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最後の魔法は、人を待つための魔法だった  作者: まるねこ


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23 国王様への挨拶

「ラルド第三王子殿下、魔女クロエ様がお見えになりました」


 従者がそう伝え、扉を開くと赤絨毯の先には王様と王妃様、宰相が立っていて、絨毯の両側には十三人の大臣が立っていた。


 私の姿を見るなり、驚いたり、眉を顰めたりする大臣はいるようだが口を開くことはない。


 王様も王妃様も顔色を変えることなく立っている。


 私はラルドさんの横に並び、前へとゆっくり進んでいく。そして王様と王妃様の前に立ち、挨拶をする。


「魔女クロエ、ユーグ・イグナーツ・フュルヒテゴット・ヴィンツェンツの遺志を継ぐ者。モンシェール・グリフィッド魔法使い総団長と交代することを許可する」


「モードフェルン国の太陽であるレードル国王陛下、並びにミシェル王妃陛下にお目にかかれたこと有難き幸せに存じます。モンシェール・グリフィッド魔法使い総団長と交代を承りました。まだまだ若輩者ではありますが、王宮魔法使いをよりよき方向へ導けるよう尽力していく所存です」


 齢十四の私が口上を述べるとは誰もが思っていなかったようでその場にいた者たちは驚いているようだ。


「クロエ魔法使い総団長、この度は偉大なユーグ大魔法使い様が亡くなられたことを残念に思う。この国はユーグ殿のおかげで国はかなり安定している。今後も変わらずこの国に安定をもたらしてほしい」


 私は王様の言葉に礼を執った。


 そして大臣から勲章を胸に付けてもらう。記憶の中のユーグ師匠は沢山ついていたっけ。


 私も師匠に追いつけるよう、頑張らないとね。


 こうして短いけれど、王様たちとの顔合わせも終わった。


「ラルド副官、この後やることはある?」


 総団長室に戻った私はラルドさんに聞いてみた。私は正式に魔法使い総団長になったのでラルドさんを副官と呼ばなければいけない。


「いえ、今日の予定は顔合わせのみですが、結界で閉じ込めた者たちを解放してあげた方が良いかもしれません」

「ああ、忘れてたよ。じゃあ、解きにいくかな。でも反省しているのかな?」


 ソファで寛いでいたモンシェール様が笑顔で答える。


「面白そうですな。どれ、私も一緒に付いていきましょうか」


 モンシェール様はどうやらいたずらが好きな人なのかもしれない。私達は先ほど結界に閉じ込めた人たちに会いに行くことにした。


 長時間もそのままということではないけれど、十分に実力差は思い知ったんじゃないかな。

 私達は軽い足取りで第一団の部屋へと入っていった。


「どう? 結界は解けたかな?」


 笑顔で私は聞いてみた。解けていないのは私の魔力の消費から考えても分かり切っているんだけどね。


「クロエ総団長、大変申し訳ありませんでしたっっっ」


 私達が部屋に入るなり、魔法使いたちは一斉に謝ってきた。その様子を見たラルド副官は呆れ、モンシェール様は面白そうに髭に手を当て、笑いを堪えている。


「うん? 解けてないの? みんなで力を合わせて解いてあげたほうがいいんじゃない?」

「……それが。数名の魔法使いが中と外から解くべく頑張っていたのですが、解けておりません」


 オルク団長が苦い表情で私の元へ来て報告する。


「仕方がないな。この程度の結界も解けぬほど我が魔法使い団の腕は落ちたか」


 モンシェール様が先ほどの笑顔を隠し、渋い顔をしながらみんなに向けて話をする。


 その場にいた魔法使いたちはみな一様に暗い顔をしている。


 こればかりは仕方ないよね!


 モンシェール様は結界が張られている魔法使いの前まで行き、結界に手を当てた。

 魔力を通し、調べると結界はパチンと弾けるように消えていった。


「ふむ。さすがクロエ殿。だが、これくらいの結界なら誰か解ける者が出てきて欲しかったな」

「……私の教育不足です。申し訳ありません」


 オルク団長が頭を下げた。


「ふぅん? よし! なら、これをみんなにあげるよ。私がずっと練習で使っていたものだけどね」


 私はそう言うと、魔法円を出してそこから作り上げた専用の輪っかを魔法使いたちの手にカチリと嵌めた。


「!? こ、これは。取れないじゃないか」

「うん、そうだよ。解除できるまで取れないから」


 私は彼らの様子を見ていると、それぞれ解除に動き始めた。


 私が魔法で作った腕輪はサーデル様がユーグ師匠の技術向上のために作ったものだ。


 彼らが苦戦しているのを見ていると、王宮の魔法使いは使用していなかったのかもしれない。


「クロエ総団長、これはどう解除するのですか?」


 魔法使いの一人が聞いてきた。


「んー技術向上のための輪っかで昔の王宮魔法使いは使っていたんだよ? できないってことは質が落ちてるってことだよね?」


 もちろんこれはモンシェール様にもラルド副官にも付けてある。モンシェール様は物珍しそうに玩具を貰った子供のような目をしている。


「ふむ。確かにこれなら魔法使いの質をあげるのにいいな。なぜユーグ様はこれを使わなかったのだろうな」

「それはこの輪っかを付けている間は魔法が使えないからね。当時は魔獣襲撃が多くて時間的な余裕がなかったのかも」


「確かにな。ここ最近は魔獣の数も減少しているのか安定しているし、使ってもいいだろう」


 モンシェール様はそう言うと、あっさりと輪っかを外してしまった。


 ラルド副官も眉に皺を寄せながらも、すぐに外すことができたようだ。ラルド副官はモンシェール様から厳しい修行を受けているのだと思う。


 他の魔法使いはというと、苦戦はしているけれどひとり、またひとりと輪っかを外していっている。


 最低限のことはできるようだ。


 ……と思ったのはここまでで実際には第一団で半数が輪っかを取ることができなかった。


 第二団、第三団と下がっていくうちにできない人が増えている。


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