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53.当日
「あの、騎士様。チョコレートのお菓子を焼いたので、よかったらどうぞ」
想い人にチョコを贈るこの行事は西の国のもので、騎士は知るはずもない。だからこれは騎士にとってただのお菓子でしかなく、あまり大げさにしては不自然だ。箱の装飾は控えめにした。
今はまだ、気持ちを伝えるつもりはない。ただ、こっそり気持ちを込めたこのお菓子を贈りたいだけ。
だから、ふわりと笑った騎士が箱を受け取る姿だけで満足だったのだが。
「ありがとうございます。それで侍女殿。これは、義理ですか? それとも本命?」




