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「ロア、この死体をそこの開けた場所に置くぞ」
アレン先生は清浄魔法で私たちについた返り血を綺麗にしてまた草むらに隠れることになった。じっと息を潜めていると今回のハルピュイアで討伐数はクリア出来そうな頭数がいるわ。
「ロア、前回と違う方法で倒すならどうやればいいか分かるか?」
「先生、蔓魔法で足に蔓を巻きつけて地面に叩き落とすか、ドゥーロさんがしていた風魔法の圧縮で矢のように撃ち落とすのがいいと思います」
「確かに蔓だと一匹ずつ確実には倒せるが気づいた仲間が邪魔をしそうだな。ドゥーロのやり方がこの場合楽だろう。風の矢なら相手は躱しにくい。射程はギリギリだから気を付けないといけない」
「やってみます」
私はウェアウルフに群がってきたハルピュイアを走りながら近づいて空気の矢を射っていく。走りながらだと命中率はやはり下がるわ。けれど、数を撃てばなんとかなるらしい。
急所を外れて怪我をしたハルピュイアが怒って私に向かってくる。そうだ、思い出したわ。
魔力を網のようにする方法を。咄嗟に蔓魔法を網にするようにイメージをして投網を投げるように襲い掛かってくるハルピュイアたちに投げた。すると、ハルピュイアたちは見事に地上へと落下し、網の中で騒いでいる。
「ロア、咄嗟に思いついたんだろうが網目状にしてハルピュイアを一網打尽にするのは凄く良かった」
アレン先生はそう言うと、網を囲うように氷を出してハルピュイアたちを全て貫いて息の根を一瞬で止めていった。その後はいつも通りリュックに仕舞いハルピュイアの討伐は完了したわ。その後はウェアウルフもすぐに見つかり全ての討伐は完了した。
「ロア、ある程度の強い魔獣を討伐したからこの村は当分大丈夫だろう」
「よかった」
私たちは雑談しながら村に戻り、ギルドで清算すると受付の人からは凄く驚かれた。短期間で高ランクの魔獣、しかもこの数を討伐してきたからね。私たちは報酬を受け取ると宿に帰ってきた。
「アレン先生、ふと思ったのですが、王宮の舞踏会に貴族は必ず出席しなければいけないとなっているのですよね? 帰る時ってどうするんですか?」
「あぁ、それは特殊な転移魔法を使って帰るんだ。王都の暗部の部屋にしか帰れないんだけれどね」
どうやら魔道具が存在しているらしく、魔道具を使うと決まった場所に転移が出来るのだとか。そして距離により魔力の消費が凄いので魔石を補助魔力として使い帰ってくるらしい。
魔力が足りないとどうなるかって?
一応安全装置なるものが働いて起動しないとかどうとか。今回のウェアウルフの魔石とハルピュイアの魔石二個程売らずに取っておいた理由はそれだったようだ。
ここの村まで一ヶ月かけてきたのに後三か月する頃にはまた王都に帰らないといけないのが面倒よね。
行きはいいけれど、またひと月掛けて村に帰ってくる。
私は学院の闘技大会で舞踏会やお茶会は免除されているけれど、先生は免除されていないため年一回の舞踏会には参加しているらしい。
私はなんだかんだとお茶会には全く出ていないけれど、舞踏会には参加していたのよね。今後どうなるのか気になって先生に聞いてみたけれど、『参加したいなら参加すればいい、だが、不参加でもパートナーの俺は出席しなければいけないので結局は一緒に王都には帰らないといけない』と言っていた。
先生が舞踏会に出席している時、私は休日よね? たまの休日は王都でゆっくりもいいかもしれない。
え? 今も休日とそう変わらないって?
実はそんな事はない。日誌のような物を書いている。討伐した魔獣、魔獣の強さ、討伐の仕方、討伐後の処理の仕方など事細かく書く必要があるの。
この記録はしっかりと零師団で纏められて場合によっては騎士団や魔術師団、錬金術師の方へ情報が送られるみたい。魔獣の弱点が分かれば倒しやすいしね。
そういった研究に使われるのだと思うと手を抜けない。そう思えば魔獣討伐の人を増やしてもいいんじゃないかって思うのだけれど、冒険者は人気がないらしい。
冒険者が国に雇われるにはまず読み書きや魔獣以外にも様々な知識が必要になるし、冒険者のランクも高レベルじゃないといけない。
高レベルの冒険者にとっては毎日討伐日誌を書くなんて煩わしい事でしかない。
騎士団で魔獣を討伐する時は団長が日誌を書いているらしい。さて、今日は日誌を書いて零師団にも送ったのでベッドに転がる。
明日からはまた移動なのかしら。
疲れもあって私はそのまますぐに瞼が閉じていた。




