト公爵はランタナがブルーガーデンに住む貴族と情報を交換している事を知り、クリマーテ等を捜している情報を手に入れた。だから、秘密裏に入手した乗客名簿を提供してくれたのだ。


「これで決まりじゃ。ワシも魔人の国に向かうのじゃ。確か、ブルーガーデンから船で向かえば二ヶ月程の距離じゃったか?」

「ここからブルーガーデンまで馬車で一月ひとつきかかりますので、合わせて三月みつきになり、往復で半年です。本当に向かわれるのですか?」

「当然じゃ。魔人の国には魔装ウェポンの密輸犯がおるかもしれぬのじゃ」

「本来であれば、侍女の為に主人が態々(わざわざ)出向く必要は無い。と、申したい所ですが……。それに長旅になればその分も危険がともないます。出来れば大人しく帰りを待って頂きたいと存じます」

「なあに。心配はいらぬ。今回はワシが一人で魔法の翼を使って飛んで行くのじゃ。向こうで捜す事にはなるけど、一週間もいらぬのじゃ」


 ミアが得意気に話すと、ルニィが困ったように視線を逸らした。その視線の先には一人の女性がいて、その女性は眉尻を上げてミアを睨む。


「駄目よ。貴女は当分自分の魔法を禁止なんだから」

「ぐぬぬ。ジェティ……」


 ルニィが視線を逸らして向けた相手は、天翼会の会員ジェンティーレだった。彼女は学園が始まっても、未だにこの城に居すわり続けていたのだ。


「お、お主には関係の無い事じゃろう? それに、さっさと学園に帰るのじゃ」

「そうはいかないのよねえ」

「な、なんでじゃ……?」

「ここ、結構居心地いいんだ。気に入ってしまったよ」

「本当に帰れなのじゃ!」


 ミアが恨めしそうに睨み、ジェンティーレがそれを鼻で笑って紅茶を飲む。ルニィはため息を吐き出したいのをグッとこらえて、ジェンティーレに追加の紅茶をれてからミアに提案する。


「せっかくジェンティーレ様がいらっしゃるのですから、お頼みして転移装置を使って魔人の国に向かってはいかがですか?」

「……それじゃ! 流石はルニィさんなのじゃ!」


 ルニィの提案にミアが喜んでジェンティーレに視線を向ける。しかし、ジェンティーレは首を横に振った。


「今のチェラズスフロウレスは他国から警戒されてるでしょう? 天翼会が許しても、ディアボルスパラダイスの王からの許可が下りないだろうね」

「そ、そこをなんとか……ならぬのじゃ?」

「貴女が“聖女”だって公開すればどうにでもなるかもしれないけれど……でも、それは嫌でしょう?」

「ぬぬう……」


 ミアはショボンと落ち込んで肩を落とした。今更と思うかもしれないが、本当に聖女である事を隠したいのだ。そのわりには魔法をバンバン使っているけど、ミアはこれでも本気である。


「やはり魔法でひとっ飛びするしかないのじゃ」

「この際だからハッキリ言ってあげようか。今までは運良く皆が貴女に味方してくれたおかげで、何とかなってきただけ。だけど、今後はそんなものは通用しないと思った方がいいわ」

「し、しかしのう」

「貴女もさっき言ったでしょ? 魔装ウェポンを密輸していた奴が逃げた先がディアボルスパラダイス。もし下手に動いて正体が知られたら、果たして貴女の事情をんで黙っていてくれるだろうか? 私はそうは思わないなあ。逃げる為に場を混乱させる手段として利用する。なんて展開にならなければいいのだけど」

「ぬああああ! フラグになるから例え話はやめるのじゃ! 縁起でも無いのじゃあ!」

「とにかく、そう言う事だから使っていいのは魔装ウェポンだけ。それも、込める弾丸は貴女の腕の魔石の魔力のみ。正体がバレて良いのは犯人と万が一にも出会った瞬間のみ。それなら貴女のミミミでどうにでも出来るから。分かったかい?」


 ミアは自分の腕に視線を向ける。腕には腕輪があり、そこに輝く二つの魔石。火と風の魔石だ。


「仕方が無いのじゃ」


 こればかりは仕方が無いとミアはため息混じりに答え、頷いた。


「よろしい。まあ、そんなに落ち込まないでよ。私も色々と長旅に備えて幾つか準備してあげるからさ。学園に帰るのはそれからにするよ」

「うむ。お願いするのじゃ」


 本当にミアが長い旅路で魔法を使わない事が出来るのか心配だけど、兎にも角にも長旅の準備を始める。そして三日後。ミアは仲間たちを連れて長い旅に出たのだった。

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