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釣りと心眼

 俺は[心眼]と[釣り]という新たなスキルを使ってみるため、二層二階の暗い谷をひたすら進んで行く。

 地形的には水がありそうな雰囲気だが、先に現われたのは水場よりモンスターだった。


 再びのサンダーハムスター。今回は一匹だ。

 剣を手に取り戦闘態勢に入るが、特に何も変化はない。

 心眼はどうなった。

 もしかして弱点がないのかこのハムスターは。

 完璧生物パーフェクトスピーシーズだったのか。

 

 弱点がないならしかたない、普通に戦うしかない。

 スキルポイントを無駄にしたのではないかとがっかりしながら、ハムスターが電撃をチャージする暇を与えないように近付き休まず攻撃を与え続ける。


 すばしっこく攻撃を回避する動きはさすが2層2階のモンスターだが、しかし動き回ってる間は頬袋に充電する暇がないようで、こちらも大ダメージを受けずに済んでいる。


 いや、頬袋の様子がおかしい。

 だが充電じゃない、赤く光っている。

 これはまさか、[心眼]がはたらいてるのか。


 なるほど理解した。

 スキルがはたらくまで時間が少しかかるんだ。

 弱点を見破るにはある程度敵を観察することが必要、理に適ってる。

 おそらく、スキルレベルをあげると見破れるまでの時間が短くなるんだろう。一秒を争う強敵相手だと効いてきそうだ。


 スキルの効果を考えている一瞬の隙をついて、サンダーハムスターが反撃してきた。

 雷ではなく鋭い牙で噛みついてくる。

 素早い動きの牙で脇腹にダメージを受けるが、だがハムスターも回避がおろそかになっている攻撃チャンス。


 ダメージを防ぐよりも反撃に舵をきり、頬袋を切りつけた。

 瞬間、バチバチっと頬袋から紫色の火花が飛び散った。


 電撃が暴発したのか。弱点とはそういう意味だったんだな。


 サンダーハムスターはのたうち回って隙だらけになったので、そこに追撃を入れて無事に撃破。


「早速、心眼役に立ったな。しかし一匹でもなかなか苦戦してしまった。攻撃力も防御力もたいしたことないけれど、素早さと電撃は強力。こういう一芸特化のモンスターも出てくるんだな。二層は侮れない」


 安全を求めるソロダンジョナーとしては、もう少し強化したいところだ。

 さすがに3階に行くのは時期尚早なので、もう少し二階を探索して強化することにする。アイテムの威力もわかっているし、また炎系のアイテムを見つけられれば経験値を一気に稼ぐこともできるから、それも狙いつつ。


 ダンジョンを進むが、アイテムはあまり見つからない。

 思ったより少ないな、このダンジョン。

 昔情報がオープンだった頃、一層の序盤の方でも結構色々アイテム手に入れたっていう話をネットで見た記憶があるのだが。


 あの人が運良かったのか、それとも俺の運が悪いのか。

 多分俺の運が悪いのだろう。

 ダンジョンには他の探索者もいるはずなのに、俺はまったく会わないのだし。

 きっと俺の部屋のゲートはダンジョンでも辺境の地に繋がっていたに違いない。


 探索していると新種のモンスター[オニマジロ]と出会った。二足歩行で手に石斧を持ったアルマジロの獣人のようなモンスターで、アルマジロらしくこちらの攻撃を背中でガードしてくるのが厄介だったが、心眼によって、背中の甲羅に一箇所継ぎ目があることを看破し、そこを狙って大ダメージを与えて撃破することができた。


 体は大きいがスピードがなかったので、サンダーハムスターの方が手強かったな。

 モンスターの強さは大きさによらないという学びを得た。


「ん、あれは」


 さらに探索をしていて、今度こそアイテムが――見つからない。

 見つけたのは泉だった。


 崖の上から流れ落ちる細い沢が谷底でたまり泉となっている。


 これは[釣り]をするチャンスでは。


 周囲を警戒しモンスターがいないことを確認し、泉のほとりで釣り竿を構え、糸を垂らした。


 泉は透明度が高く清涼な水をたたえている。

 そう大きくはないが深さは相当あるらしく底は見えない。

 なんの生物がどれだけいるか見当もつかないな。入り口は狭くても下の方は広がってる可能性もあるし。


 何はともあれ釣ってみよう。

 わざわざスキルになってるくらいだから、意味があるはずだ。


 糸の先には最初から妙な触手のような疑似餌がついていて、俺が竿を動かさずとも自動で蠢いている。

 エイリアンのようで気味が悪いが、多分効果抜群なのだろう。

 泉は非常に深いが糸は十分に長く、どこまでも垂らしていくことができた。


 かなり深いところまで垂らして、あとは待つ。


 1分、2分、3分……5分ほど待っていると、糸がぴくりと揺れた。


 きた、竿に手応えが。

 力を入れると簡単に釣り上げることができ、水面から桜色の鱗の魚が飛び出てきた。


 釣りの経験はないけど簡単に釣れた。

 スキルを振ってこの釣り竿を使えば、ダンジョン内では自然に魚が食いついて釣れるのだろう。


[モモフナ]

・料理の材料として使え、属性耐性上昇食材になる


 腕の中で跳ねている魚の情報を調べると、こう記述されていた。

 ストレートに食材らしい。普通に自前で料理すればいいのかな、魚捌くなんて難しいことできないけど。

 あるいは、釣りスキルがあるなら料理スキルもありそうだ。それで能力バフとして役に立つのが釣りの効能か…………なに?


 腕の中で跳ねていたモモフナが光を放ち始めた。

 俺はこれに見覚えがある、そう、鉱石を手にした時と同じ現象だ。


「ということは」


[モモフナ]

・釣り上げると経験値になる


 あらためて情報を調べると、こう変わっていた。

 そして魚は光を放ちながら、モンスターを倒した時のように消えていき、後には。


───────────────────

[名前] 灰崎はいさき 楓真ふうま

[レベル] 16 

 NextEXP 11200 / 100000

───────────────────


 経験値だけが残った。

 魚を釣る前の経験値はたしか9000くらいだったはずだから、2000強増えている。

 これはいい。

 モンスター倒した時が1000くらいだからそれよりもかなり多い。


 しかもやられるリスクもないし、これは鉱床に続いていい稼ぎ場所を見つけてしまったか。

 

 この階のモンスターは一匹ならいけるが、複数だとアイテムなしだと結構厳しい戦いになりそうだから、ここでたっぷりとレベルを上げてから探索するべき。

 ここから飽きるまで釣りの始まりだ。

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