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騎士と侍女  作者: 鳥飼泰
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86.(IF話)心が乱れた騎士

前回「85.南の国のひと」で最後にオリアントが言ったように、もしも心が乱れたらどうなるのか、というIF話です。

オリアントの言葉を受けて、ラシディアは筋肉騎士に改めて近づいた。

その声の大きさにくじけず頑張ってみれば、彼は思ったよりもずっと話しやすい人物だった。南の人間らしい陽気な性格は、共にいると元気が出た。また、ラシディアにとって未知の世界である南の国の話を聞くのも楽しかった。

それですっかり筋肉騎士とは仲良くなったのだが。


後日、問題が発生した。



仕事途中で出くわしたオリアントに、少しいいですかと、建物の陰へ誘導された。

こんな物陰で何の用だろうかとオリアントを振り返れば、彼が思いのほか近くに立っていてびくりとする。

そんなラシディアに微笑ましげな顔をして、オリアントが口を開いた。


「ねえ、シディ。私は確かに言いました。筋肉の彼と、少し親しくしてみてほしいと」


微笑を浮かべたオリアントは、いつもと同じようで、どこか違うようにも感じられた。どこが違うのか、はっきりとは分からないが。


「でもね、こうも言ったはずです。適度な距離でお願いします、と」


一歩、オリアントが詰めた。

近い気配に、ラシディアの鼓動が落ち着きをなくし始める。


「……ちょっと、親しくしすぎですね」


また一歩、オリアントが近づいた。

なんだか不穏な空気でオリアントに威圧されているように感じて、ラシディアはじりじりと後退る。

だが間もなく、背中に壁が当たった。


「おかげで私の心は、乱れています」


オリアントは何の気負いもない姿勢で立っている。前方は、間近に迫ったオリアントに塞がれているが、左右は空いているのだ。なのに、どうしてか逃げられるとは思えなかった。

直接は触れられていないのに、まるで籠の中に閉じ込められたように錯覚する。


困惑しているラシディアを見て、オリアントは笑みを深めた。威圧が強まる。


「私の心を乱した責任、とってくれますよね?」



こうなる可能性もあるし、ならないかもしれない。

もしくは、何も手につかなくなったオリアントがうっかりミスを量産して団長に呆れられたりする、という可能性もあると思います。そっちの方が平和ですね~(^^)

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