聖女の能力(3)
「あはは。物騒って……。ミアちゃんには【神々の助言】って言う能力が物騒に聞こえるんだね」
「ぬぬう……」
能力取得装置を使ってもいないのに能力を二つ持っていたと知って、ミアは驚き、ジャスミンが苦笑した。すると、眉尻を下げ、ミアはしょんぼり顔になる。
「しかし、何で二つも能力があるのじゃ? 一つ持っていた事だけでも信じられぬし、二つも所持するなど、そんなのどの本にも載っていなかったのじゃ」
「あ~……うん。流石に載ってないんじゃないかなぁ。それに、ミアちゃんの場合は特殊だし」
「ワシの場合は特殊なのじゃ?」
「うん」
ジャスミンは頷くと、二人の会話を黙って聞いていた精霊たちに一度視線を向ける。すると、精霊たちが微笑んで、ミアの目の前に移動した。
「のじゃロリの元々持っていた能力は、魂引流帰ではなく神々の助言だったんだと思うッス」
「神々の助言の効力は色々なものがあるです。その内の一つが【神の加護】を得る事です」
「神の加護……? 自然界の加護とは別のものなのじゃ?」
「です」
自然界の加護。それは、この世界にある特殊な力。基本は精霊全員が持っていて、魔物や獣なども持っている。効果は色々あるが一つ例を挙げるならば、火の加護を持っていると火属性の攻撃魔法を受けてもダメージを受ける量が少なかったりする。と言うもの。そしてそれは魔法に止まらず、溶岩に触れても平気だったりと、色々な利点がある。溶岩の中に封印されていた龍神も火の加護を持っているからこそ、封印解除直後に溶岩の中でも平気だったのだ。そして、ミアが能力【神々の助言】の効果で得ているものの一つに【神の加護】があった。
「ミアさんは神の加護の力で能力を追加で一つ持ってたんだぞ」
「がお。ミアは転生者だから本当は一つだけど、道具を使わなくても覚えた」
「そうじゃったのか……ぬぬ? 転生者……? 今転生者と言ったのじゃあ!?」
ミアがめちゃくそ驚いて大声を上げて、精霊たちが耳を塞いで、ジャスミンも耳を塞ぎながら冷や汗を流す。そして、まさか? の身バレにミアは頭を抱えた。あの時感じたバレてしまったかもしれないと言う予想が当たっていたのだ。絶望に打ちひしがれて、ミアの目が死んだ魚のようになる。
「さっきから煩いです」
「ほら。ボクが言った通りだったッス。のじゃロリは転生者である事を隠したかったんスよ」
「がお……。ごめんなさい」
「ラーヴは悪くないんだぞ」
「そうだよラヴちゃん。ミアちゃんにこの話をしようって言ったのは私なんだもん」
「ぬぬう。バレてしもうたのであれば仕方が無いのじゃ」
ミアはがっかりと肩を落として、悲しそうな瞳をジャスミンに向けた。
「それで……話をまとめるとじゃ。転生者であれば元から能力を一つ持っておって、ワシが持って生まれたその能力が聖魔法を使える理由で、ワシが転生者だと知ったきっかけになったのじゃな」
「おお。理解が早くて助かるよぉ。でね。神々の助言を通して神の加護を授かったミアちゃんだからこそ聖魔法が使える。とっても凄い事なんだよ」
「どれだけ凄くてもめちゃんこ迷惑なのじゃ。……ぬぬう。転生者と言うのは、みんなこう言うものなのかのう」
「あはは……」
ジャスミンが冷や汗を流し、目を逸らす。その顔は何かを隠していそうな表情をしていたけど、ミアは人の秘密を探るのは好きでないので、とくに気にせずそのまま流した。すると、トンペットが二人の顔の目の前まで飛んで、ミアの顔をジッと見つめた。ミアは突然どうしたのかと少し困惑し、トンペットと見つめ合う。二人が見つめ合って数秒が経つと、トンペットは何かに納得したような表情を見せ、ジャスミンの肩の上に乗った。
「ご主人。のじゃロリなら信用出来そうだし、よわゴンの良い相談相手になってあげられるんじゃないッスか?」
「うん。やっぱりそうだよね。一応本人に許可は取ってるし、思い切って話しちゃおうか?」
「アタシは賛成なんだぞ」
「がお。お友達が増える」
「ジャスはおバカだから乙女心が分からないので丁度良いです」
「そ、そんな事無いよ?」
ジャスミンと精霊たちがミアを置いて盛り上がり、ミアは頭にクエスチョンマークを浮かべて困惑した。
(な、なんじゃ? よわゴンの相談相手とか乙女心とかって、いったい何の話なのじゃ?)




