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一関砦攻略戦

◆◆◆


一関砦…奥州藤原氏の定めた奥州一の要害の地である。

藤原秀衡の生きている内に源頼朝が奥州に攻め込んだとしても奥羽山脈~一関~北上川からなる奥州一の要害を力で攻め落とす事はできなかったであろう。歴史書から場所の特定はされていないが二ノ関は奥羽山脈沿いの砦であり、三ノ関は北上川沿いにあったと言われている。

一関から北が単一勢力だった時はたとえ伊達政宗だろうと豊臣秀吉だろうと陸上から攻める限り力ずくでここを抜く事は不可能であろう。

舟で裏に回るとは……くっ。


◆◆◆


一関砦攻略戦


◆◆◆


【政栄】「と、まあそういうわけだ、道盛殿。」


【道盛】 「なにが、そういうわけか分かりません。」


【政栄】 「今回は捕虜を多めに採りたいと思っている、そこで敵を一人捕虜にしたら一石加増するぞ。」


【信浄】 「ありがとうございます、殿。」


【政栄】 「いや、俺お主の殿じゃないけど…まあ褒美は戸沢兵や大浦兵だろうと勿論出す!!」


【一同】 「オオオオオオオオ!!!!」


【政栄】 「うんうん、よい気合だ!」


【道盛】 「採りたいって聞こえたような……。」


【政栄】 「気のせいだ道盛殿。」


政栄…… しかし、まさかとは思うが三千人全員捕虜にしないだろうな、そして何故大浦兵が一番張り切っている?


【政栄】 「おおそうだ忘れてた!砦の総大将の葛西晴信は殺さずに捕らえたら百石、その他の大将格は五十石にしよう。」


【道盛】【信浄】【一同】「「「オオオオォォ!!!!」」」


【政栄】 「道盛どのは一万石あるだろ。」


【道盛】 「いえ、領地が減って自由に使える小遣いが……」


政栄…… 北の財布事情は厳しいな……

◆◆◆


水沢近くの沢から、今日も道作りに行くと見せ掛けて奥羽街道にでる、今日は花巻から馬車で攻城槌と土嚢用の麻袋を受け取り夜襲の支度をするのだ。


【伝令】 「花巻砦から八戸領の馬車、五台でございます。」


【政栄】 「ご苦労さん、花巻砦の兵の集まり具合はどうだ?」


【伝令】 「九戸は既に準備を終えていますが、他家の準備が整わず、あと三日はかかるかと!」


政栄…… 事前に知らせて無いのは大きいからな、そうそう、書状を渡さんとね。


【政栄】 「九戸にこの書状を渡してくれ、急がなくていいから安全第一でな。」


【伝令】 「はっ!」


【道盛】 「今の書状は?」


【政栄】 「ああ、築館宿を落とせ無かった時の対応と、念おしの確認事項、忘れてると困るからね、あと余裕があったら政実殿か誰か貸してくれって。」


【道盛】 「貸してくれって……。」


「よし、では木陰で昼寝だな、決してサボります!」


【爺】 「若、途中から本音が漏れてます。」


◆◆◆


夕刻


政栄…… 昼寝など久しぶりだな、夜眠れなくなったらどうしますかな、さていつもの監視の皆さんは斎藤衆が始末しているか。

まあ、バレていても構わんが早馬がでて不安要素が増えるのもいただけないからね。


【道盛】 「全員準備できております。」


【政栄】 「夜道で暗い中の行軍だ焦らずゆっくり行くとしようか。」


◆◆◆


一関砦 少し離れた街道上


政栄…… 計算だと新月に成るはずだったが三日月だね、何事も計算道理にはいかんと言うことだな、気を引き締めて作戦開始だ!


「斎藤衆に先導させて、攻城バリスタの設置予定地に分解しているバリスタを運ばせる、途中の草むらに灯り用の照明麻袋を置くのを忘れるな。」


政栄…… 大軍で包囲していると誤解させるのもあるが足元注意が本音だな。北上川の支流に土嚢を投げこんだら、バリスタまで行き、正門の陽動を待って一ノ丸に突入させる。

正門に敵が現れれば構造上迎撃の為三ノ丸と二ノ丸に兵が集中する、まず手薄な一ノ丸を落とし、敵の大将と兵士の連絡を遮断する。

後は一ノ丸から三ノ丸を矢で攻撃、正門を攻城槌で突破、三ノ丸を抑えたら一ノ丸から門を開けて二ノ丸を制圧、最後に本丸に降伏を呼びかける流れだ。


この作戦は本来絡め手(裏道)や裏門から攻めるのが山城の簡単攻略レシピなんだが、一関砦には絡め手が存在しないからね。

ならば無理やりに絡め手を造っちゃえばという反則御免な作戦なのです。


【伝令】 「バリスタ八基、準備が整いました。」


【伝令】 「攻城槌、橋用の角材など正門前の準備整いました。」


【道盛】 「戸沢、八戸兵の正門攻撃準備整いました。」


【信浄】 「大浦兵、一ノ丸攻撃準備整いました。」


【政栄】 「よし!これより、一関砦攻略を開始する。」


◆◆◆


軍配を上げ、砦を目がけて振り下ろす。


一ノ丸の近くを除いて砦の回りの山々に灯りが灯る。


【政栄】 「鬨の声を上げよ!掛かれ!」


「オオオオオオオオォォォォ!!!!」


大浦兵が駆け出し北上川の支流に土嚢を投げこみ走り去って行く。

続いて、戸沢八戸の合同兵が土嚢を投げこみ、川幅が角材で橋を架けられる程狭くなる。


「よし!橋を架けよ!」


角材が敷き詰められ平らな橋が出来上がる。


政栄…… 嚢砂の計、成功!さて砦側も騒がしくなってきたな。


一関砦 本丸


【百々隆元】 「葛西(晴信)殿に面会を願いたい、正門前に敵兵、一関砦は大軍に囲まれておるようだ、至急面会を願いたい。」


隆元…… まさか、晴信殿に限って裏切るような行動をとるとは思えんが、噂が真実なら……


【葛西晴信】 「百々殿、危急の時に待たせて申し訳ない、すぐに指揮を執ろう。」


隆元…… 噂は噂であったか、晴信殿を少しでも疑ってしまったことは戦場で返すとしよう。


【隆元】 「既に川に橋を架けられたとの事、三ノ丸と二ノ丸に兵を集め正門前の敵を挟撃しましょう。」


【晴信】 「わかった、百々殿には三ノ丸の指揮を任せたい、私は二ノ丸と全体の指揮を執ろう。」


【隆元】 「分かりました、三ノ丸で指揮を執りましょう、では急ぎますのでこれで失礼します。」


◆◆◆


三ノ丸 正門裏


【隆元】 「弓兵は台や矢倉に上がれ、足軽は突破された時の為に槍衾を組め、二ノ丸からも矢を射掛けるからうまく二ノ丸の射程に追い込め!!」


隆元…… 昨年も正門を突破されなかった、大軍であろうとも小揺るぎしなかったこの砦だが、この短時間に橋を架けられるとは相手は大軍で総力戦を挑んできたか。だが一週間粘れば必ず援軍がくるそれまでもたせるんだ。


二ノ丸 正門上方の矢倉


【柏山明吉】「よし、敵が射程に入った良く狙って射掛けよ!」


おのれ南部め必ず叩き出して胆沢の地を奪還してくれる。勝ち続けて南部をこの地から追い出すのだ。


◆◆◆


柏山氏は胆沢郡の地頭職です。南部に叩きだされました。






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