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温泉に入ろう

 動きやすい服に着替え終わったミアたちは、早速温泉街へと繰り出した。まずは以前から話していた混浴で、男女共に裸の付き合いをする事になる。と言っても、もちろん水着を着ての事。遂にミントにミアが女だと分からせる時がきたのだ。


「え? ミア……。水着を服の下に着てきたのですか……?」

「水着は服の下に着るもんなのじゃ。こればかりは昔から変わらぬ常識なのじゃ」

「そうだったのですね」


 違います。と言うわけで、残念ながらミアがアホだったせいで未だにバレない。ミアがアホだと言う事を再認識して分からされた結果に終わってしまう。当然ミアの行動にミントは男バレしない為の仕込みだと思い込み、安堵あんどの息を吐き出すだけ。因みに、男だと思っている相手が女の更衣室で着替えている事には、全く何も疑問に思っていない。何故なら、まだ五歳児だからだ。


「ミアお嬢様。ネモフィラ殿下に嘘を教えないで下さい」


 ルニィがミアの言葉を指摘すると、ネモフィラが驚き、ミアが「嘘では無いのじゃ」と眉尻を上げた。すると、様子を見ながら服を脱いで水着に着替えていたリベイアが、クスクスと笑みを浮かべて「でも」と会話に入る。


「ミア様のように下に着ていたら、脱ぐだけでいいから楽かもしれませんね」

「うむ。その通りなのじゃ。流石はリベイアなのじゃ」

「何が流石は、ですか。ミアお嬢様は我々の目を盗んで水着を着て衣装を上に着た後に、下着の事を忘れていたではありませんか。我々が服の乱れに気がついて確認しなければ、替えの下着を持たぬまま温泉に行く事になっていたのですよ?」

「そ、それは……ほれ。ルニィさんたちが準備してくれるから平気だと思ったのじゃ」

「そう言う問題ではございません」

「ぐぬぬう」

「ふふふ。でも、ミアお嬢様ったら着替えが終わると、私たちが準備を始める前に部屋を飛び出して行きましたよ。準備完了なのじゃ。とか言って。おかげで服の乱れに気が付きましたけど」

「ぬぬう。クリマさんも人が悪いのう。それは言わぬ約束なのじゃ」


 ミアが肩を落としてしょんぼり顔を見せると、その様子が可愛らしいものだから、ネモフィラたちがクスクスと笑みを浮かべた。そしてそんな時に、水着も付けずタオルも巻かず、プラーテがスッポンポンな状態で仁王立ちして両手を上げる。


「早く行こー! ゴーラお兄ちゃんたちが待ってるよ!」

「そうじゃった! 温泉がワシを待っておる!」

「ちょっと待ちなさいあなた達! と言うよりプラーテ! 王女なのだし、あなたはせめて前をタオルで隠しなさい」


 水着に着替える為に服を侍従に脱がしてもらっていたサンビタリアが、走り出そうとするプラーテを慌てて腕を掴んで止める。すると、プラーテがサンビタリアの手を掴んで、ニッコニコの笑顔で引っ張って浴場まで走り出した。


「え? うそ!? 力が強――っ!?」


 流石は龍人と言う事だろう。プラーテの力は五歳児とは思えない程に強力で、サンビタリアは止めるどころか引っ張られてそのまま浴場に出てしまう。そしてその姿は、水着を付けていないタオルで前も隠していないまさにあられもない姿。スッポンポンなプラーテと同じ姿で浴場に飛び出してしまったサンビタリアに集まるのは、同性の女だけでなく異性の男の視線の数々。なんなら男の視線の方が多い。

 サンビタリアは顔が沸騰ふっとうするんじゃないかと言えるくらいに顔を真っ赤にして、恥ずかしさのあまり声も上げる事が出来ず、死んだ魚のような目をして硬直してしまった。


「わああ! 広いね! サンビタリアお姉ちゃん! ……あれ? サンビタリアお姉ちゃん? どうしたの?」

「……う」

「う?」

「うわあああああん! もう嫌! なんで裸まで! なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよおおおおお!」


 泣いてしまった。哀れなサンビタリア。その場にうずくまり、スッポンポンで大号泣である。すると、そんなサンビタリアに背後から服を羽織らせる一人のイケメン。それはもちろんミアだ。

 ミアはサンビタリアがプラーテに連れて行かれた時に、慌てて服を手にして追いかけたのだ。サンビタリアが泣きながらミアに振り向き、ミアが微笑む。


「ミア様……」

「この前一緒に謝罪訪問に行った時も思ったんじゃが、お主めちゃんこスタイルがえのじゃ」


 最低だった。

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