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築館宿の戦い その後

◆◆◆


築館宿


夜が明けて、惨状が明らかになってきた。


【政栄】 「負けたなぁ。」


伏兵を蹴散らし築館宿の制圧という目的は果たしたが、途中からは全体の指揮は取れず、改めて全体の指揮を掌握したときには、敵には逃げられ味方の戦力が七割を切っている状況だった。


政栄…… 曰く戦力の三割を失ったら壊滅状態か……耳が痛いね。


此方の戦力は五千の兵が三千三百、千七百の戦死(逃亡と行方不明は戦死扱い)、負傷者多数、彼方の戦力はおよそ五千から千百、三千九百の戦死か……


負傷して捕虜になった大崎兵から聞いたところ、大将は氏家定直だとか。

最上の古将に、借り物の大崎兵か、動きの良かった騎馬隊は氏家家の直参って所かな。

歴然の古強者が指揮すれば借り物でもあの強さか……自分の所の指揮に慣れた兵なら……怖っ!


分からんのは、最上の宿将だろ?なんでまた築館宿なんかに?

最上でも伊達でも大崎でもピチピチした若い奴らがいるのでは?

使者とかで来ていて大崎に泣き付かれた?ないよね?意味が分からん。


しかし、あのくそじじい勝つためになにをやってもいいのは同意だが、変化を先読みで指示してる間を狙うかとか……あそこは強引に中央突破か撤退の場面だよね、奇策があったとはいえうちの守りは本来騎馬隊の突進位で穴は開かないのになー、次の変化が兵達の頭にあったから無意識に陣形が二手に割れちゃったのかな?

俺が前線で差配していれば……ってできるか!

うちもそろそろ全体で六千を超えるんだからいつまでも俺が前線で指揮してる段階じゃない、今回は氏家家の騎馬の突入を跳ね返すことができなかった、次はこんな事にならない様に対策を考える!てのが本筋だなー。


まあ、俺みたいなか弱い少年に前線仕事は向かないのさ。


◆◆◆


昼過ぎに九戸信仲が率いる侵攻軍一万八千(実数)の軍がやって来た。


んで、さっさと行ってしまった。


ねぎらいの言葉一つ位……いやおっさんにかけて貰ってもうれしくない、全くこっちは始めての大量の戦死でブルーだってのに。


【九戸実親】 「それで、政栄殿はなにをして居られるのかな?」


【政栄】 「相撲には勝って勝負に負けたみたいなかんじかな。」


【実親】 「いや、横になってサボってる様にしか見えませんが。」


【政栄】 「戦士には休息という名のサボリが必要なのだよ、んで実親殿は砦造りで留守番か?」


【実親】 「私も前線に出たかったのですが。」


政栄…… なる程、そういえばこの子はこっち側の人間だったな、まあ政実殿みたいなアホばかりでは九戸も壊滅してないとおかしいからな。

政実殿か……今回は氏家定直が相手だから、上手く立ち回って逃げられたが、相手が九戸政実だったらどうだ、じじいだったら逃げられたか……、まあいかに小細工を労した所で、真の強者の突撃を躱せるほどの……いやそれを言っては本末転倒、韓信だって項羽を策で何度もねじ伏せている、たとえば俺が上杉謙信と……無理だな十万の兵がいても勝てる気がしな……


【実親】 「政栄殿、聞いてますか?」


【政栄】 「?…なんです。」


【実親】 「手紙で兵を貸してくれって、書いてましたよね。」


なに?そのキラキラした笑顔は?駄目よいくら九戸の精鋭でもお坊っちゃんの面倒をみれるほど余裕はないぞ。


【実親】 「小さい砦でいいですから。」


【政栄】 「いや、小さいって……。」


なめてんの?坊ちゃん戦なめてんの?


◆◆◆


翌日


【実親】 「で、あの汚い格好の兵達はなんですか?」


政栄…… 汚いって、あんたんところの精鋭がそんな格好はいやだっつて着ないから仕方なく八戸兵うちのに大崎の敗残兵に化けさせてるんだろうがよ。


【政栄】 「正門(大手門)を開けて貰います。」


結局あのあと坊ちゃんの権力に押し切られ、箱一杯の硝石(いつの間に)で手を貸す事に。

信浄殿は契約切れだし、道盛殿には砦造り他を手伝って貰っている。

……俺が行くしかないか。


【政栄】 「で、その適当な城ってどこです。」


まあいいやどこでも、正門から侵入して、木砲で門を破壊しまくって本丸を制圧しちまえ、硝石も手に入ったしちょうどストレスも溜まってきた所だし。


【実親】 「成瀬川の流域に水平城があります。父上や兄の侵攻予定の城からも外れてますから、大丈夫です。」


【政栄】 「成瀬川?なんか聞いたことあるような?ないような?」


【実親】 「アレです、なかなか立派な水平城ですね。」


【政栄】 「なる程、川の水を引き込んで掘にしてるのか、まあ正門さえ抜ければ後は何とか為るかな。」


正門だと木砲で壊せるかまだ微妙なのよね。


◆◆◆


【政栄】 「それで作戦ですが、敗残兵(八戸兵)を九戸の兵で追い掛けます。」


【政栄】 「城の門を開けて貰います、開かなかったら帰ります。」


【実親】 「え?帰るんですか?」


【政栄】 「帰ります。」


まあ、お人好しの城主でもないと門は開かないでしょ、大崎も結構兵力が低下してるし、あの城に四千も詰めてれば多い方でしょ。開かなかったらとっとと帰って硝石を弄りたい。


【実親】 「まあ、開かないのでは仕方ないですね、開くといいのですが。」


政栄…… いえ、帰りたいので開かない方がいいです。


【政栄】 「開いたら、敗残兵(八戸兵)が中に入って門を開けたままにします。」


【実親】 「我々が突入するのですね。」


【政栄】 「次の門からは木砲で壊します。」


【実親】 「木砲ですか?」


【政栄】 「木砲です。」


政栄…… 説明はしません!


【政栄】 「これを繰り返して本丸を落として城主を捕まえます。」


【実親】 「なる程、単純でわかりやすいです。」


政栄…… これを本気で実行できるのはあんた達のところだけですけどね。


【政栄】 「では、準備をして半刻ほどしたら作戦を開始しましょう。」


◆◆◆




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