表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/163

石巻沖海戦

◆◆◆


戦国時代中期の船戦は実のところ、平安時代からほとんど変化していない、矢合わせから船を接舷しての白兵戦、あるいは火矢を放ち船ごと燃やすなど、武器が変わらないため変化しようがないとも言える、火薬が使用され始めた戦国後期でも村上水軍や九鬼水軍が大型艦を運用する頃まで船上で大砲や火縄銃、炮烙玉を用いる戦いはほとんど無かったのである。


戦国時代中期までの船戦は潮の流れや風向きを読み、味方陣営の船団を如何に加速させるかにかかっていると言っても過言では無いだろう。


まあ、勢いって大事だよねって話ね。


陣形に関していえば横一列か二列の横多段の陣形でぶつかり合うのが定石であり、壇ノ浦のように潮の流れに乗って縦長になり(まあ、見ようによっては横陣なんだが)戦場でぶつかり合うのは稀だったと言える。


女川沖 新南部丸内大広間


「では作戦を説明する、この時期は残念ながら敵側に潮目も風も味方している、そこで船団の右翼後方水平線影に新南部丸と快速船仕様の南部丸を置いて開戦と同時に加速して敵の右翼に向かって斜めに突入する。」


……向かい風に向かっては走れないが斜めになら走れるからね。


「新南部丸以下三隻は単縦陣を組み敵の右翼から後方へ回り込みさらに加速して後ろから左翼に突入する。」


「その間本陣は帆を張って、風や潮に任せて後退、敵との距離を一定に保つ。」


「新南部丸以下三隻の攻撃で敵陣が混乱状態になったところで帆をたたみ櫂を使い距離を詰め敵船団を包囲一気に殲滅する。」


「本陣には中型船以上の船でのみ参加するものとする、これは弓隊の配置も考えた措置だから承服するよう、小型船は今回は裏方だ。」


「なにか、質問は?」


「小型船の我々はただ見てるだけで良いんですか?」


「問題ないな、小型船は戦の後で敵を捕縛して貰う予定だから戦が始まったらゆっくり回り込んで戦場を囲んでいてくれ。」


「わかりました、捕縛は一人百五十文でしたな、ありがたく稼がせていただきます。」


「白兵戦に参加したい者は、各自で交渉して中型船に乗せて貰うこと、今回は鎧とか付けられないからな危険手当てははずむぞ!」


「オオオオ!!!!」「よし、俺は白兵戦にでるぜ。」「俺らは安全に小銭を稼ぐとするか。」


◆◆◆


「で?なんで塚原殿が新南部丸に乗っているのかな。」


「船遊びに行くと聞いたのでのう。」


「船遊びって……まあ似たようなものか命懸けの遊びではあるがね。」


「あ……爺さん俺の事、曹操みたいだとか言ったんだって曹操は赤壁で大敗してるんだから縁起でもない、せめて……海戦に強い偉人って誰だっけ?」


「面倒くさい奴じゃのう、海戦ではないが周瑜か呂蒙でよいではないかな」


「両人とも早死にしてるじゃないですか!せめて陸遜とか、だいたいにして俺は百まで生きるんだよ!」


「陸遜は晩年憤死しておるぞ、この時代で四十生きれば十分じゃろうが、それで勝ち目は?」


「え?そうなの?、戦に関しては今の所負ける要素が一つも無いんだが、相手に俺みたいなのがいないとも限らないしね。」


「お主ならこの船に勝てるのか?」


「船の船体強化はしてるけど木造船だからね、中型船で体当たりされたら多少は厳しいかな。」


「多少か、なる程お主でもこの状況をひっくり返すのは無理か。」


「無いことも無いって言うか、実は西洋の海戦戦術に衝角ラム突撃があるんだがね、鉄の流通を見る限りそれは無い(主要な物の流れは斎藤衆に監視させている)、後は船底に貼り付いて穴を開けたり、爆薬を仕掛けたりするのも。」


「春前の北の海に長時間潜れる訳無かろう、……それでか三陸の港に入らなかったのは。」


「念には念をいれてね、この時期海に潜るのは命懸けだが不可能では無いからね、と言うわけで転生者が相手にいても今から逆転の策を打つのは不可能に近いね。」


「気苦労が絶えんのう。」


「誰のせいだ、誰の。俺以外の転生者がいるとか考えたく無かったよ、この先常識外の作戦を仕掛けてくる可能性とか……面倒くさ。」


「わしのせいではないさ、事実を受け止めるんじゃな。」


「ハァ……、今までの倍は深く策を考えないとな。」


「カッカッカ、見てるだけで面白い奴じゃのう。」


◆◆◆


同時刻 久慈領所属 中型船久慈丸


「じい、久慈沖を通る南部丸も大きかったが、この船は桁違いに大きいのう。」


「弥四郎様、戦前で皆殺気立っております中へお入り下さい。」


「良いではないか、南部丸三隻で敵を混乱させるまで出番はないのだから、久慈港に寄ってくれなかったから、新南部丸を間近で観るのは初めてなんだし。」


「そうですな、帆柱が三本もある黒い船なぞ、滅多に見られませんからな。」


「何故、三本帆柱の黒船は久慈港に入港しなかったのかのう一本帆柱の南部丸は入ってきたのに、せっかく港を大きくして南部丸でも接岸できるようにしたのにのう。」


「弥四郎様、南部一門衆の八戸氏と大浦家は仲が悪いですからな、まあ一関攻略では轡を並べて戦った仲ではありますが。」


「大浦家の一門が参加してなかったからのう。」


「せめて、政栄殿が年長であらしたら、下につくのも問題なかったのですが、まだ数え十一では如何とも。」


「それでさらに仲が悪くなっては世話が無いのう、久慈は八戸の恩恵を受けて今はドンドン景気が良くなっている、大浦家を無視して仲良くしておきたいのが本音なんだから困りものだのう」


「久慈家の当主が大浦家の当主の弟ですからな建前上そうも行きますまい、とは言え八戸領との関所では食料の持ち出しに制限があるだけで、鉄も農具も持ち出し放題、通行税を取っているのは久慈側だけですからな。八戸は久慈をそれ程警戒してはいないのでしょうかな。」


……じい、それは逆だぞ久慈領はすでに八戸領に組み込まれて属領と化しているのだ、食料を吸い上げているのは戦の備えであって、鉄を流してるのはそれを誤魔化してるに過ぎない。

もし我々が牙を向けば容赦なく潰す積もりだろう。

領境からの狼煙台や階上岳の監視所など油断は一切ないと見たぞ。

だいたいにして大浦家と我々は違うんだからあんな大領と事を構えるなんて冗談じゃないよ、たった六日で迎撃の準備を終えて逆に石巻沖に進出してる手腕、戦の備えは何時でも万全だという証明だろ、久慈領から八戸領に攻め込んだら間違いなく返り討ちにされて港は火の海に城は陥落だな。

大浦家は無視して今は八戸と独自の友好関係を結ぶのが得策なんだよね。

さし当たっては婚姻関係を結びたいんだが政栄殿が数え十一で八戸家には他に一門もいないのではな……既に正室が一人いるししばらく側室とかは無理だろうな。

あ!そうだ人質で私が八戸に行けば良いじゃないか、先進的な八戸領を学ぶ良い機会だし、人柄は変わってはいるらしいが今までの仕置きを見るに無体な事をする御仁では無いしな、よし後で父上に持ち掛けてみるか。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