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常陸国 乱 その二

不定期ですが<(_ _)>

◆◆◆


常陸真壁郡 真壁家


「ヤアー!」


カッ!


「ふむ剣筋がよいのう、これだけの逸材中々おらぬじゃろうのう。」


「塚原先生、倅はそんなに筋がよいのですか。」


「おお、久幹殿中々見ない逸材じゃよ成長が楽しみだのう。」


「そうですか、塚原殿のお墨付きとはかたじけない。」


「なに、趣味みたいなもんじゃからのう。」


ふむ、小僧の言ったとおり、中々の逸材じゃこれで成長すれば七尺とかとんだ怪物になりそうじゃのう。


「殿大変です!」


「どうした何事か。」


「佐竹家当主矢傷に倒れるとの事です!」


「なんだとどこからの情報だ。」


「各地に高札がかかげられており、町や村ではこの噂で持ちきりです。」


「ムウ、それでは真実かどうか分からんな、国境の佐竹の軍はどうした。」


「ここ最近動きはありません。」


「わかった引き続き情報を集めよ、真実ならば常陸は荒れるぞ。」


「殿!町に新たな高札が!小田氏治が反佐竹を掲げ兵を挙げたとのこと、村ではこの話で持ちきりです。」


「なんと、小田が兵を……当主不在を狙った火事場泥棒みたいなマネを、好かぬのう。」


「殿!我々は如何に動きますか。」


「国境の佐竹の軍は太田に戻るじゃろう、あえて邪魔をする必要もあるまい、真壁は中立を保つ!」


茂みより斎藤衆の者が走り寄る。


「塚原殿、殿より手紙が届きました。」


「ん?ワシにか……どれどれ……、なんとまあよくこんな策を考えつくのう、だがわかったこれが鹿島の為になるならワシも地元に戻り一手加えさせて貰おうか。」


「ん?塚原先生如何された?」


「ああ、そのなんだ用事ができてのう。」


「殿!大変です、佐竹家から常陸の有力者に檄文が発せられました当家にも羽付きの書状と旗が届きましてございます!」


「檄文だと!見せてみろ。」


「檄 小田氏治は常陸の安寧を図るべき家柄にありながら、同盟者である常陸守護佐竹義昭の倒れるにつけ込み反佐竹の兵を挙げた、義昭が嫡男徳寿丸様は弱輩なれど小田に戦いを挑む事を決意す。


常陸の義ある者は立て!


常陸の安寧を護るため佐竹の旗を持ち集え!


佐竹家当主代行 徳寿丸 」


「檄文とは……これは国を割る大戦になるやもしれんな。」


「久幹殿のところにも届いたようじゃの。」


人の心の機微を知り尽くしておるのう、裏を知るワシからみればいささかあざといが、単純な者ならいや大抵の者はこの檄文に心を動かされるだろうからな、佐竹軍が国境に張り付いたままにして置き不利な演出まで加えてか、ワシの手紙には書いてないがまだ何か手をうっておるな、あて馬に使われた小田殿が気の毒なくらいじゃのう。


「塚原先生、用事と言うのは。」


「うむ、急ぎ鹿島に戻り当主を説得せんとのう。」


「塚原殿はどちらに付かれるのですか。」


「ワシらは佐竹家に恩讐はないが、乱を起した小田家に付くわけには行かぬな、名誉を重んじて佐竹家に加勢いたす。」


「鹿島は佐竹家に付くのですか。」


「まだ分からんがな当主がアレじゃからの、小田について卑怯者呼ばわりも檄に応えぬ臆病者呼ばわりもされとうないしのう。だいたい元服もしていない子供とは戦えんわい、最悪わし一人でも佐竹家に馳せ参じる積もりじゃ。」


当主あやつはともかく、二手に分かれて生き残りをかけるのは鹿島の為必要じゃからのう。とは言え演出で軍を戻さなかった事は裏を読めば包囲殲滅の為じゃろうな、手紙に書いておけ迷ったらどうする。


「………」


「まあ、ユックリ考える事じゃの、真壁家の命運が掛かってるんじゃからのう。」


「命運……武家としての名誉か……」


全くどこまで仕込んでいるやら彼奴のやる事、今はワシだけでも佐竹家に付かねば鹿島が滅ぶわい。


◆◆◆


小田原 北条家


「幻庵様、八戸殿より密書が届いております。」


「む、何故に風魔から?」


「太田城で渡されたとの事です。」


「届くなら何でもアリじゃのうあの小僧、どれ……」


「……フフフ、なるほどな氏康様に具申するかのう、貸しは高くつくもんじゃぞ小僧よ、そうじゃのう、岩付の太田の小僧にやらせるか、しかし見事な念の入れようじゃな、この歳で戦略を学ぶ事になろうとはな。」


「幻庵様?」


「おおすまん、久しぶりに楽しくてのう、すぐに氏康様に面会を申し込んでくれ。」


「ハッ!」


北条の関東侵攻に益が無いどころか理想的な挟撃になるのう、里見の命運も尽きたというものじゃな。


◆◆◆


常陸 小田城 小田氏治


「勝貞かどうした、戦の準備は進んでいるか。」


「殿!それどころではありません、いつの間にか反佐竹の兵を挙げた事にされておりますぞ。」


「なにー!どこから漏れたのだ、まだ戦の準備も終えておらんのに。」


「国中噂で持ちきりですぞ、佐竹家に恨みのある家から味方するとの内容の書状が幾つか着ております、いえそれより先ほど小田家に対して徳寿丸殿が檄文を発せられたとか。」


「檄文だと?ワシはまだ何もしておらんぞ、準備はしていたが。」


「謀られましたな、とにかくこのままでは一方的に周りから攻撃されます、援軍を頼みませんと。」


「援軍?おお!そうかその手があるか、よし勝貞すべて任せる好きに動いてよいぞ。」


「ハッ!結城家と岩城家に援軍を頼みましょう、岩城家が背後を突く動きを見せるだけでこちらの有利となりますからな、困窮している今なら金銭で動かせるでしょう。結城家には私が直接交渉に行きます。」


「そうか、頼むぞ勝貞よ。」


「誰の策かは知りませんがこのような卑劣な策必ず潰してやります。」






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