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黄金の町ゴールドベストの冒険(2)

「ミアお嬢様。ありがとうございます。とっても嬉しです~」


 冒険者ギルドの待合室を抜け出し、町に繰り出して直ぐの事。一緒に抜け出したクリマーテがニコニコと笑顔でミアにお礼を言って、目を輝かせながら町を見回した。


「ふふ。ミアはクリマーテの為に抜け出したのですね」

「うむ。まあ、ワシも実際に黄金の町を見て興味が出たしのう。半分は自分の欲望なのじゃ」

「分かります。これだけ黄金に囲まれていると、どれか持って帰りたくなりますもんね」


 と、ミアに続いて喋ったのはメイクー。流石にネモフィラを連れ出すのに護衛無しは不味いだろうと考えて、メイクーに協力してもらいつつ一緒に来てもらったのだ。ミア派閥会長であるメイクーはミアの誘いに大いに喜び、この通りついて来たわけである。因みに、ルニィに脱走している所を見つかったが、ネモフィラの説得で事無きを得ていた。ミアには強いママンポジションのルニィでも、流石に王女のネモフィラにはかなわなかったようだ。


「ところでクリマさんはこの町の何処に行きたいのじゃ?」

「そうですねえ……。やっぱり黄金のラーメンを食べに行きたいですね」

「黄金のらーめん……なのじゃ?」

「はい。ラーメンが元々ブレゴンラスドには無い料理ですけど、隣国の妖園霊国ようえんれいこくモノーケノランドの影響を受けている国じゃないですかあ。それで、ラーメンも流れて来て生まれたのが黄金のラーメンです」


 妖園霊国モノーケノランドとは、チェラズスフロウレス城で働くシェフのグテンの故郷である妖人の国の正式な名称だ。日本の江戸より少し前の文化に近く、しかし、しょくは現代の日本のような国である。ブレゴンラスドの法にある“下着はふんどしだけ”と言うのも、このモノーケノランドから昔に取り入れた文化の一つで、古いしきたりだった。と言っても、モノーケノランドではふんどししか穿いちゃいけないなんてルールは無いのだが。


「黄金ラーメンですかあ。いいですね。私も一度食べてみたいと思っていました。行きましょう」

「お。流石はメイクー。分かってるね~。行きましょう行きましょう」


 クリマーテとメイクーがうきうきした気分で前を歩き、完全に自分たちが侍従だと言う事を忘れている。だけど、それをとがめる者はここにはいない。ミアとネモフィラも楽しそうな二人を見て笑顔を見せるだけで、警戒心の欠片も無かった。とは言え、早々に事件が起きるわけもなく、四人はラーメンのお店に辿り着く。すると、思いもよらない人物と再会する事になった。


「ごきげんよう。ネモフィラ様、ミア様。また会ったわね」

「む。おお。ルビーさんなのじゃ。社交界以来じゃなあ」

「ご、ごきげんよう。ルビー様。お久しぶりです」


 ミアとネモフィラに声をかけ再会したのは、天翼学園の社交界デビューの日に会ったルビー。宝石のルビーを思わせる髪と瞳に、美しい顔立ち。物静かな雰囲気で、それは身につけている衣装にも現れていて、清楚でいてクールなイメージを彷彿とさせる貴族服。魔宝帝国マジックジュエリーの出身で、革命軍の隊長ラティノと一緒に挨拶に来た少女だった。

 そして、その隣にはルビーではなく、男が一人立っていた。その男は身長が百八十程で、オレンジ色の髪に赤色の瞳。少年漫画の主人公として登場しそうな風貌ふうぼうで、イケメンではないけどかっこいい顔立ち。身につけた衣装は貴族服だったが、少しだけ着崩していた。

 ミアとネモフィラがその男に視線を向けると、ルビーが微笑みながら紹介する。


「こちらは私の兄のトパーズよ」

「お嬢さま方、お初にお目にかかります。僕はマジックジュエリー第一王子トパーズ=ジュエル=ツートン。そちらの国のサンビタリアの婚約者です」

「……な、なんじゃとお!? と言うか、ルビーさんは王女じゃったのか!?」

「まあ。お姉様の婚約者の方だったのですか? わたくしはチェラズスフロウレス第三王女ネモフィラ=テール=キャロットです。ご紹介して頂いた事が無かったので、こうしてお会いするのは初めてですね」

「はい。サンビタリアは家族を紹介したがらなくて、こうして会えたことを嬉しく思います。それに、ネモフィラの近衛騎士と噂されている君がミアだね? 君とも一度会ってみたかったんだ」

「ワシと……? と言うか、ワシはフィーラの近衛騎士では無いのじゃ」

「おや? それは失礼した。すまない」


 ルビーから聞いたのだろう。頭を下げて、トパーズがルビーに冷ややかな視線を向ける。だけど、ルビーはその視線に気づいても放っておき、ミアとネモフィラに笑顔を振りまいた。


「貴女達も今から黄金ラーメンを食べにお店に入るのでしょう? 実は私たちもそうなのよ」

(王女と王子が仲良くラーメンなのじゃ……? ぬぬう。食べている所が想像出来ぬのじゃ)


 自分の事を棚に上げてミアはそんな事を考えながら、いつの間にか先に店に入っていったクリマーテとメイクーを追って店に入った。のだけど、他国の王女と王子のまさかの登場で、クリマーテとメイクーが一瞬で我に返って顔面蒼白になったのは言うまでもない。

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