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だいたい聖女が悪い

「チェラズスフロウレスと連絡が取れない!?」

「ええ。アンスリウム殿下とは床に設置する通信用の魔道具マジックアイテムで連絡を取り合っていたの。火山の噴火で溶岩が王宮内にも流れていたようね。魔道具マジックアイテムが壊れてしまっていたわ」


 結局ミアが介入したせいで処刑が無くなり、ここは王宮内のとある広い部屋。チェラズスフロウレスの王族とミア、それからブレゴンラスドの王族でミアの正体を知る者だけが集まっている。のだが、まずはミアが処刑の邪魔をした理由を簡単に説明すると、プラーテが泣いたからだ。

 ラティノとスピノがやった事は、確かに決して許される事ではない事だった。だけど、それでもそんなものは関係無い。ミアにとって、友達のプラーテの方が大事。だから、細かい事は全部放り投げてプラーテの味方をした。ただそれだけの事である。まあ、それが良いか悪いかは人によって意見が分かれそうなものだけど、少なくともミアはプラーテの気持ちを一番に考えたのである。

 さて、そんなわけでこの場には二人もいるのだが、話の内容はチェラズスフロウレスに残るアンスリウムと連絡を取れないかというもの。しかし、スピノが説明したように、それはミアが爆発させた火山の溶岩で壊れてしまっていた。しかも、通信用の魔道具マジックアイテムは貴重の中でもトップクラスの貴重品で、そう簡単に代わりの物をとはいかないもの。あまりにも貴重なので、一般市民どころか貴族すら滅多に持たない。少なくとも、ブレゴンラスドでこれを持つのは、王宮で暮らす王族だけだった。そしてその唯一の物がミアのせいで壊れていたのである。


(ぬおおおお! ワシが近道をしようとしたばっかりにいいい!)


 いや。本当にその通りだよ。ってな感じだが、今更それを言ってもどうしようもないし意味もない。ミアを責めたてる者は一人もいなかった。まあ、この中でミアのせいだと思っているのは、ミアだけなわけだが。因みに、ミア派が持つ通信用の魔道具マジックアイテムでレムナケーテに連絡を取りたくても取れない状況。理由はミア達には分からないが、まあ、お察しの通りだ。


「あの……それなら、天翼会の方々に連絡を取って伝えて頂いたら良いのではないでしょうか? ランタナお兄様の無事を知らせてくれたのは、天翼会の方がここに通信を入れてくれたからなのですよね?」

「あのね。連絡を入れる理由を考えなさい。そんな事をすれば、アンスリウムが反旗を起こした事が天翼会に知られてしまうわよ。そうなったら、ミアが聖女様である事を知りながら命を脅かした事も知られてしまうわ。もしそんな事にでもなってみなさい。チェラズスフロウレスは滅ぶわよ」

「そんな……」


 サンビタリアの説明にネモフィラは顔を真っ青にさせた。しかし、こればっかりは本当に起こりえる話だ。アンスリウムは聖女であるミアの命をも危険に晒したのだから。例えミアが無事だとしても、謝って済む問題を超えていた。一族どころか国の責任となり、何の関係もない民すらも罰を受ける事になるだろう。聖女の命を脅かすと言うのは、そう言う事なのだ。


「天翼会と連絡を取れる通信機では他への通信が出来ぬし困ったのう。やはりランタナ殿下が来るのを待たずに出発した方が良いのではないか? アネモネ殿下はしばらくの間は王宮に残るのじゃろう?」

「ええ。火山灰や溶岩の被害で王都が大変な時期だし、復興作業を手伝う予定よ」

「う、うむ。本当にすまぬのじゃ……」

「何度も言っているけど、ミアのせいじゃないわよ。こう言ってはなんだけど、私達チェラズスフロウレスを巻き込んだブレゴンラスドが悪いんだから」

「そうだよ。ミアちゃん。サンビタリアお姉ちゃんの言う通りだもん。ママとラティノお姉ちゃんが喧嘩するからだよ」


 プラーテがラティノとスピノに視線を向けて眉尻を上げて頬をふくらます。なんとも可愛らしいプラーテにオコな顔を向けられて、二人は「ごめんなさい」と肩を落とした。因みに、革命軍も復興の手伝いをする事になっていて、それがまず最初の罰になるようだ。

 ただ、革命軍にとって嬉しい出来事もある。それは、“ふんどし”の呪いが解除された事。申請すれば呪いを解いて貰えて、お披露目会でのふんどしの呪いも無しになった。

 事の発端はアネモネの結婚式の後の披露宴ひろうえんだった。結婚式も披露宴もふんどしを穿いているとアネモネから聞いて、ミアがレックスに戦いを申し込んだのだ。“ワシが勝ったら今直ぐその呪いを消すのじゃ”と。その顔は笑顔だったが、湧き出る怒りを感じる凄みがあり、レックスは震えた。しかも、相手は聖女だ。聖女に喧嘩を売られて、じゃあ戦っちゃおうか。なんて恐れ多くて出来るわけがない。レックスは戦ってもいないのに「参りました」と頭を下げてミアの不戦勝となり、見事に法の改正を勝ち取った。もちろん結婚式や披露宴にはミアの正体を知らない者も参加していたのだけど、この事件は“幼女の我が儘を聞いてあげた寛大な心を持った優しい王レックス”と噂されるだけで、ただの微笑ましい出来事として扱われる。本人は心臓がバックバクで、それこそ九死に一生を得るくらいの気持ちになったのに。

 因みにそんな事をしでかしたミアだが、本人(いわ)く「一生に一度の晴れ舞台なのに、ふんどしなどと言う国王の趣味を強制されるなぞ絶対にあってはならぬのじゃ!」と、結構本気で激おこだった。尚、念の為に記述しておくが、国王の趣味なわけでは無い。とまあ、そんなわけで、革命軍の目的が達成したわけだ。おかげで、自分だけはまだ諦めていない。絶対に王族を倒してみせるんだ。なんて事を思う者もいない。敢えて言うのであれば、俺達私達の戦いは何だったんだ。なんて思う者は現れたが、それが原因で争うなんて気にはならなかった。

 かくくして、ブレゴンラスドには本当に平和が訪れた。“ブレゴンラスドに聖女が舞い降りて、幸運をもたらす代弁者を我々に授けてくれた“と言う噂と共に。

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[一言] …趣味やったんか。
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