71/108
70.愛称
先日、オリアントとはじめて一緒に出かけた。
ラシディアは、こっそり、デートのつもりで楽しみにしていた。だというのに、その日の記憶はあまり残っていない。
もちろんそれは、いきなり名前呼びを提案したオリアントのせいだ。
日が経つにつれ、そのことがだんだん悔しくなってきたので、ラシディアはやり返すことに決めた。
回廊で騎士に出会った際、挨拶もそこそこにラシディアは行動に出た。
「オリアント様」
「なんですか、ラシディア」
「私のことは、シディ、と呼んでください。仲の良い友人はそう呼びます」
これでどうだとばかりに、ラシディアは王宮侍女として鍛えられた笑顔を騎士へ向けた。
するとオリアントは、一瞬きょとんとした後に、ゆっくり目を細めた。
「あなたに仲が良いと思ってもらえるとは光栄ですね。では、私はリアン、と」
「あ、」
ここでラシディアは、自分が愛称で呼ばれるなら、相手も愛称を出してくるということに初めて気づいた。
――この騎士を愛称で呼ぶ? え、誰が? 私が? 名前を呼ぶだけでも、むずむずするのに?
呆然とするラシディアに、オリアントは笑みを深めた。
「愛称で呼び合うだなんて、なんだか私たちが特別な関係のようです。ねえ、シディ」
「リアン」と「シディ」になりました(^^)




