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お子さま先生出勤のお時間です(1)

 話は少しさかのぼり、ここは、天翼学園の妖園霊国モノーケランド学生寮玄関前。春の国チェラズスフロウレスの学生寮寮長ジャスミンと風の精霊トンペットと土の精霊ラテールは、門前払いを受けていた。


「え? 転移装置を使わせない……?」

「言い方に悪意があるでござるな。それだと拙者が意地悪をしているように聞こえるでござる」

「はあ!? その通りじゃないッスか! なんでボク等が使うのを拒否するッス!」

「事情を説明するです」

「そんなものお前達自身が今言ったでござろう? 今は疫病がある。だから出入り禁止なのでござる」

「それはマイコメールでの話ッスよ。ここから繋がってるのは城だから関係ないッス」

「そうとは限らんでござる。村を閉鎖したと言っても、村人全員を閉じ込めたと言う確証がないでござる。万が一にも伝染し広がって、城内にまで及んでいるにも関わらず装置を繋げてしまえば、空気感染する疫病がこの天翼学園にも広がるでござる」

「そんなのただの推測や妄想のたぐいッス!」

「だとしても駄目なものは駄目でござる。拙者はモノーケランド学生寮の寮長として、寮を守る義務があるのでござる」


 トンペットとモノーケランド学生寮寮長が睨み合い、ジャスミンが冷や汗を流す。ラテールはつまらなそうにあくびをして、ジャスミンの頭の上でおやすみモードだ。


「とにかく今は領内への立入禁止と、転移装置の使用及び通行禁止でござる。転移装置の仕様上、一方通行には出来ないのだから諦めるでござる」

「うぅーん、そうだよねぇ。転移装置は二つで一つの装置だもん。どちらか片方に一方的に飛べるようなものじゃないもんね」

「何を説得されてるッスか! ご主人!」

「で、でもぉ……。何かあってからじゃ遅いと思うの」

「じゃあどうするんスか? プリュとラーヴはボクやラテと同じ精霊だから疫病とは無縁だと思うッスけど、一緒にいるらしい二人の子供は間違いなくヤバいッスよ」

「と、とにかく別の方法を考えようよ」


 ジャスミンはそう話すと、精霊たちを連れてこの場を離れた。

 会話からだいたい察する事が出来るが、転移装置の魔道具マジックアイテムと言うのは、二つで一つの機能を持つ物だ。例えば“A”と“B”の転移装置が二つずつあるとして、“A”から“B”には転移出来ない。“A”は“A”と、“B”は“B”とでしか転移が出来ないのだ。だから、チェラズスフロウレス寮にある転移装置でモノーケランドに行く事が出来ない。

 これは登録した相手としか連絡が取れない通信用の魔道具マジックアイテムと同じような機能であり、地球における現代社会の携帯電話や固定電話などの誰とでも連絡が取り合える物と比べると、とても不便に感じるものである。チェラズスフロウレス寮から連絡出来る国はチェラズスフロウレスのみ。ブレゴンラスドにランタナ達がモノーケランドにいると連絡が出来たのは、プリュイとラーヴがジャスミンと連絡を取って状況を説明して、ブレゴンラスド寮の寮長と話をしたからだ。

 そんなわけで今回も同じような手段でモノーケランドに行こうと考え、モノーケランドの学生寮にお願いしに行ったけど、疫病のせいで門前払いをくらってしまう。ジャスミンは一先ず寮に戻り、さてどうしようかと考えた。


「こんな時にリリィがいないなんて……」

「ハニーは魔石生物ゴーレムが暴走したとかで魔宝帝国に出張中ッスからね~。ラテが行きたくないとか我が儘言うからッス」

「あの国は目がチカチカして嫌いです」

「あはは。ラテちゃん土の精霊なのに宝石とか苦手だもんね」

「眠るのに眩しいのが邪魔なだけです」

「怠惰すぎッス」


 と言うわけで、リリィは出張中でこの場にはいない。因みにトンペットが言ったハニーとはリリィの事。尚、そんな呼び方をしているけどつき合っているわけでは無い。トンペットは結構誰にでも仇名をつけるので、その内の一つなのだ。


「一先ず腹黒王子に連絡してみるッス」

「またそうやってアンスリウムくんの事を腹黒って悪口言ってる。私はそう言うの良くないと思うな」

「そんなのどうでも良いッス。それより、今はチェラズスフロウレスの王とのじゃロリがブレゴンラスドに行ってるから、チェラズスフロウレス側で何か出来ないか聞いて見るッスよ」

「うーん。そうだよねえ。きっと驚くだろうなあ。知らない内に家族が内戦に巻き込まれて、弟が家族とはぐれて疫病が発生してる村にいるなんて知ったら……」

「こんな事なら、最初にプリュとラーヴの連絡がきた時に腹黒王子にも教えてあげれば良かったッスね。ご主人が“無事なんだから余計な心配をかけさせない方が良いかも”とか言うからッスよ」

「だってぇ……。そう言うのは、家族みんなで無事に帰った時にお話した方が、楽しくお話が出来ていいかなって思ったんだもん。旅の思い出的な」

「ジャスは頭の中がお花畑だから仕方が無いです」

「それもそうッスね」

「二人とも酷いよぉ」


 ジャスミンが涙目になりながらも、しっかりとアンスリウムへの連絡の準備を始めた。

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