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39.年齢不詳
「侍女殿」
回廊で声をかけてきた黒髪の騎士。
その顔を見た侍女は、数日前に稽古を覗き見してしまったことを思い出した。あのとき騎士団長にはばれてしまったので、騎士本人にも知られてしまったかもしれない。
改めて言及されるのはとても恥ずかしいので、なんとか違う話題を振ろうと侍女は慌てて口を開いた。
「あの! そういえば、侍女の間で騎士団長のことが話題になっていました。お若く見えますが、何歳だろうかと」
侍女の勢いに驚いた様子の騎士はぱちぱちと目を瞬いたが、すぐに気を取り直して答えてくれた。
「団長の年齢? さあ、いくつでしょうか」
「え、騎士様もご存知ないのですか?」
「ええ。おそらく、団長補佐くらいしか知らないのではないでしょうか」
それはつまり、団長の年齢とは一般人に秘匿されるような重要事項なのだろうかと侍女が背筋を伸ばすと、騎士は笑ってそうではないと手を振った。
「私たち人間が気にしても仕方ないくらいの年齢だということですよ。団長は妖精ですから、長命なのです」
「よ、妖精なのですかっ」
「ええ。このことは特に秘密にしていることでもないので、聞けば本人も喜んで教えて…………、いえ、あまり聞かない方がいいかもしれませんね。団長に近づくと碌なことがありませんから。もし知りたいことがあれば、私に聞いてください」




