一関砦攻略戦 その二
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一関砦 正門前
政栄…… 二ノ丸、三ノ丸の動きが良く成ってきたな、指揮官が入ったんだな、よし陽動を入れるぞ。
軍配を左に向け正門を指す。
戸沢道盛がうなずき、五百程の集団が正門に近づいていく
【道盛】 「なる程、合板の矢盾でも役に立つ物ですな。」
外側に火矢除けの皮を貼り付け全身が隠れる大きさの合板の盾を使いスルスルと正門に近づいていく
【道盛】 「土嚢を壁へ!!」
正門から左側に二ノ丸から門を隠すように土嚢を積み上げる。
戸沢道盛…… まあ、特に意味は無いんですがね、ただの目立つ時間稼ぎですしね。
二ノ丸 矢倉
柏山明吉…… くっ、正門が狙いにくいが矢の雨は降らせられるわ、マダマダこれぐらいで。
三ノ丸
百々隆元…… 土嚢を積んだ?何をやってるんだ。壁を越える程積み上げる訳でもなし?
一ノ丸 対面の崖
灯りの無い場所に既に六本の黒く染められたロープがかけられていた。
小笠原信浄……一ノ丸の少し上の斜面にでられるか、奇襲には持って来いの位置だな、しかし、墨染の鎧とは準備が良い。
【信浄】小声「いくぞ。」
六人がロープに滑車付のフックを固定し沢の上を渡って行く。
信浄…… 何度やってもおっかねえな、よし終わり近くでブレーキを掛けて……
減速して無事足が着く場所にたどり着く。
【斎藤衆】小声 「斜面ですが、ロープを渡してあります、これを伝っていってください、一ノ丸の裏手にでます。」
【信浄】小声 「分かった。皆いくぞ!」
崖の向こうに渡りフックを外すとロープの高さが少し戻る。
小声 「よし、次だ」
次の六人が暗闇の中を渡っていく。
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一ノ丸の裏手の斜面
【信浄】小声「よし、五十人ほど集まったな、声を殺して静かに堂々と歩き、一人一人捕縛していくぞ。」
信浄…… 堂々と歩けか、たしかに声上げて襲いかかっていては敵が集まり斜面にいる者はひとたまりも無い、それにしても敵にしてみれば、敵が一ノ丸に居るわけが無いか。
恐ろしい人だなあの見た目からは、中身がこんなだとは想像も出来なかったが。
政栄心の声 うん、あとで縊り殺す!
信浄…… なるべく門には近づかず、って門の近くの篝火の辺りにしか見張りがいないのか拍子抜けだな。伝令みたいなのを二人ほと捕縛しただけか、まあいい人数が揃ったら本丸に五百程当てて本丸の門を奪取、本丸は攻めずに門付近を維持、三ノ丸を上から攻撃か可能と判断したなら残りで二ノ丸を制圧だったな、
しかし、ここまでは訓練のほうが難しかったような……あれは鬼だな。
回想……政栄 「攻撃と守備に分かれてくんれんじゃー!ハッハッハ負けた方はメシ抜きね。」
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一関砦 一ノ丸
小笠原信浄…… 呆気なく一ノ丸を制圧?してしまったな、こんな戦でいいんだろうか?伝令を捕らえたらバレそうな物だと思うんだがな……
冗談はともかく、ここからが本番だ一ノ丸を抵抗なく制圧できたら、二ノ丸の指揮官の捕縛を狙うか、伝令を装うのと、堂々と歩けばいけるとか言っていたな……五十石か試しても損は無いな。
政栄心の声 ハッハッハあまり捕縛するんじゃない。大将と百人程でいいんだ。
【信浄】小声「よし、二ノ丸を奇襲する、指揮官に伝令を届ける振りをして捕縛を狙うぞ。捕縛後は本丸の門、二ノ丸から三ノ丸に続く門、二ノ丸の敵兵をまとめて、一気に降伏させる、二ノ丸の敵は弓兵ばかりだから補充の矢を持っていく振りをすれば近寄れるからな。必ず二人で一人を捕縛するんだ、稼ぎは大浦兵で山分けだ!いいな。」
