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記憶のかけら01
着いた時にはもう、
一面が焼け野原だった。
生存者はいるのだろうか。
襲撃犯は残っているだろうか。
「く、くるなぁ!」
声がする、
子供の声だ。
魔族がいた。
こいつが襲撃犯か?
子供は無事だ、
後ろの子も生きているようだ。
魔族を殺し、
少年に声をかけた。
「怪我はないか?」
涙ぐむ少年は頷く。
多少怪我があるようだが、
それより後ろの子が危険だ。
二人を抱き抱え、走る。
「よく頑張ったな、もう大丈夫だ」
気休めを言う事しかできない、
この子達以外の人間は全て死んだ。
魔族の援軍も来るだろう、
可哀想だが埋葬すらできそうにない。
「ありがどう、ありがどう」
緊張の糸が切れたのか、
しかしそれでも涙はこぼさない。
目の前で友人が殺されただろう、
目の前で家族が殺されただろう、
強い少年だ。
「おれ、おれさぁ!」
決意のこもった瞳の奥に、
強い想いの炎がみえた。




