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南部評定 その三

不来方城下 晴政の屋敷


「では、今回行った交渉ですが、葛西晴信とは水面下で取引を行っています。、さらに古川城からの帰り道すがらと言うか、葛西家を実験がてら掻き回してきたのでしばらくは静かに家中騒乱が続くでしょう。」


晴政 「具体的にはなにを……、いやヤッパリいい、なんだその顔は怖いぞ。」


「なにも怖がらなくても、そんなに酷いことはしてませんよ(嘘)、晴信殿と打ち合わせして、邪魔者になるであろう者の噂を本当に有る事、有る事と無い事を混ぜて噂を流したりしてきただけですよ。」


「本当に有る事って、本人が隠している事では無いのか?、と言うと無い事とはいったい?……いや喋らんでいい聞かない方が心が休まる気がする。」


「遠慮しなくても後で詳細を提出しますよ、次に最上家には家督争いの兆候あり、て言うかちょうど始まる所でした。」

「嫡男の源五郎派と取引をしております。詳細は報告書に書いておきました、最上家には蘆名家、長尾家に対する南部家の盾として役に立って貰う予定です。」


「葛西家の報告は要らんぞ、最上家の方だが此方の条件は不戦と小野寺家への援軍を行わない事だけだったな、葛西家、最上家が連合に参加せず戦力を正面の大崎家、伊達家に集中できるのはありがたい、信愛の話では五年あればなんとか岩出山要害の攻略の目途が立つのであろう。」


「ええ、それは何とか、それと評定をしていて思い付いたのですが大崎領内は築館宿付近の三郡、中新田城を失っています。

情報では岩出山要害は伊達家に貸し出されており、城主の氏家直継はかなり不満が溜まっているとの事、先の山中での大敗の責任を取らされ領地を削られる事は既定事実なれば……」


「大崎で内乱を誘発させるか……」


「大崎で内乱が起これば、これに伊達は介入せざるを得ません、氏家直継を適当に裏から支援して戦を長引かせましょう、具体的には反乱を起こす城へ武器食糧を密かに輸送し長期間籠城させます、その一方で大崎とは二年程の休戦協定を新たに結べば、その間に築館砦、中新田城の防衛体制は整えられると思います。」


「氏家直継か噂から人となりは聞こえているが、彼奴は信用できるのか?」


「彼の意思や信用など必要ありません、氏家直継には南部の手のひらの上で踊ってもらうだけです、まあ多少役に立ってくれたら捨て扶持を与えるのも晴政様のお考え次第ですが。」


「領地は有限だからな、噂通りならそんな奴はいらん。」


「ではそういう事で、近隣の大名家に対する交渉はこのような感じで進めて行きます。」


「では、次に南部家のこれからについての外交戦略ですが。」


「待て待て、今日は報告だけでいい、対外戦略は明日皆が揃ってからでよかろう。」


「そうですか、早めに片付けて八戸に帰りたいのですが。」


「なにを焦ってるんだかもしかしてコレか?、頼まれていた小笠原信浄と地割りの件はこれから大浦と会って話をする、明日には返答が出来るだろう。」


「お手間を取らせて申し訳なく。コレとか噂を流したら……」


どこからか情報が漏れているようだ、特定して消さねばならんな。ククク我を弄るとか絶対にゆるさんぞ。


「わかっとる冗談だそんなに怒る事か、初々しいと思ったのに……話を戻すが、戸沢の所と言い、小笠原と言いそんなに簡単に主を変えられると困るんだからな。」


「決死隊は次からは八戸領の兵だけで編成できますから、横紙破りな事はこれっきりで。」


「前例を作るとなんか我も我もとなりそうでな。」

「ところで信愛とも相談してたんだが、南部家では内政を各家に任せている訳だが農業政策を統一する所は統一した方が良いのではという話をしたんだが、どう思う。」


「内政ですか、陸中より北は米より麦の方が収穫量はあがりますが、余り細かく指導されますと嫌気がでる方も居るでしょうからね、だいたい私と信愛殿だけで今の南部家の内政を全て管理するのは無理ですよ。」


「八戸領や三戸本家の領地だけ収穫量が跳ね上がってるからな今回結構交換してくれとか多かったんだぞ、不公平感を無くすためにも内政のテコ入れは必要だ何とかしろ。」


「何とかしろって、希望者に八戸領で研修?もしくは見学会でも開きますか?」


「学びたい者は学べか、ふむ……」


「石高が上がるのは良い事ですから、ただし付け焼き刃の知識で農業はできませんよ。八戸領だって五年以上かけてここまで来たんですから。」


「武芸みたいに言うな、だが納得は出来る……あとで信愛も入れて内政関連を纏めないとな。」


「以外ですね、領土を増やす方に固執してるのかと思ってました。」


「失礼な奴だな、ワシとて成果がでていれば取り入れるぐらいするわ。」


「失礼ついでに、明日も話すつもりですがもっと内政に舵を切って石高を上げ、兵の最大動員数を増やすべきかと結局のところ食糧を持っている国が強いのです。」


「身も蓋もない意見だな、悲しくなってきたぞ。」


「現実は厳しいのです。決して勝ったから食糧が手に入る訳ではないのですから。」


「ふむ、今回の戦いの事だな、確かに食糧もなく流民だらけの土地など要らんからな。」


「応仁の乱の後の京の都も流民だらけだったそうです。」


「怖い事を言うな、流民の連鎖の話は信愛から聞いた、ただ領土を取るだけの戦は控えるとしよう。」


「それが良いかと、戦は勝てる時に勝つべくして勝つのです。」


「ただ勝つ為に戦っていた頃が懐かしい。」


「では勝つためにも、食糧を増やす戦いをしますか。」


「そうだな、任せる。」


任せるのかよ!


後日噂を流した泰造は三日メシ抜きとなりましたとさ、めでたしめでたし。

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