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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第五章 聖女と歩む異世界旅行
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捕らわれの侍女と二人の少女

※第五章開幕です。



 チェラズスフロウレス領内の海の底に、ブルーガーデンと言う名の港町がある。そこは海底でも空気があり、様々な種族が暮らしている。ブルーガーデンの名前の由来は、この町の隅々に咲く花の色だ。そして、その花の名前はフィッシュラベンダーと言う。

 フィッシュラベンダーは青く美しい花を咲かせ、その花弁は魚の形をしている。塩分を含む海水を吸収して育つので、料理に塩代わりの調味料として使われる事も多い。ただ、調味料として使うには微かに花の香りがするので少し扱い辛く、好き嫌いも人によっては出てしまう。

 アンスリウムがまだ王様気取りをしている頃、ブルーガーデンに建つ駐屯地の地下牢の中に、腕や足にあざがあるクリマーテの姿があった。クリマーテの目の前には質素な食事が置かれていて、その調味料に使われているのが、まさにそのフィッシュラベンダーだった。牢の中だと言うのに花の香りが漂っていたけど、今のクリマーテの心情ではその香りや食事を楽しむ事は出来なかった。

 そしてその牢の番をしている男が二人。男たちは直立不動で牢の前に立ち、無駄口もせずにしっかりと番を務めている……なんて事は無かった。休憩室から運んできた椅子を牢の前に並べて、気怠けだるそうに座っている。武器も椅子に立てかけて、やる気の無さが目に見て分かるていたらくだ。彼等は牢の中でうつむいて黙って座るクリマーテを一瞥いちべつすると、二人同時にため息を吐き出した。


「王都の連中は良いよな。今はアンスリウム陛下のおかげで金と女が簡単に手に入るらしいぜ」

「いいよなあ。俺達だってアンスリウム様の派閥に入ってんのに、王都と辺境でこの扱いの差だぜ。やってらんねえよ」

「全くだ。目の前にいい女がいるのに手も出せねえ」

「罪人なんてどう扱っても構わねえだろっての」

「だよなあ……あ。そうだ。脅せばバレないんじゃねえか?」

「……お前頭いいな。それだよそれ。どうせこの女は死刑になるって話だろ? だったらその前に楽しませて貰おうぜ」

「決まりだな」


 男たちが下卑た笑みを浮かべて立ち上がり、クリマーテは顔を上げて恐怖で体を震わせた。するとその時だ。地上の方から凄まじい爆発音が聞こえて、下衆共が狼狽うろたえる。そして、慌てて床に転がった武器を拾おうとして、その直後に一人がとんでもない速さで吹っ飛び壁に激突して意識を失った。

 砂煙や瓦礫が舞い、地上から流れてくるフィッシュラベンダーの微かな香り。もう一人の男は目を見開いて驚き、出入口に体を向けて、震えながら武器を構えた。


「カナー! 雑魚しかいないぞ! 本当にここに聖女の侍女がいるのかー?」

「こら馬鹿モーナ! 聖女言うな! 誰かに聞かれたらどうすんの! 馬鹿!」

「馬鹿って二回も言うな! 私は最強だ! 馬鹿じゃないわ!」

「いや。馬鹿と最強は関係無いでしょ。ホント馬鹿だよね。あんた」


 何やら騒がしい少女の声が二つ聞こえて、この場に姿を現す。

 カナと呼ばれた少女は綺麗な黒い髪に、琥珀こはく色の瞳を持つ少女で、ミアの二つ上程度に見える容姿。貴族服を身に着けていて、腰には剣を提げている。

 もう一人、モーナと呼ばれた少女は猫耳と猫尻尾を生やした少女で、更にその二つ上程度の見た目の容姿。オレンジ色の髪に、茶色で猫の様な瞳。露出が多く、下は短パン、上は水着のビキニトップス。

 そんな見た目の少女等は現れると、目の前で武器を構えて震えている男には目もくれず、牢の中で驚いているクリマーテに視線を向けた。


「あー! やっぱいたじゃん。メグナット公爵の情報バッチリじゃんか」

「なんだ。その女がクリマーテって奴か? 全然強そうじゃないな」

「侍女なんだから当然でしょうが」

「そうか? 聖女の――」

「言うなって言ってるでしょうが」


 つっこみを入れながらカナがモーナにデコピンする。すると、モーナは「んにゃ」と可愛い悲鳴を上げて涙目になった。


「何をするー!」

「それより、さっさと助けてずらかるよ。外で騎士団長達が待ってんだから」

「にゃあああ! こうなったら八つ当たりしてやるわ!」


 モーナが怒り、その矛先を男に向ける。理不尽極まりない展開に男は恐怖し、その直後にモーナに殴られ吹っ飛んで気絶した。カナはその間に剣を抜き取り、牢の鉄格子を見事に切り落とす。とても見た目の年相応に見えない少女たちに驚きながらも、クリマーテはカナが自分に近づいた時にふと思い出した。


「助けて頂いてありがとうございます。その……もしかして、クレスト公爵家のご令嬢のカナ様でしょうか……?」

「うん。私はカナ=H=クレスト。んで、あっちの馬鹿がマモン。私はモーナって呼んでますけどね」

「また馬鹿って言ったな!」

「はいはい。言いましたよ~。それより、クリマーテさん。ネモフィラ殿下の近衛騎士の侍女である貴女にしかお願い出来ない頼みがあるんだけど、聞いてくれませんか?」


 クリマーテにとっては奇妙な質問だった。一応隠そうとはしているけど少女等二人はミアの正体を知っていて、だからこそ、その侍女である自分に頼みがあると言うのだ。だから、クリマーテは警戒し乍らも「なんでしょう?」と尋ね返した。すると、カナはニッコリと可愛らしく微笑んで、とんでもない事を言いだした。


「魔人の国ディアボルスパラダイスがチェラズスフロウレスに戦争を仕掛けようとしてるので、止めるのを手伝って下さい」

「…………え? ええええええええええええ!!!???」

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