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呪いの一種

 スノウの人形が氷の粒となり山を作ると、ミアは急いで周囲の魔力を探ってスノウの本体を捜した。だけど、その直後だ。先程まで人形だった氷の粒が意思を持っているかのように動き出し、ミアとネモフィラの周囲に集まり出した。そして、それが二人を閉じ込めるように氷のおりへと姿を変える。更には二人を閉じ込めたおりの屋根がふくらみ、それがスノウの姿を形作った。


「ふう。聖女と王女の生け捕り成功ね。あ。やっほお。ルーサ。久しぶり」

「なんも喋らねえと思ったら、今まで相手にしてたのが人形だったとはな」


 人形と変わらぬその姿だが、今度こそ間違いなく本人。これこそがスノウの持つ魔装ウェポンの力の成せる業。


「驚いたでしょ? 貴女と違って、私は日々努力してるの。魔装ウェポン氷槍の杯(フリーズカップ)】に私の魔法や能力スキルを加えて、新しい力を手に入れたのよ」

(なるほどのう。どうりでこやつの魔装ウェポンの性能を調べても分からぬ事が多かったわけじゃ。しかし、そうなるとジェティの情報だけで分かった気になっておると、痛い目を見る事になるのう。……って、今既になっておるのじゃ)


 などと考えたミアだったが、全く痛い目にはあっていない。なんならスノウが勝ち誇って姿を現した事で、決着がついてしまったようなもの。何故ならば、ミアとネモフィラが入っている檻の上にスノウが現れたから。“氷”で出来た檻のおかげで、上を見上げればスノウが間近に見えている。そして、既にヒルグラッセとルーサの勝敗は決していた。つまり、もうミアが遠慮する必要が無いのだ。


「この二人は私が貰って行――――っぅくぁ!」


 ミミミピストルから炎の弾丸が飛び出し、氷の檻を貫通してスノウのひたいに直撃する。スノウは意味も分からないまま額に受けた衝撃で、そのまま意識を失って倒れた。すると、氷の檻が砕けてスノウが落下し、ミアがネモフィラを抱き寄せながら避ける。ネモフィラは少し驚いてドキドキしたけど、さっきの事を引きずって、いつもの調子が出ずに「ありがとうございます」と遠慮がちに言うだけだった。


「おっ。やっと氷が溶けてきたな」


 ルーサの言葉を聞き視線を地面に向ければ、少しずつではあるけど凍った地面が溶けている。それは建物や植物も同じで、一先ずは厄介な現象を抑えられたようだ。ミアたちはそれを確認すると、ジャスミンたちが向かった場所に行こうとなった。

 気絶しているスノウは目を覚ましても暴れられないように、ヒルグラッセが魔法で出した鋼鉄の鎖で縛り連れて行く。そうして龍神の背に乗って進むと、村の中に野営地を発見して、ジャスミンやランタナの姿を見つけた。しかし、何やら不穏な様子。


「何かあったのでしょうか?」

「とりあえず話を聞いて見るのじゃ」


 ネモフィラの質問にミアが答えて、龍神に頼んで地上に降りる。空から突然現れた龍神に村人たちが驚いて呆然としたが、それはランタナも一緒。ランタナは龍神を初めて見たので、開いた口が塞がらない程には驚いていた。そんな中、ジャスミンは精霊たちと一緒に少し困ったような表情で近づいて来た。


「良かったぁ。そっちは上手くいったみたいだね」

「うむ。しかし、こちらはあまり良くない雰囲気じゃのう。何かあったのじゃ?」

「あぁ……うん。実は、疫病の方がちょっと厄介なんだよね」

「ぬう。やはりスノウを気絶させても、やまいは解決しなかったのじゃな」


 周囲に視線を向けてよく見れば、確かに未だに苦しんでいる人が大勢いる。そしてその中には、ランタナの側で眠っているリベイアの姿もあった。

 リベイアの姿を見たミアは大慌てで近づき、症状を見る。すると、最悪な事に体がかなり冷え切っていて、吐息までもが冷たかった。その想像を超える状態に、同じように側に近づいたネモフィラが顔を真っ青にさせて、リベイアの手を握った。


「ランタナお兄様! リベイアは助かるのですよね!?」

「……分からない。ジャスミン先生にも見てもらったけど、病気は魔法では治せないんだ。それに、これはただの病気じゃない」

「ただの病気じゃない……? どういう事なのですか?」


 ただの病気じゃないと言う言葉にネモフィラが疑問をぶつけると、ジャスミンがネモフィラに近づきそれに答える。


「この病気はね、魔装ウェポンと魔法、それから能力スキルの三つを組み合わせて出来たものなんだよ。だから、本当に特殊で、普通のお医者さんじゃまず治せないの。一種の呪いに近いかな。魔力量が少ないとかかりやすいし、症状も悪化しやすいみたい」

「そんな……っ」

「まさかスノウちゃんがここまで魔装ウェポンを使いこなせるなんて……はあ。ただの呪いなら私でもどうにか出来るけど、これは私ではどうにもならないなぁ」


 そう言い乍ら、ジャスミンはミアを見つめた。そして、二人の目がかち合い、ミアは眉尻を下げて肩を落とした。


「仕方が無いのう。リベイアを助ける為じゃ。でも、ちょっとだけ準備する時間がほしいのじゃ」

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