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剣聖(ニセ)

◆◆◆


……爺だと多分予備動作で軽くあしらわれて終わりだからな、受けるタイプはありがたい。この体になってから……いや今まで一度も対人で奥義を使った事がなかったからね、剣豪クラスに通用するかどうかを知る良い機会だ。


「御老人、一手御指南願えますかな。」


軽めの木刀を選び、ゆっくりと前へ……


「お主が八戸政栄殿かな?」


「ハイ、ところで貴方はどちら様で。」


……泰造を伸せる人物か……剣豪とか全く詳しくないからな、身近にこんな人がいるとか世間は広いんだな~


「お伊勢参りの帰りにな。」


……訂正世間の狭いこと、あのイカレ剣豪の知り合いか……なら当然一刀流とやったことはあるんだろうな……いきなり詰んだ!


……十歳の体格で不完全な一刀流の技をだしても通用するわけないじゃないか。


……うーん、北畠のおっさんには一ノ太刀モドキは止められたけど、まだこの体で縮地を覚える前だからな……各流派の秘伝を繋げた教授(狂)命名“雷光”を試してみるか。


……よし!先の先を取って一瞬で終わらせる。


「では、行きます。」


北辰一刀流青眼の構えから特徴のある振れを見せる。


……俺は大上段が得意だったんだが、この体格では子供が背伸びしてるだけにしか見えないからね。


「聞いていたのと少し違うな、その構え誰に習った」


「千葉?かな。」


……イカレ剣豪しゃべりすぎ、だがやる!源氏の末裔の力を見せてやる!


ゆっくり牽制しながら飛び込み面よりも二歩半後ろに間合いを取る……


「ほう、飛び込みとは南部にしては珍しい。」


でしょうね、誰にも習った覚えはないしね


ただ……


誰にも見せたことはないんですがね。



ダン!



一歩目の震脚、攻撃の為ではなく両足に重さと力を!



スッ



半歩の縮地、震脚でためた力を半歩前に出し、前にでる力を倍加させる。


…………


音もなく一瞬で間合いを詰め前のめりになった体勢から捻りを加え袈裟斬りに一ノ太刀モドキを放つ。



カッ!!



一瞬で木刀を巻上げられ、喉元に木刀を突きつけられる。



「まいりました、私の負けです。」


……不完全な出来とはいえ雷光に反応するとかバケモノか、しかもただ受けるだけでなく纏で弾き飛ばすのかよ……木刀で使うとか本来槍の技だろそれ。


「お主、今の技は誰に習った。」


「一ノ太刀モドキですか?自己流です。」


「モドキとはなんじゃ?」


「本来居合いで放つ技ですからね。」


……モドキは北畠のおっさんには一応通用したんですがね、二回目からは防がれてボコられましたが。


「本来の一ノ太刀は縦の……、しかしその歳で今の連携技を一回使えば戦場では終わりじゃのう。」


「ええ、まだ体が技についていけてませんからね。」


震脚からの縮地で足が生まれたての小鹿状態ですからね、立ってるのがやっとです。


「ふん、人の流派の奥義を簡単に使いおってからに、まあ良い初伝をくれてやろう。」


「奥義って、何処かの一刀流?」


「なんじゃ?鹿島古流、香取神道流の秘伝を合わせた技を使っておいてワシを知らんのか。」


「我流なんで、知らないっす。」


「具教めこの変な一ノ太刀の事とか黙っておったな、まあ良い存外楽しめたからな。」


「鹿島古流というと……鹿島の塚原殿ですか?」


「そうじゃ、ワシが剣聖と名高い塚原卜伝じゃ。」


自分で剣聖とか言いやがったよこのじじい、上泉に言いつけるぞ。


◆◆◆


「ここは飯が美味いから、しばらく指導してやる。」


ああそうですか、はよ帰ってくんないかな~。


「もしかして伊勢に行ったってのも……」


「具教の所も飯が美味いからのう。」


「はははははー。」


……タカリ確定。これで剣聖じゃなかったら叩き出すって……実力で叩きだせん……なるほどこれが剣聖の真の力か。


「なんか失礼な事を考えておるじゃろう。」


「……心を読む技はどうやって覚えるんですかね。」


「知らんわい、お主見た目とは違ってかなり図々しいやつじゃな。」


「いや爺さんに言われたくないから、どうせ滞在するなら稽古だけでなくイロイロ役立っていってください。」


「えーわし、剣聖じゃぞ働きたくない!」


……ああそうですか剣聖とはニートの事だったとは知らなかった。


「とりあえず美味い物とか食べてるんでしょう、うちで作った名産品とか食べてもらって、感想お願いしますかね~。」


「む!酒はあるんじゃろうな!」


「一年目ですが、澄み酒と雑穀から作った焼酎ならありますよ。」


「どぶろくはないのか?」


「うちは米があまり採れませんからね、麦芽から甘酒はたまに作りますが。」


「そうか、夕餉は澄み酒とやらを飲ませて貰おうかのー、あとつまめる物を頼むぞ。」


……剣聖なんだから、刀には詳しいよねあとでうちの職人が打った刀を見てもらうかな、……田中殿にも頼んでたけど腕利きの刀鍛冶とかの知り合いいないかなー。


「剣聖は刀鍛冶の知り合いはいないんですか?」


「お前全く尊敬してないじゃろう、弘法筆を選ばずじゃ。」


「あーハイハイ貧乏なんすか。」


「選ばんだけじゃ、知り合い位おるわい。」


……貧乏なのは否定しないと。


「ふーん、所で仕込み杖とか持ってます?」


「重いから、やだ。」


……ロマンのないやつめ。


「……刀とかいつもはどうしてるんです?」


「弟子に持たしておる。」


……絶対後ろから切られて死ぬなこのじじい。


「ん?そういえばお付きの方は?港で見かけた時も一人でしたよね。」


「はて?そういえばどこかにおいてきたかのう。」


確信犯かこのじじい。


「……爺、次の南部丸で鹿島の塚原家に手紙を出すぞ、剣聖を引き取りに来てくれと。」


「はっ、」


「ほっほっほ、伊勢からだから二ヶ月はかかるかのう?」


「訂正、伊勢の北畠家にも出しておくイカレ剣豪もグルだ。」


「かしこまりました。早便の快速船で伊勢まで六日程かと。」


「ちぇ。」


「まあ良い、手加減出来る腕はあるんだししばらくは稽古を見て貰おう。」


「一日、三人位にしてくれ。わし年寄りだし。」


まじ、働かない気だな……


◆◆◆




いろいろ、考えて少し変更しました。


<(_ _)>

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