経験値稼ぎにおけるスタミナの重要性の考察及び実践
カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！
鉱床から結晶が剥がれ落ちる。
手に取ると結晶が光り経験値を俺に与え石ころになる。
カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！
鉱床から結晶が剥がれ落ちる。
手に取ると結晶が光り経験値を俺に与え石ころになる。
カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！ カン！
鉱床から結晶が剥がれ落ちる。
手に取ると結晶が光り経験値を俺に与え石ころになる。
鉱床を発見してから今日で五日目。
この間、俺は、これをひたすら繰り返していた。
ひたすら単純作業だけど苦にならない。
こつこつやるのは嫌いじゃないし、ステータス画面をみれば着実に経験値が溜まっていくのが見られる上に、数時間作業を繰り返せばレベルアップの音も聞ける。
ありがちな光の演出とチープなシャキーン！という効果音が活力を与えてくれるのだ。
しかし、なんか段々固くなって来てないか？ この鉱床。
洞窟の壁に埋まった鯨のような形の鉱床を、頭の方からカンカンと採掘していってるけれど、進むにつれてカンカンの必要回数が増えていっている。
初日は平均15回くらいで結晶がとれてたけど、今は50回くらいはかかってる。
しかもしっかり腰を入れてハンマーを振り下ろさなきゃいけないから、相当きっつい。
さらに外で掘るのと違って、ダンジョン内で活動するという意味でのスタミナの消費もあるらしく、腰や腕だけじゃなく全身に疲労がずしりとのしかかってくる。
その結果1時間も掘ったらもうダンジョンから出る必要がある状況だ。
せっかく文字通りの経験値の山が目の前にあるのに。
これはもどかしく、その上効率も悪い。
初日は一日でゆうに経験値6000以上稼げていたのに、鉱床見つけて四日目の昨日は2000もいかずにスタミナ切れで帰還することになった。
この問題をなんとかしなければならない。
と思って色々試してみた、まず一つ目。
掘り方を工夫してみる。
一般的なように、両手でハンマーを振り上げ、振り下ろしてやっていたけれど、実は角度が重要なんじゃないかと思って、横から叩いてみた。
また斜め45度の角度から叩いてみたし、下からアッパースイングで叩いてもみた。
調査結果。
上から力の限り振り下ろすのが一番速く採掘できる。
めちゃくちゃ普通の結果でした。
斜めからで60回、横からは70回、下からは80回やっても割れなかったので諦めた。
この結果から見るに、シンプルに加わった力で採掘できるんだと思われる。力が入れやすいほど少ない回数で採掘出来たから。
要は普通にやればいいってことだな。
試したこと、二つ目。
違うもので掘ってみる。
武器のハンマーではなく、別のものでやってみたらもっと掘れるかもしれない。
幸運にも、経験値鉱床に来るまでの間に倒したモンスターが、石の剣をドロップしたので、それで試してみることにした。
普通なら剣で石を掘るなんてありえないが、ここはダンジョンの中という特殊環境。実は特効持ちかもしれないからな。
「はぁーっ！」
剣が一閃し――手が痺れた。
普通に、ハンマーの方がずっと掘りやすかった。一応剣でも100回くらい斬る……というより叩けばなんとか鉱物を取れて経験値を得られたけど、むしろ効率は悪くなってる。
かくなる上は、そう、拳。
最後に頼れるのは己の拳。
言いたいことはわかる、無謀だって。
でも、万が一ってことがあるかもしれない。だから俺は、右の拳を強く握り、鉱物の塊をまっすぐ突いた。
結果は、万のうちの9999の方だった。
まあ、そうですよね。わかってました。
やっぱりダンジョンといっても最低限の常識はあるんですよね。
というわけで、色々やってはみたものの、結局効率よく採掘する方法はなかった。
これでは一日に稼げる経験値は少ないままだ。
……だが最後に、一つだけ策がある。
「使うか、いよいよ。大事にとっておいたSPを」
───────────────────
［名前］ 灰崎 楓真
［レベル］ 13
NextEXP 1121 / 20000
［所持スキル］
・耐久力C ・自然治癒E sp6
［クラス］ E
［装備］
・ストーンメイス
・鉄の指輪
───────────────────
これが今の俺のステータス。
鉱床でのカンカン生活によりレベル13になったが、実はレベルが上がる間に一切スキルポイントは使っていなかった。
あのゴーレムさえ会わないように注意してれば他のモンスターにはやられないから、あらたに強化する必要もないので、必要なスキルが定まるまでポイントをとっておこうと思っていたんだ。
できればポイントは必要に差し迫った時のためにとっておきたかったので、うまいやり方がないかとあれこれと試した。
だが色々やっても、掘る効率を上げることはできなさそうだからしかたない。
今がその、貯めてたポイントが必要になった時だ！
さあ、存分に役立てよう。
まずはスキル取得メニューを開いて、
─────────────
獲得可能スキル
・持久力E 必要1p ・クラフトE 必要1p
・自然治癒D 必要2p ・耐久力B 必要4p（LV条件未達）
─────────────
これ、[持久力]。
その名の通りスタミナがつくスキル。
すなわちダンジョン内でより多く長く行動できるようになるスキルだ。
ダンジョン内にいるだけでスタミナを消耗し、行動するとさらに消耗する。ちなみにこのスタミナは普段使ってる意味でのスタミナと違って、休憩してもダンジョン内にいる限り回復しない。ダンジョンから出て時間が経過するにつれて回復していく。なのでこれは、ダンジョン内での行動力、って考えてもいいかもしれない。
これまではどうせ平日に自分が使える時間とダンジョン内のスタミナの限界の時間が大差ないのでとってなかったけど、今こそこれが活躍する時。
時給を増やせないのなら、労働時間を増やせばいい。単純な話だ。
「………………ここは思い切って！」
俺は空中に浮かぶ映像の ・持久力 を連続でタップして、一気に2ランクアップした。
[持久力D]
一気に2レベルあげて持久力をDまでアップ。
ステータスを見ればわかるように、レベルアップまでのNextExpが万を超えてインフレしてる中、1レベルで1しか手に入らないスキルポイントを一気に3も使うのは勇気がいる。
けれどもこれで経験値を多く稼げるようになれば、レベルアップでスキルポイントを回収できる。よってここは攻めの姿勢で行かせてもらう！
さあ、これで何時間鉱石を掘れるか、[持久力]の力、検証してみよう。
翌日の水曜日。
ダンジョンが俺の部屋に出来てからもう二週間近くだ。
今のところ時間の長短はあれど毎日ダンジョンに潜っている。
自分のことを飽きっぽいと思ってたけど、ダンジョン生活は俺にあってるんだろうな。
ゲートをくぐりいつもの道順を辿り、鉱床に到着する。
「今の時間は……17：45か。ここからどれだけ掘れるか。計測、開始」
カン、カン、カン、カン。
