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自分の言葉には責任を持った方が良い

「つまりあれじゃ。この国の王は結婚直前で婚約破棄された王子……王太子の傷ついた心を癒す為に、他の兄弟姉妹を連れて傷心旅行に行ったのじゃな?」

「え、ええ」

「ミア。他にもっと重要な話をしたと思うのだけど……?」

「何を言うておるサンビタリア殿下。これは重要な事なのじゃ。どうりで国の重要人物が他におらんと思ったのじゃ。と言うか、アネモネ殿下とゴーラ殿下の結婚式の日程を騙して、スピノさんはここまでの計画を立てたのじゃ。中々にあっぱれなのじゃ」

「はあ……?」


 と言うわけで、ミアは相変わらずアホな事を言っているが、そんなミアの前ではスピノとルーサとヴェロキラ兄弟が正座させられていた。因みに既に全員が目を覚ましていて、ヒルグラッセも傷をいやされてミアの背後に立っている。あれだけ致命傷と言える攻撃を受けて無事なのだから、ミアの聖魔法の凄さを周囲に知らしめるのは容易だった。

 神々しい白金の輝きを放つ翼を背中から生やし現れた聖女ミア。龍神を一撃で仕留め、更には致命傷で助からない筈のヒルグラッセの命を聖なる白金の光で救った。

 今この場に、ミアに逆らおうなんて考える馬鹿は一人もいない。誰もがひざまずいている。が、ミアは居心地の悪さを感じている。なんならヒルグラッセと一緒に背後に立っていたルニィを前に出し、ルニィの体で自分の体を半分隠している程だ。その姿は、恥ずかしがり屋の女の子がパパやママの後ろに隠れて顔を覗かせているようで、とても可愛くて二重の意味でも逆らえない。おかげでミアを見て恐怖を感じている者はおらず、空気も和やかだった。


「ママ。反省した?」

「……ええ。アネモネ殿下とサンビタリア殿下は身をていしてプラーテを助けようとしてくれた。今は感謝の気持ちしかないわ」


 スピノもすっかり大人しくなって、今はどんよりと肩を落としている。プラーテは母親が反省してくれたのが嬉しいのか、ニッコニコの笑顔でギュッと抱きしめた。


「それより、なんでオレまでこんなわけのわかんねえ座り方をさせられなきゃいけねんだよ」


 文句を垂れたのはルーサだ。足がしびれたのか少し顔色が悪い。


「それは……なんでじゃ?」

「おい!」


 やってられるかとルーサは立ち上がろうとする。が、足が痺れてもだえ苦しむ。それを見て、ミアはうんうん分かるのじゃ。とうなずいた。


「ミアお嬢様。本題を」

「あ。そうなのじゃ」


 ルニィに先をうながされ、ミアは思い出す。既に色々な話を聞いていて、今はその話をまとめてこれからどうするかと話をしていた所なのだ。


「先に言っておくのじゃが、ワシは聖女と同じ魔法が使えるだけの一般人で、ただの五歳児なのじゃ」


 それは無理があるだろ。と、誰もが思ったが、言える者は一人もいない。唯一言えそうなルニィとチェラズスフロウレスの王族だが、ルニィは身分をわきまえているのでこの場では言わないし、王族たちはいつもの事と微笑み話を流すだけ。因みに、プラーテは真に受けて「そうなんだー」と呟いている。実に素直である。


「今一番に考えねばらぬのは王都を襲っておる革命軍なのじゃ」


 現在、革命軍と騎士の戦いは進行中。ここが火山の中と言うのもあり、中から様子が見えないのと一緒で、外からもこちらの様子が見えない。この場には通信用の魔道具マジックアイテムも無い。

 ゴーラがサンビタリアから預かっていた物はあるにはあるが、人前では絶対に使うなと念を押されていて、この大人数の前では絶対に使えない。使ってしまえば天翼会を敵に回す可能性もあり、そうなれば国が滅ぶ。まあ、実際にはそんな事には流石にならないけど、それを知る術はゴーラやアネモネ達には無い。だから、連絡が取れずに戦いは続いているのだ。

 正直なところ、こんな場所で呑気に話をしている場合でも無い。スピノが自国の王に黙ってチェラズスフロウレスの王族を殺そうとしたので、チェラズスフロウレスとブレゴンラスドの今後の関係についても話し合わなければならないのだが、それは後だ。この場にいる革命軍のルーサやキラの処遇も後回しになっている。と言っても、ルーサと違いキラは鎖で縛られ身動きを封じられていて、更には魔装ウェポンを使われても直ぐに対処出来るようにと、目隠しされて三人の精鋭騎士が見張っているが。


「戦いをやめさせるにしても、どうしたものかのう。やめろと命令しても聞かぬじゃろうし……」

「それなら私に一つ考えがあるわ」

「ぬぬ? アネモネ殿下。それは本当なのじゃ?」

「私の魔装ウェポンは動物や魔物などの人語を話さない生物と対話が出来るの」

「ふむ……む? なるほどのう」


 アネモネの魔装ウェポンがどう言うものなのか。ミミミの髪留めモードの力で、実はミアは知っていた。だから、アネモネに改めて説明されてピンとくる。


「ワシがさっき溶岩の中に撃ち落とした龍神と話し、戦いを終わらせる為に利用するわけなのじゃ?」

「ミアの力を借りる事が出来れば、きっと上手くいく。龍神様であれば、争っている民たちを驚かせて注目を集める事が出来るわ。そうすれば、戦いをやめさせられると思うの」


 ミアとアネモネが真剣な面持ちで見つめ合い、周囲の視線が二人に集まる。しかし、アネモネはともかく、ミアがルニィの後ろに隠れての事なので本気でシュールな絵面。話している内容が凄く真面目なのに、漂うのはほのぼのとした空気だ。


「分かったのじゃ。では、早速溶岩の中で寝ておる龍神を叩き起こし、力でねじ伏せて言う事を聞かせるのじゃ」

「え? ミア? あの……対話で説得した方が……」

「やはり最後は暴力が全てなのじゃ!」


 駄目だこのアホ……じゃなくてミア。聖女にあるまじき言動。ゴーラには暴力で解決は駄目みたいな事を言っておいて、自分の出した答えが暴力である。そんなミアにゴーラは冷や汗を流して、動揺しているアネモネを見て何故か安心した。尚、ミアはママポジションのルニィに止められて、お話し合いをする流れになった。

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