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北上川の対(滞)陣と出陣

◆◆◆


陸前桃生郡 北上川渡し場


山の斜面の少し下方に南部家本陣、北上川を挟んで対岸に葛西家と伊達、大崎の援軍合わせて二万の軍勢。


【北信愛】 「なる程、政栄殿がここで陣を張れというわけですね、崖続きの中の往来が可能な渡し場とは、戦う気のない我々にとってみれば絶好の場所、相手にとっても守り易いと言えるが、我々が攻めぬかぎり延々帯陣をつづけねばならないか。」


「フフフ、タチの悪いことこの上ないですねえ、いずれ我々の兵数もバレるでしょうが相手は退くことができませんからね、当分付き合ってもらいましょう。」


◆◆◆


花巻砦


【石川高信】 「では、陸前侵攻軍本隊!出陣する!!」


南部晴政の本陣が北上川渡し場で長滞陣から二週間、奥羽山脈沿いを迂回して大崎領へ侵攻する石川高信の侵攻軍公称二万(実数七千)が出陣した。


山道を広げながらゆっくりと大崎領中新田城を目指し進軍していく


石川高信…… 山道を広げながらの進軍か政栄の話しでは最上家の抑えに中新田城は是非とも欲しいから、築館宿の次の目標だと言ってたな。まさかとは思うが、やりそうで怖いのう。

花巻から山道を広げて援軍が到着し易い道を作ってくれとか、昨年も横手まで山道を広げる仕事をさせられたのう。

政栄め訓練だとかいいよってからに思いだしたら腹が立ってきたわい。


◆◆◆


一週間後


大崎領 古川城 


【大崎義直】 「石川高信が二万で中新田城を目指しているだと。」


【伝令】 「道を広げながらの為か進撃速度はかなり遅いとのことです。」


【義直】 「……ふっ、地の利は我らにあるか。」


義直…… 石川高信は二万か、南部晴政の一万七千と合わせて三万七千……三万七千だと明らかに南部家の動員できる兵数を超えているではないか。

とすると、北上川から動かない南部晴政の軍は囮で兵数の偽装をしているのか。

くっ、してやられたか。だが地の利が我らに味方している。援軍を集めて迎撃する時間の余裕があるからな。


「伊達家と最上家と葛西家……いや葛西家はよい、伊達家と最上家へ援軍要請を敵は二万と伝えよ!!」


義直…… まさかとは思うが葛西家は……いやまて、裏切った訳でも無い、現に北上川で対陣しているではないか。

だがもしもの事を考えて、今回の援軍要請は辞めておこう、山道で挟み打ちにされたら……くぅ噂に踊らされるとは。

だが不幸中の幸い、時間的余裕もある三家で兵を集めれば二万を超えるぐらいまだなんとかなる。兵が同数でも補給路の近い我らが山道で守れば……くそ、だから奴ら山道を広げながら進軍してるのか。

こちらも、中新田城に補給物資を集めて補給の準備をせねばな。

ふん、南部家にも策士がいるようだがまだまだ穴だらけよ。

これ位で我らに勝てると思ったか。


「領内の兵、物資を中新田城へ集めよ大戦おおいくさじゃ皆に中新田城に集まるよう伝えるのだ。」


◆◆◆


三日後


最上領 山形城


最上源五郎…… 最上家から五千の援軍か、南部晴政が囮で石川高信が本隊とはな、見事と言いたい所だが山道で足踏みしているとは、穴だらけではないか、ただ山道を広げながらの行軍とは……長引くかもしれないな。

石川高信が本隊なら南部晴政は囮……葛西家に攻め込む気は無かったと言う事か……北上川から兵を引き抜き一関から逆侵攻させる手もあったが葛西家がもしも裏取引をしていたら……

なる程、あの噂は北上川から兵の引き抜きをさせないようにするためか。相互不振の種を蒔き動けなくする策。

この手口、八戸政栄とか言う黒坊主か……羽後の各個撃破に味をしめたのだろうがこの程度では兵力の差は覆すことは出来ないぞ。

だが、葛西家がもしも裏取引をしていたらか……噂一つで恐ろしい奴だな。

これで手の内は全てなのか?奴はどのように陸前に侵攻するつもりだ。

南部家の総兵力は既に超えている……本当に超えているのか?

もし、石川高信の軍が囮だとしたら?

他にどこから侵攻する?手薄な所は?一関砦……いやあそこは今も兵が詰めている昨年も一万の兵で攻められても落ちなかった。

援軍が来るまで余裕で持つだろう。

分からない、今できる事は石川高信が囮の時、どこからか侵攻してくる敵に備えるのみか。

うん、援軍が出陣する前

に父上に申し上げておこう、今度こそ認めてくれるさ。


◆◆◆


最上義守…… 石川高信が囮の時の為援軍の準備か……ワシは考えもつかなかった……だがワシは当主としての仕事をするのみ、三の矢に備えるとしようか……戦が終わったら、今度こそ廃嫡をせねば成るまい、息子が恐ろしいとは情けないことだな。


◆◆◆

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