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本気を出してきた元落ちこぼれ1

 

 魔装を展開したまま全力を出すのはこれで二回目になる。


 一回目は初めて魔装が発現し、舞い上がって山に思いっきり魔力をぶっ放したんだっけ。


 魔装を使うと、術者の瞳も同様の色が灯る。

 ヨハンは金に、俺は緑に光っている。


 体の周りに風が集まる。

 小さな台風の目になったような感覚。

 魔装。魔法使い達の奥義。

 あらゆる魔法に補正がかかるブースターだ。


「いくよクラフト君! 『我、光を司り――』っ、っか、う、あ……」


 ヨハンの周囲の空気を操作し様子を見る。

 これで終われば一番楽なんだが、どうだ。


 ヨハンも他の生徒達と同じように、息ができない苦しみに驚愕している。


 が、流石は英雄候補、


「っと、危ない」


 足元を貫く光線。

 避けた拍子に俺の魔力操作が途切れる。


 無詠唱か。それくらいやるよな。

 やはり一筋縄ではいかないようだ。


「驚いたよ、そして確信した。クラフト君は本当に、攻撃魔法が使えるようになったんだね」


「努力の賜物です」


「よかった、これで――」


 全力が出せるよ。と、ヨハンが呟く。


 そして、


 更に魔力の濃度を上げ、右手をグンと突き上げる。


「『我、光を司りしナイラスの子。断罪の剣、勝利の盾――エアリャン・アーミー!』」


 膨大な量の魔力が動く。

 右手に握られたのは光の剣。

 左手に握られたのは光の盾。

 まるで光の戦士。勇者そのもの。


 俺はノーモーションで空気の弾丸を八つほど作り射出。反応を見る――が、ヨハンはその全てを剣で斬り伏せた。


 盾使えよ!


「はあぁぁッ!」


 光の帯を残しながら、

 ヨハンが高速でこちらへ駆ける。


 ヨハンに向け突風を作るも、

 それすら剣で切り裂かれてしまう。


 が、


「?! 消えた?」


 そこに俺はもういない。


 空気を捻じ曲げ蜃気楼による透明化に加え、空気の圧縮・膨張による爆発エネルギーを利用した超加速で真上を取る。


「なっ?! くぅう!」


 よっしゃ、盾使ったぞ。

 俺の風貫きとヨハンの盾が激突する。

 あの一瞬で俺の場所を再把握するのは流石だ。


 光の剣が迫る、加速で避ける。


「強い……本当に強いね、クラフト君」


「まだ俺は二回の変身を残しています」


「?!」


 しねーけどな。

 もっとも、反則技達はまだ使っていない。


 反則技一号は〝窒息させるアレ〟

 名前は『宣告』。シンプル最高。


 そして反則技二号はこれだ。


 ヨハンの周り、360度全てを包囲する丸ノコ状の風の刃が無数に現れ、俺の指の動きに合わせ処刑する『鎌鼬(カマイタチ)


 ヨハンの盾がドーム状になり包み込む。

 たっぷり十秒切りつけた鎌鼬達が消え、砂埃が晴れると、そこに傷だらけの地面と無傷の盾が現れた。


 この辺もだめか。厄介だな。


「『我、光を司る――』っ、ごほっ、が、ッ!」


「詠唱はさせない」


 窒息キャンセルが地味に効いてるな。


 魔法が上位階級にいけばいくほど、無詠唱の難易度は格段に上がる。それこそ洗練された魔法使いじゃない限り難しいはず。


 下位の魔法なら打ち消さずとも避けていなせる。

 ヨハンのような経験の浅い天才にはうってつけだ。


 光の斬撃が飛んでくる。

 加速で避ける。因みに加速技の名前は『辻風』


「剣と盾か……それいいですね」


 イメージを膨らませる。

 あっちが剣ならこっちは大槍(ナイトランス)だ。


 俺の右手には風貫きの要領で作った槍が、

 そして左手には盾が握られている。


 肉弾戦はどうだッ!


 ヨハンへの猛攻。

 俺は槍を扱った経験は0だが、辻風による爆速槍術がかなり強力で、ヨハンは防戦一方になる。


 盾が邪魔だな――


 地面から人の手を模した風貫きを生やし、ヨハンの盾をかちあげる!


「っ!?」


「がら空きですよ」


 爆速の槍が腹を貫く――前に危険を察知したヨハンは後ろに僅かに跳び、難を逃れる……のは無理なんだよねぇ。


「その槍、飛ぶぞ」


 持ち手の部分から発射された槍が腹部を穿ち、その勢いが殺されぬまま、ヨハンは魔法結界に打ち付けられた!


「ぐうぅッ!」


 傷こそないが痛みはある。

 腹を貫かれた強烈な痛みが襲いかかっているはず。

 たまらずうずくまり、剣と盾が消える。


「はい、お終い」


 一応周りに10本の大槍を出してあるが、どうやら勝敗は決したようだ。



「よし、そこまでかな」



 会長の声と共に魔法結界が崩れていく。

 俺は大槍を消し、ヨハンに駆け寄った。


「大丈夫ですか? 立てますか?」


「う、うん、大丈夫。ありがとう」


 一人の力でヨロヨロと立ち上がるヨハン。苦悶の表情を浮かべていたが、俺にはニコリと笑顔を向けた。


「いやあ、二人共凄まじい強さだね! まさかこれで一年生だなんて信じられない。どちらも最後まで魔装は解けなかったのも素晴らしい!」


 手を叩いて喜ぶ会長。

 レイレイは無表情で腕を組んでいる。


「ヨハン君は経験を積めばまだまだ強くなるさ。今日ここでクラフト君と試合ができたのも、後の貴重な財産になるだろうね」


「はい……ありがとうございます」


 これが本戦なら一回戦進出だったのにな――とか思いながら、試合について振り返る。


 ヨハンは流石に強かった。無詠唱がある限り、窒息キャンセルは無意味に終わるだろう。攻撃されれば窒息が解けてしまう事もバレた。


 これでヨハンがもっと様々な魔法を会得し、無詠唱によって使用してきた場合、勝敗がどうなるか分からない。


「クラフト君、きみは素晴らしい! まさか英雄候補君を倒しちゃうなんて、本来ならあってはならない事だよね」


 モブ対主人公でモブが勝ったようなもの。

 からかうように会長が笑う。


「いい試合を見せてくれたお礼に、二人には特別特訓を実地しようと思う。レイレイ君も付き合ってね」


「わかりました」


 それから俺たちは試合の反省点を学び、二人のアドバイスによって魔装への理解を深める事ができた。


 また一歩魔紋に近付けたという事か……本戦までに使えるようになれればと思ってたけど、果たしてどうなることやら。

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