85.南の国のひと
ラシディアが中庭で休憩していると、ちょうどそこへオリアントがやって来た。同じく休憩中だというので、少し横にずれてベンチの隣へ誘った。
とりとめのない話をしているうちに、筋肉騎士の話題になる。
「先日お会いした南の国の騎士様は、なんというか……おおらかな方でしたね」
率直に言えば、とにかく声が大きくて所作がおおざっぱという印象だ。だが、悪い人間ではないと思う。
それをうまく言葉にするのは難しく、なんと表現するべきか悩んだのが、オリアントにも伝わったらしい。
「ふふっ。そうですね、彼はこの国ではあまり見ないタイプでしょう。ですが、南の国のひとたちは、概ねあのような性格ですよ。陽気で人がよく、にぎやかです」
「そうなのですか」
オリアントは騎士の仕事で国外へ行くことも多いらしく、この国から出たことのないラシディアよりもずっと他国のことに詳しい。その彼が言うのなら、そうなのだろう。
「はじめは少し驚くかもしれませんが、よければ少し親しくしてあげてください。あの勢いに慣れてしまえば、彼はとても真面目な騎士だと分かります」
「なるほど……」
その口ぶりから、オリアントはもう筋肉騎士と馴染んでいるようだ。そんな風に勧められるなら、せっかくの他国の人間と交流する機会ではあるし、もう少し積極的に話をしてみても良いのかもしれない。
ラシディアはふむふむと頷いた。
だがそこで不意に、オリアントが雰囲気を変えた。
「そうは言っても、適度な距離でお願いしますね。シディがあまり彼と親しくしすぎると、私の心が乱れてしまいますので」
あんまり仲良くしすぎると、やちもち焼いちゃうぞ~




