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最後の魔法は、人を待つための魔法だった  作者: まるねこ


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43 未来を占う

 のんびりソファでくつろいでいると、本を読み終えた殿下たちが興奮しながら質問をしてくる。


 その度に解説するんだけど、理解した上でさらに質問してくる。


 終わりが見えないかと思っていたけれど、案外それはすぐに終わった。


「殿下、メルローズ妃がお見えになっております」

「!!? ああ、通してくれ」


 殿下は本をフィルさんに渡し、メルローズ妃が部屋に入ってくるのを笑顔で迎えた。


「ジルディット様、先日話のあった西部の橋の工事の件ですが、書類を持ってきました」

「ああ、メルローズ。助かるよ。でも君が直々に来なくてもロカに取りに行かせてもよかったんだよ?」


「いえ、私はこうしてジルディット様のお姿が見たくて……」

「嬉しいな」


 フィルさんや私はどうやら透明人間になってしまったようだ。


 二人の世界に入ってしまいそうだね。私はのんびり二人を眺めていると、ロカさんが咳払いをした。


「あ、ああ。すまない」

「私たちのことは構わず続けていいんだよー。ねーフィルさん」

「そうですね。相変わらずお熱いことで何よりです。お子が生まれるのも時間の問題ですね」


 フィルさんは笑顔でそう話をした時に私はふと考えた。


 もし、二人の子孫がユーグ師匠だったら……。

 まずいよね。

 すぐに取り掛からなくちゃいけないのかもしれない。


 私は突然不安を覚えた。

 五百年も師匠は生まれ変わっていない。

 もういつ生まれ変わってもおかしくはない。


 まずは王宮で使われている井戸か。その前に師匠たちが残した記録を確認しないと。


 たしかあそこにあったっけ……。


「……エ様、クロエ様」


 呼ばれていることに気づき、顔を上げた。


「ごめんごめん。考え事をしていたよ。で、彼女がメルローズ妃だっけ。私はクロエ。よろしくね」

「魔女クロエ様、どうぞよろしくお願いいたします」

「よろしくね。そうだ。今日はこの鞄だから……。あった!」


 私は鞄の中をガサゴソと探り、水晶を取り出した。


「メルローズ妃、お近づきのしるしにメルローズ妃の将来を見てあげるよ? やってみる?」

「え? 本当ですか?」

「うん。私は世界一の魔女だからね!」


 いつの世も女性はこういうのに魅力を感じているんじゃないかな。メルローズ妃と仲良くなるための方法の一つだよね!


「将来、気になるわ。見てもらってもよろしいかしら?」

「うん、いいよ。でも最初に断っておくけど、未来は一つじゃない。選択一つで大きく変わるからね」


「ええ、それはもちろん理解しておりますわ」

「じゃあ、こっちに座って」


 私は向かいに彼女を座らせて彼女の魔力を感じ取り、水晶に魔力を流し詠唱する。


 彼女は魔力持ちとはいえ、量が少ないため、水晶に映し出される映像もゆっくりと浮かび上がってくる。


「来年はみんなに祝福されて王子が生まれるね。元気な子よ。メルローズ妃は魅力的だから外交官には気を付けてね。国も安定しているけど、少し南部の方で諍いが起こってジルディット殿下はその対応で忙しくなって、すれ違いが起こるかも。そこは気を付けてね。んーそれに…三年後くらいか……」


 私はそこで言葉が詰まった。


 “見つけた”


 まさか、いや、まさか……。


 動揺する私に気づいたメルローズ妃は心配そうに聞いてきた。


「クロエ様、何かよくないことが起こるのでしょうか?」

「あ、ううん。こっちの話。メルローズ様の将来はとても安定してるよ。第二王子も生まれて、その後、王女も生まれる予定よ。ただ、その頃にメルローズ様のお父さんかな。公爵が流行り病で倒れるみたいだから気を付けてあげて?」

「わかりました」

「そんなところかな」

「クロエ様、ありがとうございます」


 メルローズ妃からは笑みがこぼれた。王太子妃である以上王子を産むことが望まれるためだろう。少しでも不安が取り除かれたのなら幸いだよね。


「クロエ様、先ほど話のあった、私とメルローズとの間にすれ違いが起こるというのは……?」

「さぁ? 詳しくは言えないけど、南部の諍いが原因みたいだからそこが無くなれば仲がいいまんまなんじゃない? それに三人も子供を産むってことは仲も元に戻っているのかもね」


 ジルディット殿下は心配そうにしているけれど、こればかりは私も詳しくは分からない。二人の努力で超えるしかないよね。


 それにしても……早くてあと三年。


 ついにユーグ師匠が転生する。第二王子として生まれる。私は直感的に師匠だって思った。待ち望んだ未来がようやく来ようとしている。


 でも、今のままではユーグ師匠にあれが影響を及ぼしかねない。急がなくちゃいけない。


「さて、話も終わったし、殿下は執務があるでしょう? フィルさん、フィルさんの執務室はどこ?」

「そうですね。殿下はお忙しいので我々は魔術師のいる建物へ向かいますか」

「ジルディット殿下、メルローズ妃殿下じゃあね!」

「えっ!? あっ。分かりました。あとでフィルの執務室に向かいます」



 私たちは殿下たちの邪魔にならないようにさっと部屋を出てフィルさんの執務室へと向かっていく。


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