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陸前出陣

◆◆◆



◆◆◆


葛西家


近頃妙な噂が流れているようだ、葛西家が南部家と水面下で交渉しているとか、いないとか。

正月に南部家から年賀の使者は来たが、他の家にも派遣してると言ってたし、まあ使者を見た誰かが流した無責任な噂なのだろうが、同盟関係を裏切ってるみたいで、正直腹立たしい。

不来方で晴政がまた性懲りもなく陸前を攻めるとか言っていたな、早めに出陣して噂を払拭しておきたいものだな。

このような噂を放置しては葛西家の評判や名声に傷がつくと言うものだからな。


伊達家、大崎家、最上家


近頃、葛西家が南部家と水面下で交渉していると言う噂がちまたに広がっている、南部家からの年賀の使者も同盟関係の中では葛西家にだけ派遣された用だし……ただなんの証拠もない事だからな。

それよりまた、晴政が性懲りもなく陸前を攻めるとほざいてるらしいな、昨年も一関で負けているのに、懲りない奴だな。

正直夏場の忙しい時期に攻めて来なくてもなあ、どうせ負けるなら農閑期にすればいいものを、まあ良い返り討ちにしてくれる。


◆◆◆


最上家


最上源五郎(のちの最上義光)


不穏な噂に南部家の侵攻、だがこちらの戦力の合計は南部の二倍以上、いま葛西家が裏切る理由はないか……。


南部家にとっては三陸、北上川方面からの侵攻を防げる上に、当面は大崎家に狙いを絞ることができる。

噂の流れからすれば南部家が接触をして葛西家が断ったとみるべきか?

南部家は一関砦があるから、北上川沿いを葛西家の領地にでるか、奥羽山脈のふもとを迂回して大崎家の領地にでるしかないはず。

噂が真実なら、大崎家に攻めてくるはずだが……


何だろう、この納得出来ないモヤモヤした感じは。


◆◆◆


陸前出陣


1555年 7月


不来方城


大将南部晴政、軍目付北信愛、主に南部家の旧家と言われる家から集めた兵、公称一万七千実数七千の軍が不来方を出陣した。


旧家から集めたのは、信用度と事前に(囮であり戦功は期待出来ないが戦後の領地割を優遇する)取引を行い納得させたからだ。

身内贔屓とも言う。

高信殿の軍や援軍は九戸や大浦の騎馬隊など陸奥の家を中心に編成している。

最後に、花巻に遅れて集めてから築館宿に侵攻するのは領地を減らされた羽後や陸中の家で編成している。花巻で葛西家とは裏取引をしてるので攻めない様に厳命する予定だ。

正に敵を騙すには味方から騙すというわけだな、捕虜になって口を割られても面倒だし知らないのが一番さ。


派手に出陣していくその陰で、俺達の八戸、大浦、戸沢からなる公称三千実数四千の軍もコソッと水沢方向に出陣した。

実際の所相手だって忍を持っている訳だし、大々的に発表し南部家内に戦の準備をさせた以上、コソッと出陣してもバレバレなんですけどね。


うん?戦相場で儲かったか?なんのことかわらなないなー。


【道盛】 「政栄殿、何故そんなに、ホクホクしているのですか?」


「ウム、臨時収入がちょっとな。」


いやー家内で何から何まで飛ぶように売れたからな。結局ほぼ全軍出撃に成っちまったから、戦の準備で売れる売れる、笑いが止まりませんなぁ、残念ながらほとんどツケだが。

だがツケを回収するためにみんな生きて返してやるからな、借り逃げはゆるさんよ、さらに気合を入れた作戦は万全だよククク。


◆◆◆


花巻付近北上川の渡し場


「焦らずゆっくり行け!渡ったら敵の伏兵の備えを忘れるな!」


北信愛…… 前回の教訓が生きてますね、今回は近場で渡河して補給路を作りながらの行軍です。戦闘の予定はないとは言え、索敵から道路の進捗管理、補給物資の輸送など忙しくなりますね、全く私以外に適任者がいないとか乗せられましたかね。

実際晴政様を暴走させないように気を引き締めなければフフ。


南部晴政…… つまらん、だがまあ陸前の平野部にでるにはこれが最良だろうからな。戦後の不来方城の拡張とか、色々言っていたが、一関攻略が終わったら望みどうり内政に専念させてやる。

ワシは楽しく陸前侵攻をするとしよう。


◆◆◆


花巻砦付近の街道


【道盛】 「政栄殿、我々は水沢で待機なのでは?」


【政栄】 「大丈夫索敵は怠っていないから、どうせ一月半やることはないんだ、訓練がてら道路整備をしながら行こう、どちらにせよここが南部家の生命線に成るんだからな。」


「ここら辺に軍が動いている事実が重要なんだから問題なしだ!」


「八戸領は工兵部隊があるんでしたね、たしかに引くも進むも道作りは必要ですな。」


対伊達、最上線での補給路として後々の主要街道として戦略的に重要な道だからな、完全舗装して馬車の往来が楽に出来るようにしておこう。一月もあれば水沢まで楽に舗装できるだろ。


◆◆◆



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