常陸国 乱 その二十六 谷田部の戦い
しばらくぶりです、本当に不定期更新ですが。<(_ _)>
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「……車斯忠の圧勝とはな。」
「そんなに驚くことかい。」
「罠を仕掛ける場所が絶妙だ、街道のひらけた所から道が狭くなる直前の見えにくい足元に黒縄の罠、それに次の奇襲の事も考えてある。」
「あいつ曰く呉子の馬の扱いや地形を応用したハメ罠なんだと、罠には少し緩んで足元に纏わり付く斎藤衆秘伝の忍び結びを使ってるし、本当タチの悪い奴だよあいつは。」
「呉子か……無学な俺にはサッパリわからん、ところでお主の主君であろう?そんな口をきいていいのか。」
「偉いさんの前とか、時と場所を間違えなければ怒らないからな、まあ赤ん坊の頃からの付き合いだし、出来の悪い弟みたいなもんだしな。」
「……そうかでは、我らは連絡係を残して岩槻に向かう……佐竹の優勢は動かぬだろう。」
「オオ!共闘感謝する、……がいいのか?戦ってのは最後までわからないらしいぜ。」
「……結城と佐竹が一戦交えればこちら側の目的達成との事らしいからな。」
「なる程、お互い怖い雇い主を持ったものだな。」
「ぬかせ、お主のところほどではない……さらばだ次も敵でなければいいのだがな。」
「ああ、アンタとはやりたくないものだ。」
瞬く間に森の影にとけて見えなくなる。
「……オイ政栄に報告だ、車の圧勝、千本は離脱と。」
「ハッ!」
「結城に小山、宇都宮、那須からもかな、全くこんだけスッパが多いとヤんなるぜ、親父から凄腕借りてきてたのにそれでも足りねえんだもんな、あいつらの手を借りなければ取り逃がす所だったぜ。」
「捕らえた者はどうしますか。」
「政栄が後で用があるんだと殺さずに連れて行くぞ。」
「若がですか、かしこまりました。」
(若か……行政様の息子と言う立場って事か、未だに若手以外の斎藤衆は新田家寄りがほとんどだからな……幾ら領地が大きくなっても側室腹の身分差は消えないって事か。新田家の家老筋は正室腹の弟あるいはその息子が将来遠野を含めて統治すると考えてるだろうからな。ヤレヤレ足元も危ういっていうのに、次から次へと厄介事を背負い込むんだな。)
「……ここはもう良いだろう、予定通り見張りを残して半分は鬼怒川の渡しの監視に向かえ、半分は俺と行くぞ。」
「さて、あの爺さん真壁を動かせたのかね。政栄は相性が良いから大丈夫だろうって言っていたが……後背を取る絶好の機会だが不利とみれば敵に加勢されるとか考えて……いるんだろうな。」
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辰ノ刻 太陽で温められ霞ヶ浦、鬼怒川、谷田川から発生する濃い朝霧が晴れ視界が開けると、鬼怒川と谷田川の間の一番狭くなる狭隘部に佐竹軍が横陣を敷いている姿が現れた。
「敵は中洲の幅一杯に広がって横陣をしいております少し後方に物見矢倉、更に後方の高台に佐竹本陣のもようです。」
水谷正村
「ご苦労、直ぐに伝令を出す控えておれ。」
(本陣の位置は丘とも言えぬ高台か、目一杯に広げたのは鶴翼に……いやそれでは中央後方に物見矢倉を置く意味がわからぬ……まあ良い中央が厚いなら横陣の端に集中させこちらが囲んでしまえば良い)
「小山、小田に伝令、前進して左右から囲めと。」
「ハ!直ちに。」
佐竹対結城下野連合の戦い、その本戦が谷田部で幕を開けた。
両軍合わせてその総数は六万を超え、直接鉾を交えた合戦では関東では河越夜戦以来の大戦となった。




