交渉 最上家
◆◆◆
交渉 最上家重臣
深夜
中新田城 二ノ丸
「すみませんね、こんな夜中に呼び出して。」
「いや、構わん会談を持ち掛けたのは我々だからな。」
「直接会うのは築館宿以来ですね、八戸政栄です。」
「氏家定直だ。」「氏家守棟です。」
ほほう、氏家定直はよくしらんが氏家守棟は知ってるぞ義光の懐刀、謀将、まだ若い時分か、南部にもこんな次世代がいればなー、いるのは馬鹿と無能と腹黒坊ちゃん、石川殿の息子が使えるといいんたが。
「さて、話とは何でしょうか、まあ予想はしていますが。」
「ほう、予想の内容はどんな物かな。」
「最上家は今の状況を鑑みて、羽前統一に乗り出す、伊達の支援を一時辞めるのと、南部から小野寺への援軍の停止、不戦の約定といったところですかね。」
守棟 「その通りだ、ならば条約を結んで貰えるのか。」
「まあ焦らないで、まだ此方の条件がでそろっていませんよ。」
「条件とはなにかな。」
「条件の一つは、今の当主の義守殿では約定を交わす相手としては釣り合わないですかね。」
守棟 「なっ、義守様では不満があると。」
「そうですね、最低でも北上川で伏兵を仕掛けたり、築館宿に援軍を差し向ける位の器でなくては、対等の関係にはなり得ませんな。」
定直…… なっ!源五郎様の策だと気付いていたのかどうやって?
「いつから気付いていた?」
今の今まで気付きませんでしたけどね、要するに南部の侵攻でお家騒動が早まったんだな、誰のせいだか知らないが義光くんも大変だね。
「築館宿に最上家の宿将、聞こえる親子の不和、才能豊かな跡取り、気付かない方がどうかしている。」
定直…… なる程、最上家の内情は筒抜けか、そしてそれを喋るとは我々を歯牙にもかけてないのだな恐ろしい奴だ。
「ならば問題はない、そういう事だ。」
なる程この二人は義光派な訳ね、史実と同じか。
「なる程、では二つ目は庄内平野の海岸沿い越後に繋がるところに砦を作ること、理由が分からないなら新しい当主に聞くといい。」
フッフッフ、最上家、虎の盾計画発動!虎穴には誰か行け俺は行かん。
「了解した、飲もう。」
「最後は羽前統一後こちらが岩出山城を落としていたら改めて同盟を組むというのはどうでしょう。」
「越後は苦手か。」
天災と戦う?何を馬鹿な冗談をあれは台風と同じ迷惑な災害ですよ。
「あれといまやり合えるのは今は甲斐の武田ぐらいですかね、私は今はまだ無理ですね。」
ていうか一生無理、あれと戦うぐらいなら仲良くする。
「わかった、越後が侵攻して来た時、背後から攻められては堪らんからな、所で約束を違えぬ姿勢はこんな時のためかな。」
「信頼は積み重ねですからね、ああ誤解ないように越後とは仲良くするつもりです。主に交易で、どうです我々は相馬家とも交易してますし最上家も参加しませんか?」
そろそろ日本海ルートも検討しておかないとね、京に行くのに短くて安全なルートを考えないと、もしかしたら尾張から先へは行けないかもしれないしね。
「どこまで先を見据えてるやら、まあいい不戦の期間は?」
「五年でどうです。」
五年あれば、羽前統一位おわってるでしょ、その後同盟を組んで伊達、蘆名と協同で潰していけば楽だし。
「分かった五年で良いだろう。」
「それでは、今は口約束ですが源五郎殿が家督相続した後で正式な書状を交わすということでいかがですか。」
「うむ、それで構わん。」
「では最後に確認です、約定の内容は、最上家の羽前統一に南部家は一切干渉しない。最上家は南部家と戦わない、源五郎殿の家督相続、庄内と越後の間に砦を築く事、約定の期間は五年。」
「確認した、その内容で構わん。」
「では、約定成立で。」
◆◆◆
「親父、さっきの話なんだが、所々分からない事があるんだが。」
「ああ、要するに奴は最上家を長尾景虎からの盾にしたいのだ、義守様では庄内平野に侵攻してくる越後の軍勢を止められ無いと言いたいのだろう。」
「相馬の名前がでていたが、交易をしてるみたいだな。」
「駿河の今川、相模の北条、などと頻繁に船の行き来があるのは知っていたが、それに相馬も加担していたか。岩出山城を攻略する頃には……いや既に相馬は取り込まれてるのかもな。葛西も三陸に港があるか……八戸は交易で力を付けたのかもしれんな。」
「我々を誘っていたのは羽前統一後の航路開設を視野にいれているのか、越後、越前、若狭から京、駿河を回るより近いからな。」
「まあ、奴は源五郎様の才能を認めているようだが、五年で羽前統一が出来ないならば潰す気なのだろう。盾として役に立たないなら要らないとな。」
「勝手な事をしかし五年か……いや三年あれば羽前統一ぐらいしてみせるさ。」
「ほう、強気だな。」
「八戸も三年前まで一万石程度の小領だったんだ、奴に出来て我々に出来ないはずが無い。」
「まあ、まずは最上家の家督相続からだな。」
「戻ったら源五郎様とこれからの事を話し合わんとな。」
◆◆◆
「なあ、さっきの話なんだが。」
「どうした、空気と化していた泰造君。」
「いや、俺が口をだせる訳ないじゃないか、あれはどういう約束なんだ。」
「ああ、他の大名家には内緒で最上家は羽前統一に専念する。その間、伊達や蘆名とは南部家の包囲網に参加してる振りをして領に攻められない状態を維持するのさ。」
「なんだよそれ、汚えな同盟を裏切るのか?」
「裏切るわけではないよ、援軍が間に合わないだけ。中新田城と街道を抑えられたのを言い訳にしてね。」
「なんなら、迂回して伊達領を通って援軍を出すのもありだな間に合わないけどね。」
「それで俺らには何の得が?」
「横手の守りを薄くできる。使える人材は限られてるからね、葛西も裏取引はすんでいるから、陸前で戦うのは伊達と大崎だけで済む、相馬、二本松、蘆名とは岩出山城が落ちる頃まで伊達も援軍要請はしないだろう、したとしても守りを固めて騎馬隊で背後を襲うの繰り返し。」
「五年間もいるのか?」
「五年で岩出山城を落とせればいいね、騎馬隊では城攻めはできないし長対陣は背後を襲われるだけ。あの城は正攻法では落とせないだろうね。」
「如何するんだよ!落とせないなら駄目だろ。」
そうなんだよね、今回使った木砲も攻城槌も対策を考えれば火計や石扉とか対策は可能なのよね、いざ攻めるとき対策されてたらそれまでの準備が無駄になるか……。
「まあ意外とね五年あればいろいろ出来るからまあ何とかなるのさ、五年の時間は大きいよ戦力も今とは桁違いになるからね。今の南部家に必要なのは守りを固める事と、内政をしっかりやることなのさ。」
「何か地味だな。」
「派手なのは一瞬、準備は一生、人生なんてそんなもんさ。」




