38/108
37.気合いの理由
黒髪の騎士は気配に敏感だった。
だから、広場での打ち合いの稽古の途中、横の回廊を赤髪の侍女が通りかかったのにもすぐに気づいた。
侍女は、足を止めるとこちらへ視線を向けたようだった。知り合いを見つけた際の自然な動作なのかもしれないが、騎士は気分が高揚した。
その視線が他へ流れてしまわないよう、打ち込みに気合いを入れる。動きが少し荒くなってしまったが、期待どおりに侍女の視線は動かなかったので良しとする。
ただ、そのせいで団長に気づかれてしまったのはうかつだった。




