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恋愛事情を小説で学ぶ少女

「では、サンビタリアお姉様の謝罪訪問作戦会議を行います!」


 ネモフィラが高らかに宣言し、作戦会議が始まった。

 ここはチェラズスフロウレス王家専用船の甲板の上。ブレゴンラスドへと向かう為に、南西に向かって船旅の真最中だ。今この場に集まっているのは、“ミア”“ネモフィラ”“ミント”“サンビタリア”“メイクー”の五人である。この船には騎士の為の訓練施設があり、リベイアはそこでランタナの訓練を見物していて、ヒルグラッセがそれにつき合っている。国王と王妃とアネモネはレストルームで休憩中で、ルニィや他の侍従たちは船内を忙しく行き来して仕事をしていた。ここに集まったサンビタリア以外の四人は、アネモネの結婚式後に別行動をし、謝罪に向かう予定のサンビタリアの為に集まっていた。

 ただ、ミントはどちらかと言うと暇そうだからと言う理由でミアに拉致られて、わけも分からずこの場にいる。だから、ネモフィラが宣言した内容を聞いてようやくどう言う集まりか理解して、自分は場違いなのではと顔を真っ青にさせて逃げたい気持ちでいっぱいだった。しかし、王族が三人もいるのに、逃げるなんて恐れ多くて出来なかった。因みに、三人の内の一人は“王子さま”と勘違いされているミアなので、正確には王族は二人である。


「ネモフィラ。あなた……私を呼んでわざわざこんなものを開くなんて、思っていたよりいい(・・)性格してるのね」

「お姉様が王太子になれば、ミアがアンスリウムお兄様と婚約する必要がなくなるので手伝うだけですよ」

「うむうむ。フィーラはいい(・・)子なのじゃ」


 サンビタリアが言った“いい性格”はそう言う意味ではないが、二人の勝負を知らないミアには分からなくても仕方が無いだろう。サンビタリアは心の中では(だったらあなたが王太子になればいいでしょう)と考えるが、ミアがこの場にいるので言えない。だから、もどかしさを感じながら「あなたらしいわね」と、ニッコリと微笑んだ。が、目が笑っていない。


「必ず謝罪を全部終わらせて、王太子になって頂きます」

「ふふ。頑張るわ」


 と言いながら笑顔を向けるが、やはり目が笑っていないサンビタリア。その様子に「お願いしますね。お姉様」と微笑むネモフィラ。二人の王太子にさせる戦いは既に始まっている。のだが、そもそもとして王太子の事情を知らないミントは困惑……いや。混乱していた。頭に入ってくる情報量が多すぎて、意味不明でパンクしてしまいそうだった。目をクルクルと回し、ふらりと俯き、頭を押さえて横に振るう。


「む? そう言えばミントは知らんかったんじゃな」

「知らない……? ミントは何を知らないのですか?」

「サンビタリア殿下を王太子にしようとしている事なのじゃ」

「あれ? そうなのですか?」


 ネモフィラが尋ねると、ミントは顔を上げて頷いた。


「父さまから……王太子候補の事は……聞いていました。でも、事件がきっかけで……アンスリウム様が王太子になったって……言われて…………」


 そう言う事ならと、ミアとネモフィラとサンビタリアでミントに喋れる範囲で状況を説明していく。もちろんミアが聖女だと言う事はせるのも忘れない。そして、聖女である事を伏せたのが最大のミスだった。何故なら……。


(ミア様とアンスリウム様がご婚約!? つ、つまりアンスリウム様は、殿方なのに殿方が好きと言う事なのですか!?)


 何故なら、なんかよく分からんけどBL的な思考におちいったからだ。はい。ミントの中で新たな扉が開かれたのは言うまでもない。出来ればそのままそっ閉じしてほしいが、無理な話だろう。


(ど、どうしよう。そんなの本の中の世界だけのお話だと思ってた。私の父さまはアンスリウム様の派閥だし、私はネモフィラ様とアンスリウム様のどちらを応援すればいいの!?)


 ミントはそう言う本を読んだ事があった。理由は、ミアとネモフィラが婚約していると勘違いしたからだ。ミントはそれがきっかけで文字を勉強しながら、恋愛小説をたくさん読んでいた。男同士の恋愛ものもその内の一つで、ミントはあらゆる恋愛について知識だけが豊富になっている真っ最中なのだ。持って来た荷物にも本が数冊だけ入っていて、暇な時間があれば読むつもりでいる。


「あ、あの……ミア様は……男同士の恋愛も……受け入れるのですか?」

「な、なんじゃ急に。別に他人がする分には構わんが、ワシはお断りなのじゃ」

「分かり……ました!」

(私はネモフィラ様を応援します! アンスリウム様ごめんなさい!)


 正解……いや。正解なのだろうか? それはそれで色々とと思う所があるが、深く考えるべきではないだろう。とにかく、それはともかくとしてこの時のミアはある意味失言をしていたが、それに気がつく者は一人もいなかった。失言とは、もちろん“ワシはお断り”の部分で、この時ミアは前世男だった時の事を思いだして答えていた。この返事のおかげで、ミントは更にミアを男……いや。“王子さま”と思いこんだのは間違いなかった。尚、サンビタリアの謝罪訪問作戦会議の話し合いの結果は、一先ずブレゴンラスドの国王に相談して、結婚式後に謝罪の時間を貰えるか聞いて見ようと言う話でまとまった。

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