第二層開始
二層はすごい。
巨鳥のモンスター、ディアトリマだけでなく動くはにわのようなモンスター、リビングアースも経験値を800ももっていた。
一層のモンスターとは桁違いの経験値効率だ。
こうなるともう経験値稼ぎは二層でやった方がいいな。
ただ経験値鉱石はちょっと惜しいな。あれはあれで安全に確実にまとまって経験値が得られるって大きいメリットがあったし。
とはいえモンスター1匹経験値700~800と比べたらやはり、二層でモンスター倒す方がより稼げるだろう。それに、こちらは探索も同時に進められるってメリットもある。
こうして俺は二層での活動をしていくことに決めた。
その助けになったものとして、二層に来たゲートのすぐ近くにあったオベリスクがあるい。
それは群青色でとがった尖端を持つ石柱で、謎の古代文字のようなものが刻まれている。
いかにも何かありげなそれに触ると、文字が発色し、ゲートの霧の色が青色に変化したのだ。
その状態でゲートに入ると一層10階に戻るのではなく、自宅のベッドへと直通で出てくることができた。
その後はスマホのダンジョンアプリから、ダンジョンに入るときに一層からか二層からかの選択をできるようになった。
これにより自室のベッドから直通で二層に行けるようになり、利便性が大幅向上。わざわざ一層1階からずっと歩いて行く必要がなくなったのだ。
こうして俺は翌日からはダンジョン即二層で探索をしていくことにした。
二層の探索を進める俺は、切り立った下への崖と上への崖に挟まれたところを山の周囲を回るように進んでいた。
さらに進むと山が内側にえぐれたようになっていて、遥か高くまで続く岩壁に挟まれた峡谷のような地形になっているところがあった。
さらに進むと今度は逆に突き出した崖のようになっていて、細い道の両サイドは遥か下へ落ちる断崖絶壁、そんな場所もあり。
はたまた緩やかな上り坂と下り坂に道がわかれている場所にもでくわすし、思ったよりはるかに複雑で広いところだった。
その結果、ダンジョン二層は単に山のまわりの平坦な道を回るのではなく、三次元的な要素もある迷路のような複雑な地形になっている。
「これは紛うことなくダンジョンだ。お、出たなはにわマン」
高い岩壁に挟まれた暗い道の向こうから、ひょこひょことはにわマンが二人組で歩いてきた。正式名称はリビングアースという大仰な名前だけど、どうみてもはにわなので俺ははにわマンと脳内で呼んでいる。
手に持った槍でつんつんしてくる攻撃や、はにわの虚ろな口から石つぶてを吐き出す攻撃を耐久して無事勝利。これで経験値1600も獲得。おいしすぎる。
「この調子ならすぐレベル上がるぞ、ふふっ」
と勝利の美酒を味わっていた時、岩肌に違和感を覚えた。
少し色が薄くてつぎはぎ感がある箇所がサイドの岩壁にあったのだ。指をかけて引っ張ると――。
ボコン、と音を立てて岩が剥がれ、中からアイテムが転がり落ちてきた。
「へえー、二層はこういうパターンのアイテムがあるんだ。天然の宝箱みたいな感じだ?」
転がり落ちてきたたのは、シンプルな装飾の剣だった。
新しい武器はめちゃ嬉しい。だいぶ長いこと石のハンマーで頑張ってきたからなあ。
これも敵を倒した時に経験値がプラスされるのかな、ハンマーの経験値プラスじゃもうあんまり意味がなくなってきたし、それも楽しみだ。
早速装備して、性能の確認っと。
[炎帝の剣]
・炎属性攻撃を強化する。
・装備者が炎による攻撃をしたとき、【経験値を入手する】。
スマホから映し出されたビジョンは、俺の前にそう表示していた。
新たな経験値バフのパターンだ。
炎で攻撃したら経験値が増えるって、これまでの敵を倒した時とはちょっと違う条件になってるな。
二層になったから? それともこの武器が炎の武器だから?
いや、それよりも、だ。
俺、炎攻撃手段持ってないんだが。
魔法使いとか魔法剣士ならいざしらず、ひたすら物理攻撃しかできない俺に炎攻撃しろってハードル高すぎる。
大外れかよ……
……と、考えるのは凡夫。
これは一見経験値をえにくい外れ武器だが、逆に考えれば、敵を倒すだけというよりも条件が厳しくなっているのだから、条件を満たした時に入る経験値は多いと考察できる。
縛りが厳しければ厳しいほど報酬は大きい、これは世界の理。
つまり、炎攻撃手段さえなんとかして確保すれば、ただでさえ経験値がインフレした二層で、さらに多くの経験値を稼げるようになって最高のハッピーを手にすることができるということをこの[炎帝の剣]は意味しているんだ。
「そうと決まれば、目標は決まったな」
二層を探索し、その中で炎攻撃手段を見つけ出す。
その時こそ、俺はこれまでにないインフレした経験値を稼いで気持ちよくなれるだろう。
それから一週間、俺の放課後は炎を探し出す旅となった。




