93.なにもここで言わなくても
「おお、ラシディア殿、オリアント!」
回廊で出会ったオリアントと軽く雑談をしていたとき、周囲に響き渡るほどの声量で後方から呼びかけられた。
王宮ではあまり聞くことのない大きな声に、ラシディアは肩をびくりと揺らした。するとオリアントが宥めるように肩を撫でてくれ、その優しいぬくもりにほっと息を吐く。
「ははは、相変わらず仲が良いな!」
大声で朗らかに笑いながら近寄って来た筋肉騎士に、ラシディアは引きつった笑顔を浮かべて振り返る。
彼は声が大きいだけで一切の悪気はないのだから、責めることはできない。
「ところでラシディア殿、聞きましたよ! 大掃除では大活躍だったそうですね!」
「え?」
「あちこちの虫を退治して回り、まるでヒーローのごとく侍女殿たちに感謝されたとか! いやあ、俺も見てみたかったですよ!」
「えっ」
何故そんなことを知っているのかと問い質しそうになり、そういえばこの騎士は友人の侍女とお付き合いしているのだったと思い出した。
「ふふっ、それほどに勇ましいところ、私も見たかったですね。ねえ、シディ?」
さらには隣からも楽しそうな声が聞こえ、ラシディアは心の中で友人の名前を叫んだ。
オリアントはラシディアの虫退治がけっこう好きなので、本当に見たかったなと思って言っています。
そして筋肉騎士は好意100%でこの話題を振っています(^^)




