聖女の能力(1)
ブイドハンバルの尋問が終わっても、直ぐにブレゴンラスドの王宮に戻るとはならなかった。理由は、リベイアが目を覚ますまでこの村で待とうとなったから。チェラズスフロウレスが大変な時に、そんなゆっくりしてても良いのかとルーサに問われたけど、問題は無い。何故なら、国王ウルイが自分の国の事だからと、既に行動しているからだ。当然と言えば当然な事ではあるけど、国王自らが動いている以上、ミアたちが急ぐ必要は無いのだ。
「ミアちゃん。ちょっといいかな?」
「のじゃ?」
ネモフィラやプラーテと空き部屋の外でお話をしていると、ジャスミンに呼び出される。どうやら他のみんなには聞かせられないとかで、ジャスミンとミアの二人だけで……いや。正確には精霊四人を入れて六人で移動する。そうしてやって来たのは人気の無い畑のど真ん中で、誰かが近づけば直ぐ分かるような場所だった。
「こんな所まで呼び出してどうしたのじゃ?」
「えぇっと……うん。実はね……ごめんなさい!」
顔の前で両手を合わせ、ジャスミンが突然謝罪した。だけど、ミアは何が何やらで意味不明である。ミアが「本当になんなんじゃ?」とジト目を向けると、ジャスミンはショボンとした表情を見せた。
「ミアちゃんが天翼学園に来ていた時にこれを使って情報を見たの」
ジャスミンがこれなる物を見せ、ミアが注目すると、それは魔石が二つはめ込まれている腕輪だった。だけど、ミアは初めて見た物だったのでこれが何なのか分からない。だから、首を傾げて頭にクエスチョンマークを浮かべるだけ。それを見て、トンペットがくるりと宙を舞ってミアの目の前に出る。
「ステータスチェックリングって言う魔道具ッス。ボク等はステチリングって呼んでるッス」
「ステチリング……? 初めて聞くのじゃ」
「それはそうッスよ。ステチリングの性能はヤバいッスからね~。限られた人しか持たないようにしてるんスよ」
「ほう。ジェティの発明品なのじゃ?」
「博士のご先祖様の博士が作ったッス」
「ふむ。ジェティの先祖も魔道具を作っておったのじゃなあ」
ミアが成る程と納得していると、ジャスミンが説明を始めた。
ステータスチェックリングとは、対象相手の情報をある程度見れると言う物。見る事の出来る情報は、“名前”“年齢”“身長”“BWH”“職業”“装備”“属性”“能力”など。対象が人では無く魔物や獣の類であれば、また違った情報を調べる事が出来る。かなりの万能アイテムである。
ジャスミンはこれを使ってミアの情報を確認して、本当に聖女なのかどうかを見たようだ。
「しっかり職業が“聖女”だったし、属性も“聖”属性だったよ」
「ワシは聖女では無いのじゃ」
「え? あ、うん」
「しかし、そんな便利な物があるのじゃなあ。BWHが見れるとは……開発したジェティの先祖はエロ親父に違いないのじゃ」
「ううん。とっても可愛いお姉さんだよ。サガーチャって言う名前の。幾つか本を出してたんだけど、知らない?」
「サガーチャじゃと!?」
サガーチャと言う名前を聞いてミアは驚いた。何故なら、ミアが独学でこの世界の事などを勉強していた時にお世話になった本には、幾つかその名前が書いてあったからだ。主に魔石や魔法、そして魔道具に関連する本で、もの凄く丁寧で解かりやすい本ばかりだった。だから、ミアはサガーチャと言う名の作者が書いた本を好んで読んでいたのだ。まあ、つまりは著者のファンである。
「ミアちゃん?」
「す、すまぬ。取り乱したのじゃ」
(ぬおおおおお! なんだか感動するのじゃ。まさかサガーチャ先生が魔道具を作っていて、ジェティのご先祖さまだったなんてなのじゃ! 今度ジェティに会うたら詳しく聞くのじゃ!)
ミアは興奮してルンルン気分だ。友人の先祖が好きな著者だったので仕方が無いが、そんなミアを見てジャスミンは目を丸くする。すると、二人の会話を聞いていた精霊たちがジャスミンの耳元で何やらこそこそと話しだし、ジャスミンがハッとなって咳払いを一つした。
「と、とにかく、今から話す事が本題なんだけど……。えとね、ミアちゃん。ミアちゃんは死後一時間以上経つと、甦らせる事が出来ないと思ってるんでしょ?」
「流石はジャスミン先生なのじゃ。復活の魔法はそう言う制限があるのじゃ。……むむ? 引っ掛かる聞き方をするのう。出来ないと思ってる……なのじゃ?」
「うん。ミアちゃんは【魂引流帰】って言う凄い能力があるみたいなの」
「婚姻ルーキーなのじゃ?」
魂引流帰です。




