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外交 相馬

◆◆◆


1556年 春


新八戸領での指示出しを終えた政栄は京都に向かって陸路で不来方から一関、築館、中新田を回り、大崎領古川に来ていた。


不来方では南部晴政と細かな政策の打ち合わせ、築館では九戸信仲、中新田では石川高信と防衛体制の確認を行い、危急時の策を残して大崎領に向かった。


古川では大崎義直と金銭の交渉を行いその足で葛西領石巻港から新南部丸に乗り込む予定となっている。


先日の海戦の後、松島、相馬、小名浜の各港が襲われていたときに、ちゃっかりと葛西氏が石巻を押さえていたのである。


これには今まで石巻を押さえていた伊達家から文句が出るかと思っていたが、現在葛西家は現当主で親伊達の葛西親信と親南部の葛西晴信との間でお家騒動の真っ最中であり、石巻を押さえたのが親信の側の陣営の者だった為、表向きは伊達家から文句が付けられない状況の様だ。


ぶっちゃけてしまうと、この出来事は晴信の策略でありその家臣も晴信の命を受けて石巻を占拠しているという状況なんだがね。


このまま、なあなあで石巻の占拠を続けるのか?それでいいのか?


葛西晴信はこの程度なのかと思っていたら、京都に出発する直前に南部丸を寄港させてくれとの要請がきた。


最初は馬鹿なのかこいつと思っていたが。なる程考えてみればウチが出入りしている港を伊達家が今のこの状況で取り戻そうとは思わないし、葛西家と南部家はズブズブな状況なのは知れ渡ってるからなあ。

でもねえーこんな事をしているとウチの評判、いや俺の評判が下がるような気がする、これが貴様のやり方か!って感じかな。

周囲から見たら、どう見ても俺がやらせているように見えるからね、羽後で散々悪名を轟かせたとはいえ更に評判が下がるのは哀しいものがあるな。

とはいえ俺にメリットが無いわけではない、石巻に寄港できれば次の鹿島まで少しは安全に航海ができる、まだ直接戦っていない相馬家と岩城家はまだ交渉の余地はあるが、伊達家とは寄港?ふざけるな!って感じで交渉の余地が無いからね。少しでも安全に航海ができるなら悪名なにするものぞだ!……名声がゼロなら下がり様が無い訳だと思って我慢しますか、現実はダダ下がりですがね。


古川城で簡単な交渉を行い葛西領へ、葛西晴信に文句を付けつつ(笑って誤魔化しやがった)、折角港が有るんだからと中古船の売買、上方への荷物や仕入れて欲しい物の交渉を行い石巻港から船上の人となった。


対外的にはお家騒動が続いている様に装っているが、どうやら半年程の間で家中を纏める事に成功したようだ、親信も納得して静養しているらしい、人に悪名を押し付けるタヌキだがこれぐらいの手腕があるなら全く問題ない、少なくとも南部が不利になるまで裏切る事は無いだろうからね。


◆◆◆


さて、廃墟と化した相馬港から少し南下して小高城の目の前に南部丸八隻を置き小高城を居城としている相馬盛胤に先触れの使者を送ってみた。


え?威圧?何の事かな~我々は北条さん家に納める南部丸を曳航しているだけだから、まあ相手が勘違いするのは仕方ないかな。


中村相馬家、後に相馬中村城に移封された為、後世ではよばれている、平将門の流れを汲む生粋の平氏一門である。戦国時代前期は三郡を支配する程度の小領主だったが歴代の勇猛な当主と強力な騎馬隊の力で1560年代には奥州磐城国に一大勢力を持つに至っている。


わかります脳筋の一族ですね。


だが、何度か使者として小高城を訪れているが、脳筋症患者とは思えない見事な施政を行っていたのには驚いた。


明らかに食料増産を目的とした農業政策を進めていて、兵力を養う基礎を造っているのがわかる農村部には目を見張るものがあったのだが、兵農分離や騎馬の改良、武器の改良には手を付けてないところから、単なるバタフライ効果で何かの切っ掛けで農業ブームが起こっているのかと思っていたが……まさかな。


上方への交易にも乗り気で何度か南部丸で荷を運んでいて、当主の感触も良かったのだが、一転水軍を派遣してくるとか、やはり戦国大名なんだなと残念に思っている、正直潰したいのは岩城家の方なので相馬家は残して(利用して)も構わなかったんたがな~


◆◆◆


小高城


意外とすんなり盛胤との会見が成立した。ハテ?


「過日の水軍襲撃はお互い大変でしたな、使者の任を受け京に向かう途中ではありますが、お見舞いの品などを持って来ました。」


「いやこちらとしては申し訳ない、水軍の連中が誰かにそそのかされて石巻に集まっていたと、耳に入ったときには後の祭でな我々としては争う積もりは毛頭無かったのだが。」


……白々しいと取るべきか?人を見る目はそこそこの俺だが腹芸が使える人だとは思えなかったんだがな。


「いえいえ、滅相も無い所詮気ままな漁師くずれ共ですからな、相馬様が謝る必要はありませんよ。」


「そう言ってもらえると助かる、これからも交易などで相馬に寄って貰いたい。」


……真意がよくわからんな、交易の方が領内を回せるのを理解しているなら水軍をけしかけるはずも無いんだが、八戸領を脅威と思い潰しに来たのではないのか?


「もちろんです、相馬にも造船技師はいると思いますが、船の注文も受けていますからお声掛け下さい。」


「おお!それは助かる船が足りなくて困っていたところだ。」


◆◆◆


小高城 控えの間


……意外とそそのかされて踊らされたのかもな、と思わせる策略かもしれんしな油断は禁物、裏で糸を引いていた奴がわからんと何ともいえないな。この件は保留で相馬家との交易は続けるか。


「失礼します入ってもよろしいでしょうか。」


……女の声?外部の使者に女性をあてるか普通?何か用かね。


「どうぞ!」「失礼します。」


年頃は十五、六かな、着ている着物から身分の高さが伺える。


「相馬盛胤が娘、菊と申します。」


はあ、相馬の姫さんねって、めっちゃ睨んでるんですけど。


俺何かしたかな~覚えがあり過ぎてわかんないや。


「一芸も無い娘ですが、よろしくお願い申し上げます。」

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