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革命軍の目的

「ケラリト兄上に会っただと……っ!? プラーテ。それは本当か?」

「うん! 焼貝を一緒に食べたよ」


 まだまだ続く観光の時間。ミアたちは海を見に行き、そこでゴーラと海を眺めていたアネモネを発見して合流した。のだけど、プラーテがケーラと会った事を話した途端にゴーラが驚いた。そしてそれはアネモネも一緒だった。


「ゴーラ様。直ぐにお義父様にこの事をお伝えした方が良いと存じます」

「やめておこう。父上は今別件で忙しい。それに、出来れば大事にしたくない」

「そう……ですね……」

「むう。さっきからどうしたのじゃ?」

「はい。ケーラ様はゴーラ様のお父様に何かをしたのですか?」


 ミアとネモフィラが尋ねると、ゴーラが二人と目を合わせ、少し考える素振りを見せた後に話し始める。


「実は、ケラリト兄上は国を脅かしている革命軍の副隊長なんだよ」

「なんじゃとお!?」

「そ、それは本当なのですか!?」

「あわわわわわわわ……っ」


 ミアとネモフィラが驚き声を上げ、黙って聞いていたミントも驚いて思わず慌てた声を上げた。まさかさっきまで会っていたケーラが、妹のプラーテと仲良くしていたあのケーラが革命軍の一員で、しかも副隊長だなんて思いもよらなかったのだ。驚いた三人はプラーテに視線を向けたが、プラーテは首を傾げるだけ。


「ケーラお姉ちゃんは革命軍だけど、とっても優しいんだよ。それじゃ駄目なの?」

「ぬう。そうじゃなあ」

「で、でも、革命軍の方々は王族を狙っていると聞いています。一歩間違えれば、プラーテの身に危険が起こっていたかもしれませんでした」


 ネモフィラが心配した表情で告げると、ミントが同意して思いっきり首を縦に何度も振るう。でも、プラーテには難しいお話らしい。首を傾げて「う~ん」とうなるだけで、何が危険なのか分からなかった。


「と、とにかくじゃ。そう言う事であるなら、早めに移動した方が良さそうなのじゃ。疑うわけでは無いのじゃが、革命軍の仲間にワシ等が後をつけられておる可能性も考慮せねばならぬのじゃ」

「いや。その心配はない」

「むむ? 何故言いきれるのじゃ?」

「ケラリト兄上は裏表のない性格だ。それだけは私も信用している。プラーテに会って食事までして何もせずに別れたのならば、近くに仲間がいても後をつけさせるような真似はしないだろう」

「ふむ。いくら兄弟とは言え相手は革命軍なのじゃ。じゃと言うのに、随分と信頼しておるのじゃな」

「……ふ。そうかもしれないな。ケラリト兄上と私は腹違いの兄弟で一つしか違わなかったからか、小さい頃は兄弟と言うよりは友のようにお互い接していたんだよ。だからだろう」

「ええ。学園に通っていた時も、ゴーラ様とケーラ様はとても仲が良かったのよ。少しいてしまうくらいに。でも……」


 昔を思い出して微笑みながら話していたアネモネだが、その表情は悲しみに変わる。そして、ゴーラも一度目を閉じて、深くため息を吐き出した。


「しかし、なんでまた革命軍の副隊長なんかやっておるのじゃ?」

「はい。とても悪い事をする人には見えませんでした」

「そうか。革命軍の目的を知らなかったのか」

「そう言えば一度も目的についての話をした事が無かったわね」

「はい。わたくしもミアもミントも何も知らないのです」

「プラーテは知ってるよお。えっとねえ。革命軍は、ふんどし(・・・・)穿きたくないんだよ」

「……はい? あの、え? プラーテ? もう一度教えて下さい」

「うん。革命軍のお姉ちゃんたちは、ふんどしが嫌いなんだってえ」


 巻き起こる動揺と困惑。プラーテの言葉にネモフィラは……いいや。ミアもミントもなんなら話を黙って聞いていた侍従たち全員が言われた意味が分からず、無言で目を点にする。そして、ゴーラではなく、アネモネが補足する。


「革命軍の隊長はこの国の元王女ラティノ=B=ティガイドン様。この国の法では男も女もみんな下着がふんどしだと決められていて、お披露目会でふんどし以外の下着を付けられない祝福を受けるの。そして、その法を無くしたいと訴えた事で勘当かんどうされて、ラティノ様は王族に牙をいて革命軍を作ったのよ」

(めちゃんこしょうもないのじゃああああああ! そもそもそれは祝福ではなく呪いのたぐいなのじゃ!)


 ミアが驚愕きょうがくして心の中で叫んでいると、同じく驚いていたネモフィラがハッと何かに気がついた。


「ミア。覚えていますか? 最初の社交界で会ったラティノ様です」

「あ。そう言えばいたのじゃ。あ奴が革命軍のボスだったのじゃ? つまり、あのドレスの下はふんどしだったのじゃ」

「はい。ドレスにふんどしは似合いませんね」

「あの……そ、そこは、どうでもいいのでは……ないでしょうか?」


 思わず横から口を出してしまったミントだが、それも仕方が無いだろう。本当にどうでもいいのだ。しかし、ミアとネモフィラは考えてしまう。


(内戦の理由が“ふんどし”と言う事実がどうでもよすぎて、もう何かどれもこれもがどうでもいいのじゃ)

(どうしましょう。失礼だと思うのですけど、ふんどしが原因で争いが起きるブレゴンラスドが、チェラズスフロウレスよりもある意味では平和に思えてしまいます)


 と。そして、そんなミアたちにプラーテが自分のスカートをたくし上げて、ふんどしを披露した。


「ほら。可愛いでしょお。プラーテはふんどし嫌じゃないよ」


 そう言って見せたふんどしは可愛いイラスト付きのふんどしで、ミアが呑気に「オシャレなふんどしなのじゃ」と告げる。のだけど、「はしたないのでやめなさい」と、ゴーラがプラーテのたくし上げたスカートを下ろさせるのは、それから直ぐの事。しかし、これでミアたちにとっての革命軍の印象が決まった。

 そう。これが、これこそが、革命軍による“ふんどし”から自由な下着を得る為の命をけた戦いだったのだ。

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