【大浦兵】小声「おう!」
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一ノ丸 二ノ丸に続く門
「二ノ丸に矢と替えの弓の補充です。」
【門番】 「ご苦労さま、通って良し。」
ゆっくり近づいて、六人程いた門番を囲んで捕縛する。
【信浄】 「なる程、コレが油断というやつか、気をつけよう。」
信浄…… 合言葉も割り符も無しか、やっぱりあの訓練が無茶苦茶なんじゃないのかな。
さっきの伝令の話だと二ノ丸の大将格は柏山明吉か、たしか胆沢の勢力だったな、今は戦国の世だからな……領地なしになると辛いよな。
おっと、人の心配なんかしてられん、柏山には悪いが手柄となって皆の家の家計の足しになってくれ。
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二ノ丸 矢倉
【ニセ】 「矢と替えの弓の補充です。」
【弓兵】 「おう!こっちだ。」「こっちも頼む。」
【ニセ】 「わかりました、今持っていきます。」
【ニセ】 「伝令!柏山殿はどこです!」
【柏山明吉】 「おお!こっちだ、葛西殿からか?」
【ニセ】 「ハイ!直接伝えるようにと言いつかっております。」
【柏山明吉】 「そうか!分かった。奥の矢倉だ来てくれ。」
小笠原信浄…… こんなに上手く行くものなんだな、いや政栄殿の知略が凄いのか……
【柏山明吉】 「それで、葛西殿はなんと?」
【ニセ伝令】 「周りに聞こえては不味いのでお耳を。」
【柏山明吉】 「そうか、これでいいか。」
【小笠原信浄】 「はい、いいですよっと!」
柏山明吉の腕を捻って床に抑えつけ首筋に小口の刀を突きつける。
【柏山明吉】 「貴様、下郎、何をするか。」
【小笠原信浄】 「何をするもなにも、柏山殿を捕まえたのですよ。」
【柏山明吉】 「貴様、南部の手の者か、いつの間に砦に入り込んだ!」
【小笠原信浄】 「いつからでしょうねっと。」
もう一人が柏山明吉を縛り上げる。
【小笠原信浄】 「柏山は捕縛した、他の状況は!」
【大浦兵】 「二ノ丸は制圧しました!今、武器を取り上げて縛り上げております。」
【小笠原信浄】 「よし、一カ所にまとめて見張りをつけるぞ、さすがに二ノ丸からの矢が止まれば三ノ丸に気づかれるだろう、三ノ丸に続く門に応援に向かうぞ。」
【大浦兵】 「はっ!」
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正門前
二ノ丸から振り注いでいた矢の雨が止む。
【政栄】 「二ノ丸からの矢が止まったか、やりましたな信浄殿よし破城槌を使うぞ!」
政栄…… ちっ五十石が……
【道盛】 「破城槌部隊準備よいか!」
【八戸工兵】 「準備よし!!」
【政栄】 「よし!破城槌部隊突撃!」
軍配を右の破城槌部隊に向け、正門に向けて振り下ろす。
破城槌を中心に取り回しに十人ほどの八戸工兵、さらに周りを盾兵が取り囲み正門に向かっていく。
【政栄】 「道盛殿、突撃部隊の指揮は任せる、門が破壊されたら突撃で。」
【道盛】 「任されました、三ノ丸の指揮官ぐらいは捕まえませんと、信浄どのは二ノ丸を制圧したようですしね。」
【政栄】 「無理するんじゃないぞ、いろんな意味で!」
【道盛】 「ハハハ!ここが勝負所ですよ!では!」
政栄…… 間違いなく捕縛狙いだな、五十石が……
政栄と警護の兵を残して、正門前に兵が集まっていく。
【政栄】 「二ノ丸と正門からの挟み打ち、もう時間の問題だな。」
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