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幕間 騎士見習いは恋バナに飢えている

 私はブラキ=O=ジュラ。龍神国ブレゴンラスドにTS転生した元女の男の子。前世で高校二年生になったばかりの頃に、猪に襲われて死んでしまった。

 生まれたばかりの頃は浮かれていて、でも、直ぐに前世と違う世界のルールだとか女の体と男の体で勝手が違うとかで今では先行き不安な毎日を過ごしてた。だけど、春の国チェラズスフロウレスのミアちゃんに出会って、少しだけど前向きに生きられるようになった。なのに、先行き不安は変わらない。だって、チェラズスフロウレスで暗躍していたらしいアンスリウム元王子を、ケーラ殿下達と一緒に連れて帰る事になってしまったから。

 普通は処刑されるものじゃないの? ケーラ殿下は喜んでいるけど、本当に理解出来ない。チェラズスフロウレスは平和な国って聞いていたけど、平和ボケしすぎだよ。私は不安だなあ。アンスリウム元王子って腹黒らしいし、ブレゴンラスドで暴れたりしないか心配だよ。


「ミア! 助けてくれ! 頼む!」


 はあ。……ほら。騒ぎ出したよ。あんなのと一緒に国に帰るのやだなあ。なんで皆これを受け入れてるんだろう? やっぱり、ミアちゃんが聖女様だから? あ。そっか。だから、聖女様の近くにあの人を置かない為に、うちに連れて帰るのか。やっぱり処刑すべきじゃんか。

 はあ。やだなあ。あんなのルックスが良いだけじゃん。ケーラ殿下はアレのどこが良いんだろう? 今度聞いて……駄目だ。私なんかの立場じゃ、恐れ多くて聞けない。


「おい。ブラキ」

「へ? あ。はい。なんでしょう……?」


 馬車の中で何故か相席してしまったルーサ様に話しかけられた。

 ルーサ様は私の従姉いとこだから、ブレゴンラスドのお国柄では関係に上下関係が無いみたいだけど、私の方が年は下だし何より怖いので敬語を使ってる相手だ。

 ルーサ様って絶対素材は良いのに、いっつも男の格好なんだよね。喋り方も荒っぽい男な感じだし。もったいないなあ。なんでルーサ様のご両親は、こんな男っぽく育てたんだろう? 絶対馬鹿だと思う。親ガチャ失敗だよね。怖くてそんな事は本人には言えないけど。


「てめえ。ミアと随分と仲良くなったみてえじゃねえか」

「へ? そうですけど……?」

「コツとかあんのか?」

「……コツ?」


 え? なにこれ? ルーサ様が目を逸らしながら、しかも顔がちょっと赤くなってない? 嘘? まさかこの子ツンデレな感じのアレ? て言うかミアちゃんに恋してない? 可愛い。


「なにニヤついてんだ? 余裕ぶってんじゃねえぞ」

「いえいえ。そんなんじゃないですよ」

「ちっ」


 やだ。どうしよう? 怖いなあって思ってたのに、凄く可愛く見えてきた。あ。そうか! 男として育てられたから、男らしく好きになる子も女の子って事!? あら~。


「コツと言うわけでは無いですけど、ミアちゃんはああ見えて精神年齢は高いようなので、子供らしく扱うよりは同年代か大人として接した方が良いかもしれません」

「……なるほど。確かに五歳ってわりには、全然そう言う風に見えねえな。能天気姫と比べると余計にそう感じるぜ」


 能天気姫て……。それって絶対プラーテ殿下の事だよね? 聞かなかった事にしよう。


「よし。他に何かあるか?」

「え? 他ですか? そうですねえ……」


 ミアちゃんが前世で男だったのは言えないし、ん~。これは難題だなあ。でも、ハッキリと分かる。私のこれからの先行き不安な人生は、少し楽しくなりそうだ。まさか、こんな身近に恋バナが出来そうな人がいたなんて。もっと早く気がつくべきだったなあ。

 そんな事を考えながら、私はルーサ様と帰りの旅路を楽しく過ごした。でも、この時の私はまだ気が付いていませんでした。ルーサ様と仲良くなると言う事が、どれだけ大変な事かなんて。でも、仕方が無いと思う。だって、男の子に生まれてきて、初めての恋バナなんだもん。

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